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    失われた宝玉 (4)
 トモが、がれきの間から外に出てきた。
 辺りを見回して、それから空を見上げる。
 わたしもつられて空を見上げた。

 秋晴れのきれいな空に薄い雲が流れている。
 まるで刷毛で掃いたように長く尾を引いていた。
 その空に、黒い影が飛んでいる。
 それは何羽かのカラス。
 見ているとカラスたちは、ダムの向こうの森の中に消えていく。
 別な方角からも数羽のカラスが現れて、やっぱり同じように森に消えていった。
「カラス、多いのかな?」
 わたしはポツリとつぶやいた。
 トモが何かあったように、わたしを振り返った。
「ん? 見つけたの?」
「あ、いや。そうじゃないんだけど……」
 それから枝村さんに訊いた。
「枝村さん。その宝石って、どのくらいの大きさですか?」
「う〜ん、そうだね。こぶしよりは小さいな。直径4〜5センチぐらいだったように思う」
「そうですか。きれいに輝いてるんですよね」
「そう、陽の光を受けると、この世のものとも思えないぐらい深い緑に輝くんだよ」
「そうですか……わかりました」
「おお、見つかったのかい?」
 枝村さんが勢い込んで訊いた。
「あ、いえ、まだです。……それに、今日のところは見つけられません」
 たちまち枝村さんががっくりする。
「でも、少し時間をいただけませんか? たぶん、見つけられると思います」
 彼は再び勢い込んだ。
「そ、そうか。どれぐらい待てばいい? どのくらい?」
「一週間ほど時間をください。その間に探してみます」
 わたしはトモを軽くこづいた。
「だいじょうぶなの? わたしがやろうか?」
 小声できくと、トモもわたしにだけ聞こえる声で言った。
「……カラス」


 私たちは枝村さんに送ってもらって街まで戻った。
 次にいくときは私たちのすることが知られないように、二人だけで行きたかった。
 それで、次も送っていくという枝村さんの誘いを鄭重に断った。
 そのかわり、ダムの下に入れるように事情を記した手紙を書いてもらった。
 私たちは宝が見つかったら連絡すると約束して分かれた。
 その後で、わたしはトモに聞いた。
「ねえ、トモ。教えて。カラスってなに?」
「うん。考えたんだけど……カラスってさ、きらきら光る物が大好きなんだ。だから、その宝物って、カラスが持っていっちゃったんじゃないかと思うんだ」
 ええ? ほんと?
 たしかにカラスがいろんな物を隠すのは聞いたことがあるけど……
「たぶん、ダムの水が引いたときに、真っ先に持っていったんだと思う」
 ふ〜ん。そうかなあ。
「でも、それじゃあ、カラスの巣を探すの? 木に登って?」
「そうだね。それもいいけど……直接訊いてみようかと思って」
 そう……直接……ん? それって?
「カラスに訊くっていうこと?」
「そう」
 わあ! また出た。今度はカラスなんだ。
「カラスとも話せるのね?」
「たぶんね。あれから調べたんだけど……人間に親しい動物と話せる処方がいくつか在ったんだ。ネコに犬に、馬とかウシとか。鳥だと、雀とかカラスだね」
 全く、トモのご先祖様は何様だったのかしら?
 ポチと話せた花咲爺さん?
 それとも雀と話せた舌切り婆さん? あ、雀と話せたのは隣のおばあさんだっけ?
 それはともかく……
「あそこの森にたくさんカラスがいたみたいだから、彼らに訊いてみればわかるんじゃないかな?」
「OK、わかった。じゃあ、次の休みに行きましょう」
 私たちはそう決めて、次の休みまで待つことにした。
 
 
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