失われた宝玉 (2)
その男の人とは、駅前の喫茶店で待ち合わせした。
隣のクラスの男の子が、トモに会いたい人がいると相談に来たのは待ち合わせの2日前だ。
彼のお父さんの知り合いで、探し物をしているという。
うちの高校で、もう知らない人がいないぐらいトモは有名になっていた。
あいつに探せないものはない!
こないだは、いなくなったうちの犬を見つけてくれた。
俺の落とした家の鍵も発見した。
僕の自転車が、校舎の裏に隠されていたのも見つけてくれた。
俺の探していた、エロ本も……ゴホン。トモ、そんなのも探してるの?
まあ、いくつかはわたしが探したんだけどね。おいしい手料理の報酬付きで。
とにかくいろんな人の相談が増えた。
トモは律儀に相談に乗ってあげている。
もう、程々にしなさいよ。
そんなとき、その話はあった。
その男の人は、10年前にダムの下に沈んだ村の出身で、その時うっかり先祖の形見を持ち出すのを忘れたらしいのだ。
その形見を探してほしいという。
でも、ダムの下なんでしょう?
ところが今、しゅんせつ工事だか、改良工事だかで、ダムが水を落とされて、10年ぶりに村が現れているという。
そこで彼は何度か村に行って探したがうまく見つからないと言った。
だから、トモの噂を聞きつけて頼みに来たんだ。
喫茶店で会った男の人は、40代半ばに見えた。ちょっと沈んだ感じ。
疲れているのかな? 訥々とした話し方で事情を話した。
「それは、どんな物なんですか?」
トモが形見についてきく。
枝村と名乗った男の人は、ちょっと迷うようなそぶりをしてから口を開いた。
「宝石だよ。玉というのかね。吸い込まれるような深い緑色をした、大した物だよ」
男の人は遠くを見るような、それでいて恍惚とした表情になっていた。
「あれは、そんじょそこらには無い、宝物なんだ」
「そんな大切な物をどうして、お忘れになったんですか?」
また、少し考えるそぶり。
「あれは、あの時、村の神社に貸し出していてね。村の最後の秋祭り法要があったから……」
「そうですか。じゃあ、神社の方を探されたんですね?」
「ああ、今回工事のために村が現れてから、何度も探しに行ったんだが、わからなくてね。神社の跡も何度も行って、底を掘ったりしたんだが……」
男の人はトモの方を真剣な顔で見つめ、
「頼む。どうか見つけてほしい。この通り」
といって頭を下げた。
私たちはあわてて、次の日曜日に一緒に出かけることを約束した。
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