第四話〜ダムの底に消えた宝玉探しを頼まれたふたり。
そんなふたりに危機が迫る!?
第四話 失われた宝玉 (1)
「きゃあああああああっ!」
目の前でトモが刺された。
犯人が血に濡れたナイフを持って、仁王立ちしている。
わたしは倒れたトモに駆け寄った。刺されたお腹の服が赤く染まり、血が流れ出してくる。
彼を後ろから抱え、刺されたお腹に手をあてがった。
トモ、トモ、しっかりして! 死んじゃいや!
わたしの手の間から血が滴り落ちる。トモの顔が蒼白になっていく。
死んじゃイヤだよ。トモ!
血、血を止めなきゃ! お願い止まって!
わたしは必死で手を傷にあてがう。
その時、ハッとした。
わたしの目の前に、ナイフを持った男が近づいていた。
男がナイフを振り上げる。
わたしはトモをかばって、上から被いかぶさった。
やめて! 助けて!
その時、わたしの目の端を黒いものが横切っていった。
いくつもいくつも続けて横切る。
彼らは、カー、カーと短く鳴きながら、男の前を飛び、頭を小突き、ナイフを持つ右手を狙った。
幾羽ものカラスが、男に襲いかかっている。
男はたまらず、後ずさり、後ろを向き、早足で逃げていった。
わたしはその光景を目の端に見ながら、頭の中では、トモの事しか考えていなかった。
みるみる血の気が失せ、苦しそうに声を漏らすトモ。
お腹の傷を押さえながら、彼をずっと抱きしめている。
お願い、お願いだから、血が止まって!
トモ、大丈夫? あなた、大丈夫よね? こんな事で死なないよね?
死んじゃイヤだよ。
わたしをおいて死んじゃイヤだよ。
ねえ、トモ。
わたしは、ようやく助けを呼ばないといけない事に気づいた。
このままじゃ、トモが死んじゃう。
早く病院に連れて行かなきゃ。早く!
でも、周りは山の中だった。ここはダムの遊歩道の上。
携帯を取り出した。ひろげて、旗は立っている!
夢中で、家の番号を呼び出してかけた。
「るるるる、るるるる」
呼び出し音がもどかしい。
早く出て、早く出て!
「もしもし、天野ですが……」
おかあさん!
「おかあさん! 早く来て! お願い早く来て! トモが、死んじゃう! トモが、死んじゃうの! おかあさん!」
「メグ? どうしたの? 落ち着いて。どこにいるの?」
「くろがねダム! 黒金ダムだよ! お願い、トモが刺されたの! 早く医者に連れて行かなきゃ、トモが死んじゃう!」
「わかったわ。すぐ行くから、そのまま待ってるのよ。いい? わかった?」
「うん」
切った携帯を投げ出して、もう一度トモを抱きしめる。
ずっと傷に当てていた左手が、トモの服に張り付いたように感じる。
蒼白な顔のトモが、ホッと息を吐いた。
血が止まったのかな? ほんとに? ほんと?
わたしはトモのお腹を押さえている手を怖くて離せない。
トモがかすかに目を開けて、わたしに微笑んだ。
「メグ。怪我ないか?」
わたしは……涙でトモの顔が見られない。
バカ、トモ! 他人の心配してないで、自分の事心配しなさいよ!
絶対、死んだら許さないんだからね! わたしの言う事きかなきゃ、許さないんだからね!
だから……。
わたしは、蒼白で青みがかったトモの唇に、自分の唇を重ねた。
自分の唇の熱さで、トモを暖めようと思った。
頭のどこかで、これが自分のファーストキッスだという思いがよぎった。
夢にまでみたトモとのキス。
それがこんな形になるなんて。
こんな悲しい気持ちなんて。
わたしは、どうしてこんな事になったのだろうと、頭の中の記憶をたどっていた。
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