星降る夜に (6)
私たちは自転車に乗って走った。
その後ろを織姫さんが滑るようについてくる。
誰かが見たら、やっぱり幽霊と思うだろうな。
でも、とてつもなく、美しい幽霊だけど。
住宅街の丘を下って、少し大きな川沿いの道を行く。
そういえば、この川が天乃川だった。
織姫さんのご先祖様って、この川で水遊びとかしたのかな?
それから、道はだんだんと山に向かって登りになっていく。
私たちは自転車を降りて歩いて登ることにした。
そのころには、もうわたしの体は普通に戻っていた。
狭い山道というか登山道を登る。
私たちは汗が出てきたけど、織姫さんには関係なさそう。
重力ってきかないのかしら?
細い山道の先に開けた場所が広がり、お寺の山門が見えた。
ここが、窟寺。
いつの時代からあるのか知らないけど、古いお堂が建っている。
トモが、ちょっと見渡すような仕草をした。
でも、明かりは空に浮かぶ月と、織姫さんの体から出る光だけだからかなり暗い。
これじゃあ分からないよ。
わたしは目をつぶってみる。
薬はもう切れたけど、あの不思議な感じは分かるんじゃないかな?
目をつぶって、ゆっくりその場で回転する。
半歩回ったところで、あの光が強く瞬いた。
「トモ、こっち!」
眼を開けて歩き出す。
絶対こっちに何かある。
その先に、大きな岩があった。それとも崖?
30メートル四方ぐらいの大きさの岩が、斜面にめり込んで横たわっている。
わたしの後ろからトモが声をかけた。
「これって、伝説の大岩だな」
「伝説って?」
「空を飛んでたやつ」
あっ! そっか! そうだった。
見つめる私たちの前に、織姫さんがすっと入ってきた。
それから、私たちに微笑んで、その岩に手をかける。
なにが起こるんだろう?
私たちの見ている目の前で、岩が、30メートル四方の大岩が、動き出した。
それは、まるで重さなどないような軽々とした仕草だった。
大岩と見えたものは、厚手の扉のような板状になっていた。
それが空中を飛び、境内に落ちる。
岩があったところには穴が開き、その中に、見たこともない構造が見えた。
それが機械なのか、生き物なのかも分からなかった。
ただその真ん中に、ちょっとぐったりした様子で若いハンサムな男の人が横たわっていた。
やっぱり薄く光っている。
織姫さんが腕を伸ばす。
引っ張り上げて、二人はしっかりと抱きしめあった。
その様子は、なんていったらいいのかな?
ハリウッド映画の名場面を見ているような感じ。
わたしは何となくトモの手を握って、胸の前に持ってきていた。
それから、目の前の二人は私たちの分からない言葉で話し出した。
織姫さんが空中で彼にもたれかかっている。
彼は何度か頭を下げて、謝っている感じ。
織姫さんが両腕をあげて、男の頭をぽかぽかと叩く仕草。
わあ! なに言ってるのか分からないけど、なにやってるのかはよく分かる。
それから二人はもう一度堅く抱きしめあった。
「よかったね」
わたしは知らずにつぶやいていた。
「うん。そうだね」
トモはそういうと、わたしを握っている手を引いた。
わたしは、その動きでトモの正面に導かれ、それから彼に抱きしめられた。
わっ! わっ!
ちょっと狼狽する。
でもすぐにわたしの腕も彼の背中に回った。
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