星降る夜に (3)
庭の外れに小さな物置が建っている。その前に、テニスボールが2つ置かれていた。
あの子、テニス部だったかな?
と思ったとき、ボールがころころと動き出した。
あれ? 風?
その時物置小屋の天井の上が、光り出した。
わたしは見上げた。そこに……
女の人が浮かんでいた。
薄く光って見える。揺れるドレスを着ていた。
「ト、トモ。あれ!」
わたしは彼の腕をつかんでこちらに向ける。
「人が浮かんでる!」
私たちは呆気にとられて見つめていた。
これは、幽霊?
あ、足は? ……ちゃんとある。空中のなにもないところを踏みしめている。
日本の幽霊じゃないとか?
……でも、きれいな人。
その女の人の幽霊は、大人の魅惑的な美貌をたたえていた。
肩からかかったベールが揺れて、まるでおとぎ話の天女のように見えた。
音もなく、移動して庭に降りてくる。
それから首を振って、私たち二人を見た。すっと目を細める。
そして滑るように私たちの前に立った。
私たちは動くこともできない。
トモがわたしの手を握ってくれた。
女の人が話しかける。
「わたしが見える?」
無言で何度もうなずく。
「ふふっ。わたし、きれい?」
うわあ!
鳥肌が立て来た。
それって、それって!
トモがすっとわたしの前に出た。
「とっても、きれいだと思います」
バ、バカ! なに、冷静に言ってるのよ! うわさ話知らないの!
その時、女の人が口を開けた。
わたしの心臓が締め付けられる。
「わはははは!」
あ、あれ?
目の前で浮いている女の人がおもしろそうにお腹を抱えて笑っている。
わたしは事態がのみ込めず呆気にとられた。
「あはは。……あなた達、正直ね。……それにわたしが見えるなんて、変わってるわ」
え? え? なんだか陽気な幽霊だ。ほんとに幽霊かな?
「あの、あなたって……」
女の人が笑いやんで、ん? という感じでわたしを見る。
「ゆ、幽霊さんですか?」
今度は、にやっと笑った。
「そう見える? そう思わせといた方が楽なんだけど……あなた達かわいいから本当のことを教えてあげるわ」
ほ、本当の事ってなんですか? 怖くてきけない。
トモとつないでいる手に自然と力が入る。
その時。
「わたしね、あそこから来たのよ」
女の人が腕を上げて、夜空を指さす。
そこにはきれいに輝く星がきらめいていた。
はえ? それって、それって……宇宙人ってこと?
「そういうこと。初めまして、この星のお二人さん」
そういって、彼女は優雅に腰を折り、私たちに挨拶した。
立ち直ったのは、なぜかトモの方が早かった。
「あ、こちらこそ。ようこそ地球へ。織姫様」
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