透明少女 (2)
「服脱ぐから、こっち見ないで」
トモが抜け殻のようなわたしの制服を見てる。
「でも、見えないよ」
「バカ。わたしのブラやら、ショーツ見て想像する気なの?」
トモがあわてたように向こうをむく。
ほんとに男の子って、もう。
わたしは、制服のブラウスに手をかけた。
ブラウスを脱いで、スカートを脱いで、ブラをはずし、ショーツを脱ぐところで、さすがに手がふるえる。
いくら見えないからって、男の子の隣で、裸になるんだ。うらむよ、トモ。
ブラとショーツをスカートのポケットに押し込んで、トモに渡す。
「これ、鞄に入れといて」
何もないところに服が浮かんでるのは、手品みたいだ。
彼はそれを受け取る。
「気をつけて行って。何かあったら僕が飛び出すから、メグは気にせずに走って。もし、僕が捕まったら、後で戻ってきて」
「戻ってきてどうするのよ」
「僕の部屋の左の棚にカプセルがあるから……そうだな、6番を持ってきて」
うーん、よくわからないけど、
「わかった」
わたしは、見えないトモに知らせるために右手でちょっと彼の頬を触る。
「行くね。後で、絶対埋め合わせしてよ」
彼がうなずく。
立ち上がって、資材置きから慎重に歩き出す。部屋がよく見えるところまで出た。
入ってきた男たちは5人いた。4人は、向こうの方を調べている。扉の前に一人。
でも、扉は十分大きく開け放たれているから、脇を通り抜けられそうだ。
ネコたちが気ままに歩き回っている。男たちが歩きにくそうだ。
わたしは足音をたてないように慎重に進んだ。扉が近づいてくる。
もう少し。と思ったとき、突然背中にネコが飛び乗った。
一瞬の間、ネコが不自然に空中に浮かぶ。
あっと、声が漏れ、しまったと思ってしゃがんだ。
ネコが離れる。扉にいた男が、こっちを見てる。見られてるはずないけど、心臓が縮む気がする。
男が歩みだそうとしたとき、わたしの後ろで、大きな声が聞こえた。
「わああ。こっちだよ。いや、あっちかな」
バカ、トモ。何やってんのよ。
その声に、男たちが一斉にそちらを向く。そして走り出していく。
わたしはちらっとそちらを見た。トモが、クチパクで、は、や、く、と言っていた。
わたしは、急いで扉を抜けて、止めてあった自転車に飛び乗った。
さいわい鍵はかけてない。後ろで、トモが男たちに追いかけられているのがわかる。
鋭くなっている感覚を制御すれば離れていても状況はわかる。
わたしは急いで自転車をこぎ出した。
裸の体に夜の風が冷たい。肌に感じる風が全身の産毛を刺激して、変な感じ。
山道を出来るだけ速く駆け下る。
5分ぐらい走ったところで、トモが捕まったことがわかる。
もう、何やってんの。逃げてくんなきゃ、戻ってこないといけないじゃない。
わたしは、心の中で焦っていた。
もう、何でこういうことになるのよ。
だから、一緒に来たくなかったのに、ほっとけないし……世話のやける……。
来るとき二人乗りで40分ぐらいだったから、家まで30分で、どうにかなるかな。
それより、早く着かなきゃ。効き目が切れちゃったら、もう街を歩けないよ。
その時は、トモに……
わたしは、恥ずかしくなって、頭の中から考えを閉め出した。
とにかく、急ぐ。そう言いきかせた。
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