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    夏海パニック (7)
 それから、私たちは、がけの上の岩場を離れて道路の見えるところまで歩いた。
 途中から、やっぱり足が痛くて、わたしはトモに背負われたんだけど。
 海沿いの少し広い道をしばらく行くと、バス停が見つかった。
 私たちはベンチに座って休憩する。二人ともなにもいわなかった。

 10分もするとバスがやってきた。
 トモが運転手さんに行き先と、元の海水浴場への行き方を訊いている。
 トモがOKを出して、わたしに肩を貸してくれる。
 私たちは、バスの一番後ろの席に並んで座った。
 バスの中に、人は少なかったけど、水着で裸足の私たち。
 かなり場違いで、恥ずかしい。
「このバスにずーと乗ってればいいって、かなり遠いらしいけど」
「そう」
 トモが、まだ苦しそうに息をしている。
「ねえ、トモ。疲労回復の薬あるんでしょ。飲みなよ。寝ちゃったら、わたしがみとくから」
「うん」
 トモがカプセルを飲む。
 しばらく揺られていると、彼が寝息を立て始めた。
 わたしはその寝顔を確認して、ぼんやり窓の外を流れていく風景を見ていた。

 それにしても……ポーチにお金入れといてよかった。なかったら、バスに乗れないところだった。
 足、痛いなあ。あさってからの合宿だめね。早く直さないと……。
 でも、よかった、助かって。トモ頑張ったよね。
 ちらっと彼を見る。
 よく寝てる。
 でも、なんだかなあ。海に遊びに来たはずなのになあ。せっかくのお出かけなのになあ……
 バスの窓から吹いてくる風が気持ちいい。
 まだまだ先だよね。ちょっと、疲れたかな。
 トモの肩借りてもいいよね。ちょっとだけ……ちょっとだけ……。


「メグ。そろそろ着くよ。起きて」
 わたしは肩を揺さぶられて、眼を開けた。
 目の前に、いくつもの座席。横向いて見える。
 あれ? 何処だっけ?
「メグ」
「ふあ?」
 わたしは声のする方に顔を向けた。上からトモがのぞき込んでいる。
 あれ? トモ?
 あっと思って体を起こした。
「うわ!」
 トモがのけぞって避けた。
 わたしは、いつの間にかトモの膝の上で眠っていたようだ。
「お、おはよう」
 彼の膝に手をついて、体を起こしたら、お互いの顔が近い。赤くなりそう。
「あ、あの……元気回復した?」
「うん。すっかり。……メグは?」
「えっと……寝ちゃってごめん」
 その時バスが止まり、アナウンスが流れる。
「降りよう」
 トモがわたしの腕を取って、肩を貸してくれる。
 なんだかドキドキしていた。ヘンなの。
 

 いつの間にか夕暮れの道を、バスを降りて、彼の肩を借りながらゆっくり海へ向かって歩いた。
 狭い家沿いの道をぬけたところで、目の前に海水浴場がひろがった。
「わあー、きれい!」
 海に、大きな夕日が浮かんでいた。
 その光が海に落ちて、空だけでなく、海まで黄金色に輝いている。
 波が動くたびに、黄金がきらきらと光る。
「すごーい。すてき」
 わたしは、トモと並んで立ちながら、夕日を見ていた。
 また、来たいね。また、一緒に。
 心の中でつぶやく。
 その時、遠くの海面で、激しい水しぶきが見えた。
「あ、あれ!」
「クジラ……」
 私たちは顔を見合わせて、お互い、ため息をついていた。
 
 
 
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