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    夏海パニック (2)
 8月最初の日、わたしたち(わたしとトモ)は、電車に乗って海に向かった。
 明後日からクラブの夏合宿が一週間ほどある。その前に遊びにいきたかったのだ。
 通勤時間が過ぎた車内は、比較的空いていて、わたしたちはボックス席に二人だけで向かい合って座っている。
 トモと海にいくのは何年ぶりだろう。
 まだ小学生の頃、お互いの家族と共に海に出かけた事があった。
 あの頃は二人ともまだほとんど泳げなくて、浮き輪に浮かんで漂ったり、浜辺で城作りとかして遊んだな。今はまあ、普通に泳げるようになったけど。
 トモは、開けた窓から外を見てる。
「ねえ、トモ。着くまでトランプしよっか?」
「う〜ん、そうだな。なにする?」
「ババ抜き!」
 幼なじみのわたしたちは、二人だけで遊ぶことになれてる。
 ババ抜きは二人でやると案外楽しい。
 まず第一に、手元に残るカードが少なくなるので、一回の勝負が早くつく。
 それから、ジョーカーをどっちかが持ってるから、引くときに必ず駆け引きすることになる。
 駆け引きにかけては、私の方がトモより上手。だから、駅に着くまでの一時間で、11回勝負したけど、わたしの7勝4敗だった。トモはちょっと残念そうに、
「くそー、あのカプセル使えば負けないのにな」
 と言った。
「だめ、だめ、ズルは。それに今はないでしょ」
「いや、念のため、いくつか持ってきた」
「そうなの?」
「うん。なんか落とし物したりするといけないから」
「そう。でも、その時はトモがやってね。わたしはイヤよ」
「分かってる」
 だって、わたしがやると消えちゃうんだもん。水着じゃ絶対ごまかせないわよ。


 わたしたちは、午前中に海に着いた。
 真っ青な空と、青い海、白い砂浜。
 今日は少し風が強いけど、絶好の海水浴日和でよかった。
 込み具合は、まあまあね。
 まずは浜辺にシートを引いて、それから海の家でパラソルを借りてくる。
 トモがそれを浜辺に立てている間に、わたしは海の家の脱衣所で水着に着替えた。
 トモと一緒に買いにいった新しい白い水着。ちょっと胸の辺りが気になる。
 そのままだと、あんまり目立ちそうだったので、用意していた薄手のパーカーを上から羽織る。色は渋めの薄茶色。
 よし、これでいいかな。
 わたしは、浜辺のシートまで戻った。
 トモはもう水着に着替えて、シートで待っていた。
「トモ」
 彼が振り向く。
 わたしはパーカーの前をちょっとあけて、水着を見せる。
「どう?」
 トモは、チラッとわたしを見て、
「う、うん、いいんじゃない」
「それだけ?」
 こら、トモ。ちゃんと見なさい。誰のために買ったと思ってるのよ。
 座っているトモの真正面に回って、しゃがんでみせる。
 トモは、今度はしっかりわたしを見た。
「うん。よく、似合ってるよ」
「よし!」
「いつもより、かわいい」
「え?」
 バ、バカ。なに言ってるのよ。普段言わない事言わないでよ。
 わたしは、強引にトモの隣に座った。
 顔を見られないように、うつむいて、鞄から日焼け止めを取り出す。
 わたしが日焼け止めを手足に塗っている間に、トモは行ってくると言って、海に向かって走っていった。そのまま走って海に飛び込んでる。
 あ〜あ、体操したほうがいいのになあー、とわたしはぼんやり思った。
 それから海で髪が邪魔にならないようにポニーテールにまとめて、わたしも波打ち際に向かった。
 
 
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