第二話は〜夏休みのある日。
二人で海水浴に出かけたトモとメグ。
溺れかけた幼い女の子を助けたまでは良かったのだけど……
第二話 夏海パニック (1)
もうすぐ夏休み!
高2の夏は貴重よね。何たって、来年は受験だったりして思いっきり楽しめないかもしれないし。
今年の夏は遊ぶんだ。
何処行こうかな。
遊園地は、もう子供っぽい? (トモはついてきてくれないか。)
高原のきれいなペンションなんかもいいよね。
涼しいし、夜にはきっと満天の星空なんだよ。(でも、そんなにお金ないけど……)
えっと、やっぱり夏といえば海。うちから電車に乗って1時間も行けば、日本海のきれいな海。
去年はいけなかったから、今年こそ行こう。一緒に……。
というわけで、今日は買い物。デパートに夏の用意にきてる。
かたわらには、トモ。なんだかんだで付き合わしている。
いつもはわたしのいうことをいやな顔をせずにきいてくれるトモだけど、今回はちょっと渋った。
「えー! メグの買い物のお供?」
「なによ。そんな顔しないでよ」
「だって、時間かかるし……足疲れるし……」
そりゃ、今までも、さんざん付き合わせたこともあるし、荷物持ちもさせたけど、でもね、女の子の買い物は時間かかるものなのよ。それに、こんないい女に休日相手してもらってうれしくないの?
「えっと、誰のこと?」
「トモ! もう助けてあげない!」
「あ、いや、えっと」
そういうわけで、トモはついてきてくれた。
7月の終わりはもう夏ね。ノースリーブの肩から、汗が噴き出す。
私たちは、涼しいデパートを3つはしごして、夏用の服や、かわいい日よけ傘や、サンダルを買った。まあ、買ったのはほとんどわたしなんだけど。
トモは、2枚ほど自分用のTシャツを買って、あとは……わたしの荷物を持ってくれた。
そうそうそれで、本日の一番大切なお買い物。
「トモ、水着売り場に行くよ」
まだ行くのか? とトモはつぶやいて、がっくりと肩を落とす。
こら。そんなこというな。
わたしはトモの背中を思いっきりたたいた。
水着売場には、この夏新作のカラフルな水着がいっぱい並んでいた。
オレンジ、ピンク、青、緑。ラインに、編み目に、細かな花柄。
ビキニに、セパレート、ワンピース。
うーん、どれにしようかな?
わたしは吊ってある水着に手をかけてぱらぱら見始めた。
トモが、かなり離れた通路に立っている。こっちも見てない。
「トモ!」
呼んでから、手招きする。トモは……かなり困った表情でこっちにきた。
「ちゃんと、一緒にいてくれなきゃだめじゃない」
「いや、でも、メグ。……ここはちょっと」
「下着売場じゃないんだから、わたしのそばにいれば大丈夫」
トモは、ちょっとわたしを見つめて、
「えっと、それもあるけど……それだけじゃないんだけど……」
なに? どういうこと?
でも、まあ、いいわ。それでね、トモ。
「海に行く水着、どれがいいと思う?」
「え? どれって、メグのいいやつでいいんじゃないの?」
「う〜んと、トモはどんなのが好き?」
「どんなのっていわれても、女の子の水着なんて着たことないし……」
バカ、当たり前じゃない。そんなこと聞いてない。
「だから、女の子にどんな水着を着てほしい?」
トモは、ここで初めてわかったというように、目を上げた。
「えっと、それは……」
トモは迷うように考え込んだ。
トモだったらなんていうかな? やっぱり、ビキニの水着かな? 胸を強調するようなやつ。
それとも、ひもでくくるような細いのとか……それだったらどうしよう? トモが着てほしかったら……
「えっと、白い水着がいいかな。ワンピースの……」
「え?」
意表をつかれた。
白い水着って、白い水着? ワンピースの?
……それって、目立つ。カラフルな色のついた水着より、かえって目立つよ。それに、
「白って、ちょっと透けちゃうんだけど……」
「あ、でも、前に、透けない白い水着が出来たって新聞に載ってたよ」
そうなんだけど……よく知ってるわね。
「でも、メグの好きなやつにすれば?」
わかってるわよ。
わたしは、吊ってある水着の中を探した。
白のワンピース。シンプルなスポーツタイプのと胸からドレープが入ったもの。白だけど生地自体におうとつがあって、網目模様に見えるもの。わたしはそれらを手にとって、体の前で重ねてみる。
「ねえ、どれがいい?」
トモは……見るからに恥ずかしがっている。
きっとへんな想像してるんじゃないかな? ほんとに、男の子って……。
トモは黙って、指さした。
「これ? これがいいの? わかった。買ってくる」
わたしは水着を持ってレジに歩き出す。
トモの選んだのは、シンプルなスポーツタイプの水着だった。
今日の重要な買い物を終えて、荷物を半分ずつ持ってデパートを出る。
トモの持っている荷物の大半は、わたしのだけど。
歩き始めて、すぐトモがきいてきた。
「夏休み、海に行くのか?」
「そうよ」
「さっきの水着、着る?」
「もちろん!」
トモは何か言いかけて、下を向いた。
しょうがないなあ。仕方ない。
「トモも一緒に行くのよ」
「え? 僕が?」
「そう、わたしの水着姿みたいでしょ。約束したからね」
トモはちょっと困ったような、照れたような表情。
でもわたしにはトモの本当の気持ちが分かる。
わたしは、荷物を持つトモの腕に、自分の腕を絡めて、一緒に歩き出した。
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