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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



愛ゆえなのじゃ


「まぁまぁ。で? 皐月ちゃんはその子と付き合うの?」
にこにこ笑顔で聞いてくる母さんに俺は呆れるしかない
「…母さん、俺の話ちゃんと聞いてた?」
「だって、ドキドキしたんでしょ?」
「関係ないから」
「式はいつあげようかしら」
「人の話聞いてますか!? てか僕は女何だから女と結婚とか無理だし!」
「勿論聞いてるわ。でも皐月ちゃん、あなた一つ大事なことを忘れてるわ」
「…何を?」
にっこり笑顔の裏に嫌な予感がしたが俺に聞かないという選択肢はない。だってあんな『聞いて聞いて』っていう可愛い笑顔と目で見られたら聞くしかないっての
うう…我が母ながら可愛さで俺をてなづけるとは…
つかマジで、もうすぐ29には見えない若さ&美しさだ。美の女神もびっくりだぜ
「皐月ちゃん、女の子と法的に結婚をできるのよ?」
「…は?」
なに言ってんのこの人。いくら俺が心は男と言い張ろうと無理だっての。
だいたい親が子に同性愛を勧めるっておかしくない?
「だって『崎山皐月』は正真正銘の、男の子だもの」
「…あ…」
そうか。じゃあ問題な―
「いわけあるかぁ! 問題あるから! だいたい、佐枝子は僕を肉体もちゃんとした男として好きなんであり、かつ僕は佐枝子と付き合う気はない!」
「気合いよ」
「無茶だぁ! 爺ちゃんからも何か言ってくれよ!」
「皐月…幸せになれよ」
「いっぺん死ね爺!」
爺ちゃんは味方だと思ってたのに!
俺が半泣きで怒鳴るのに爺ちゃんはふぉっふぉっと笑い、母さんと笑いあう
「皐月は照れ屋じゃのぉ」
「ねぇ、お父さんもそう思うわよね?」
「ああ」
何だこの雰囲気は!? 俺か? 俺が間違ってんのか!? 同性愛はすでに世界常識なのか!?
「あ〜〜! わけわかんねぇよ! とにかく俺は、誰とも結婚しない!」
「はぁ…融通の効かない子ね」
「それは母さんだよ! なんで僕が悪いみたいになるのさ!」
「まぁいいわ。とにかくゆっくりで良いから、自分の気持ちに素直になれたらいいわね」
「これ以上なく素直だよっ」
何でこんな人の話聞かない人が俺は好きなんだ。顔か!? 母さんが可愛いから悪いのか!? てか爺ちゃんは可愛くないけど好きだし!
「…っはぁ、疲れた」
机に頬杖をついてため息をつくと、爺ちゃんは俺や母さんの前では絶えないいつも笑顔で笑う
爺ちゃんの笑顔も好きだなぁ。母さんは母さんで絶えず笑ってくれてるけど(怒りながら笑うのはまじ勘弁してほしい)爺ちゃんとは微妙に…なんだ? わかんねぇけど違う感じ。とにかく好きだな
「皐月、まぁさっきのは冗談としてもじゃ。優希の言うように女と付き合いたいなら構わんぞ」
「まだ言うのかよ」
「いいから聞け。お前が男を好きになったら戸籍は女に戻せばいい。気負わずに好きだと思ったらそう言え。例え相手が誰でもワシらはお前が誰かを愛したなら、全力で応援する」
「そうよぉ。お父さんの言う通りよ。早く孫の顔を見せてね」
言ってること無茶すぎ! 爺ちゃんのちょっといいセリフが台無しだ!
つか母さんは俺が女だって分かってんのか? 女と女でガキができるか!
「ね、皐月ちゃん、私は女の子でも男の子でもいいわよ」
にっこりと、なんら裏のない大好きな笑顔で言われた俺は
「……うん、ガンバルヨ」
と虚ろな瞳のひきつった笑みで答えるしかなかった
とりあえず、成人したら養子をとろうと思う。男女で。孤児院とか日本にもそういう施設はあるし
てか、何で俺…本当に、こんな母さんにベタ惚れなんだよ。いや恋愛感情じゃないけど
本当に、惚れすぎだ
「はあ…お前はちゃんとすれば可愛い娘にだってなれるんじゃが…女で苦労するタイプじゃな」
爺ちゃんはしみじみとため息ながらに言い、俺は泣きたくなった
元々俺は強気なわりに実は押しに弱い。で、男なら倒せるが我ながら母さんだけでなく女には弱かった
だって…鍛えてないってことは昔の俺みたいに弱いってことだろ? 俺みたいに手に豆ができるくらいに人を倒すことを学んでない
そんな弱い女に、強くなった俺が乱暴にしたら、先生と同じになってしまう
「まぁ皐月なら大丈夫じゃ」
「爺ちゃん…俺、頑張るよ」
先日友達ができたと言うと爺ちゃんが携帯電話をくれた。使い方も、ややこしいことは分からないがメールや通話などの基本動作くらいできる
そして気付けば俺と爺ちゃんが出会った秋から、春へと季節は変化していた
「のぉ、皐月」
「なにさ爺ちゃん」
「うむ…」
佐枝子に告白された次の日の朝食の席で、俺が佐枝子のことを話し、一段落つくと爺ちゃんは改まって、何故か母さんをちらちら見ながら俺に何かを伝えようとしている
母さんは母さんで爺ちゃんに頷いているが…何?
は!! もしや…もしやもしやもしや! 爺ちゃんがついに母さんの真の魅力に気づき嫁にしたいとか!? いかん! 駄目だ! いくら爺ちゃんでも…母はやらーん!
「却下だ!!」
「は…まだ何も言っとらんが」
「…は! ご、ごめん」
危ない危ない。何か妙な方向へ思考が飛んでた。う〜ん、しかし母さんへの想いが恋じゃないのは分かったけど、我ながらマザコンなのは変わらないのか
「うむ…話が、あるんじゃ。今度の日よ…いや、今夜話そう」
日曜と言おうとした爺ちゃんだけど母さんのにっこり笑顔を見て訂正した。まぁ分かる。母さんはたいがい笑顔だけど、怒ってる時の笑顔は普通に怒られるより迫力がある
「分かったよ」
でも何だ? 母さんが進めてるみてぇだけど爺ちゃんは気がすすまねぇみたいだな
……わからん。爺ちゃんは俺だけじゃなく母さんにも甘いからな
とりあえず俺はデザートのチョコレートボンボン(爺ちゃん家にきてから初めてアルコールをとったけど、酒ってうめぇ)を食べてから爺ちゃんを玄関まで見送った



「さて、朝の続きじゃが…皐月もずいぶん普通に人と接せれるようになったな」
爺ちゃんが帰ってきてすぐ、晩飯も食べないうちにリビングに3人は集まった
「うん。爺ちゃんと会う前までくらいには普通にできるよ」
てか爺ちゃんと会う前は誰にも疑われないくらいには完璧普通に生活できてたし
「うむ、そんな皐月なら、新しい環境でもやっていけるじゃろうと思うのじゃ」
「う…ん?」
新しい、環境?
「今はちょうど春休みじゃし、ちょうど一学期が始まるのと同時に編入じゃ」
イチガッキ? ヘンニュー? ……いや、勿論意味は分かってる。俺は長年学校に真面目に通っていた。今の状態が異常なのも分かっている
嫌だなぁ。スゲーヤダ。けど、行かないとな
「……分かった。男として、でいいんだよな?」
戸籍は男なんだし。あ〜、でも学校でも猫被るなんて疲れるしヤダなぁ。俺ってば繊細なのに…
「安心せぇ。皐月が行くのは白雪学園じゃ。男のフリをする必要はないぞ」
「そりゃ男らしくを心がけてるけど、大半は素だぞ…って、は? 爺ちゃん今なんて言った?」
何か白とか雪とか聞こえた気がするんだけど
「白雪学園じゃ」
「それ…女子学園じゃん! しかも超お嬢様の!」
七海みたいなお嬢様だらけなんて嫌に決まってんだろ!
「いや、優希がそこがいいと言うんでな。ワシは別に皐月は何処にも行かんと、ずっとワシの家におったらええと思うんじゃがな」
「いやそれはさすがに…中卒じゃろくな働き口ないし」
母さんが良い例だ。本当に、正社員だってろくな扱いはされない
「なにを言っておる。ワシが死んだって財産は、会社以外の現金は全部お前と優希のものじゃ。貯めてきたからのぉ。皐月の年でも死ぬまで豪遊できるぞい」
「…爺ちゃん、気持ちは嬉しいけど却下な」
「な、なんでじゃ!?」
まぁ確かに凄く凄く凄〜く、魅力的な話ではあるし、実際爺ちゃんの会社を継ぐ養子の人と半分にしても考えられない金がくるんだろうけど…
養子の人は30代くらいの長身で目つきの鋭い男だ。名前は崎山 (さきやま のぼる)で、何度か男として会ったけど、なんか恐い。先生に対するような恐怖とは違う冷たい、氷みたいな雰囲気だ
「それに爺ちゃんは死んじゃ駄目だ。俺が死ぬまで生きろ」
「無理だ」
「駄目!」
「…そう言われてものぉ。ワシはもう70じゃし」
「気合いだぜ爺ちゃん」
「ならんわい。まぁとりあえず、学園に行け」
「……マジ? だって俺は男だぜ?」
「大丈夫。見た目は可愛い女の子だもの」
つまり中身は男と。なんつーか、俺自身にもどっちの性別になりたいのかよくわかんねぇし、複雑な気分だ
女であるのは何となく恐いが、先生と同じ性別は嫌だ。どちらかなら男と言い張るが、自分でもちょっと中途半端だと思う
「皐月ちゃんは立派な淑女になって、ついでに学園で可愛いお嫁さんを見つけてね」
嫁!? それが本音かこんちくしょう! 可愛い顔してムカつくぜ! でも好きだ! ……はぁ
「分かったよ…」
どうせ高校には行くんだし。目立たず大人しく過ごせばいいか
ってああ!
「! やっぱりダメ! 白雪は全寮だ! 母さんと爺ちゃんと離れちゃうじゃん!」
「皐月ちゃん、ファイトよ」
「母さん〜」
何でそんなこと言うんだよ。爺ちゃんはちょっと寂しそうに笑ってるけど、二人とも意見を変える気はないみたいだ
「皐月、回りは女ばかりなんじゃから大丈夫じゃろう? ワシらがいんでも大丈夫にならんと」
「……ヤダ」
言いたいことは分かるけど、でもいきなりすぎるだろ。まだ…まだそんな…
「週末は帰ってくればいいじゃない」
「そうじゃ。電話をしてくれたら会議中でもでるぞ」
「……」
「ね? 皐月ちゃんが頑張ったら、お母さんもすっごく頑張っちゃうわよ?」
何を頑張るんだよ
………嫌だ…けど、逃げられないみたいだ
「……うん、分かった。頑張る…よ。ただし、『崎山皐月』としては行かない。女としてなら、変装して行く」
それだけは譲れない。学園には男がいないから女でもいいけど、ここでは男がいい
「ああ、構わんよ。新しく戸籍も用意しよう」
「前のでいい。名前を変に変えて反応できなかったらまずいし」
『皐月』という名前は、好きだから。名字と性別が違って変装すれば、まさか同一人物とは思わないだろ。七海だけは顔覚えてるかも知れないが、逆に言えば七海とさえ関わらなければバレないってことだし
………行きたくないなぁ
「はあぁ…」
「そ、そう暗い顔をするな。何も皐月を虐めとるんじゃない。これもワシらの愛ゆえじゃ。学園に行って友人をつくれば楽しくなる。男はいないんじゃから」
「…うん」
「皐月ちゃん、今日は久しぶりに、お母さんが料理つくっちゃおっかな? 海老フライとか」
「…うん。ありがとう」
基本的にどんな料理も好きだけど海老フライは特別だ。俺が始めて母さんの為につくった料理で(今思えば初心者が始めに揚げ物ってあり得ないな)油っぽくてまずいのに母さんはにこにこ食べてくれた
それから俺は母さんに喜んで欲しくて料理を始めたんだ。炒飯とかなら得意だけど、思い出深い料理は? と言えば海老フライだ
「母さん…僕も、手伝うよ」
「あ、わ、ワシもじゃ」
「え〜? 爺ちゃん作り方わかんのか?」
「う、わからん」
「しょーがねぇな。俺が教えてやるよ」
俺は笑った。もうすぐ変わる日常のことは、考えたくなかった
女の子だったのが男になった気になり、戸籍まで男になれば今度はまた女になる
ああったく、俺ほど変な人生送ってるやつって他にいんのか?















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