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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



昼食は手作りで


顔が赤くなるのを自覚しながら俺は誤魔化すように映画館を出た。

「次、次はどうする?」

はふぅ…しかし勘違いでキスをするとは…うぅ。恥ずかしい。弘美が少しも顔色を変えてないのが救いだ。
小枝子は状況が特殊だからで、普通に考えて弘美が同じ女の俺に告白なんてあり得ない。なのにあんな勘違い……うぅ、穴があったら入りたい。

「顔赤いわよ」
「う…悪かった。頼むから言わないでくれ」
「全く…ヒロが皐月様好きとか、自惚れないでよね」
「うあああぁあ」

人目も気にせず悶えてしまう。
恥ずかしい。全くもって弘美の言うとおりだ。

「ほら、もういいから。いつまでも気にしない」
「うぅ…すまん」

だがこうしていても時間が無駄になるばかりなので俺はまだ赤い顔をそのままに歩き出す。

「で、どこに行く?」
「お腹減った。ファーストフードでいいわよ」
「あ、駄目」
「は?」

よし、もう気にしないでおこう。顔が暑いのは太陽のせいさ。

「弁当、持ってきてるから」

「…は?」

弘美はぽかんとした表情で俺を見ている。

「どうかしたか?」
「…お弁当?」
「そうだが?」
「……どこのお弁当?」

何だよ、弁当までメーカー決めてたりするのか?

「手作りで悪かったな。でもサンドウィッチみたいな簡単なもん失敗しな―」
「悪いなんて言ってない」

俺の言葉を遮った弘美の声はけして大きくないが、何故か強い響きがして俺はそうか…と頷いた。

「食べる。食べるわ。食べてあげる」
「…じゃあ、公園に行こう。ピクニックシート持ってきてんだ」
「シートまで? 呆れた…」

手をひいて歩きだすとブツブツ言いながらも抵抗せずに弘美はついてくる。
むぅ、何だよ。たまにはこう、童心に戻りたくなるだろ。

「うるさいなぁ。いいだろ? 久しぶりにピクニックをしたかったんだ。今日のコンセプトはずばり、郷愁だ」

勿論、今思いついた。ジャンクフードは体に悪いから弁当作って、鞄が大きめでぺこぺこだからレジャーシートはノリで持ってきただけだし。

「こういうのは小学校の遠足ぶりだろ?」
「…いいけど」
「じゃあシートな」
「そのじゃあって何よ」

いちいち文句をつけるなぁ。まあ異議はないようなので俺は公園に向かう。

「その方が遠足っぽいじゃないか! それともお前は遠足でベンチに座ってたのか?」
「遠足なんて行ってないし」
「は? 何で?」
「…うるさいなぁ」

思わずまじまじと弘美を見ると、弘美は俺をうざそうに見る。
わー…きたよ氷の如く冷たい目…そうだよな、何でこんな風に見てくるやつが俺を好きとか勘違いしたんだろ。

ちょっぴり凹みつつ、俺たちは体育館とかもある大きめの運動公園に到着。

奥の木陰に行き、芝生にシートを敷く。

「さ、どーぞ姫」
「ふん…言われなくたってあがるわよ」

弘美は憎まれ口を叩きながらシートにあがる…靴をはいたまま。

「…ちょっと待てやお前」
「何よ」
「何で靴はいたままやねん」
「何で関西弁なのよ。……靴、ぬぐの?」

…知らないのかよ。つか、え、マジで遠足行ってないのかよ。あー…てかお嬢様らが列作って山登りとか、するわけないよねー! あはははー! ……俺は断固として格差社会反対です。

―閑話休題

「ま、食べようか」

今度こそ靴をぬいだ弘美と向かいあって座り間に弁当を広げた。
サンドウィッチは卵、ハムサラダ、カツ。当たり前だが時間がたっても大丈夫なやつだけだ。間違ったって生サーモンとかははさんでない。(まぁ、一応夏だし用心して専用の入れ物に入れてもらったんだが)

「どうせ不味いだろうけど我慢するから有りがたく思いなさいよね」
「美味いよ! …あ、いや、そりゃ、お前らが普段食ってるのに比べるとアレだが…」

ううむ、どちらかと言えば料理だろうが何だろうがオールマイティーを自負していたが、当たり前な話プロには勝てないし、プロの飯しか食わないやつには美味くないかも?

「う、うー…ん」
「いただきます」

だが俺の苦悩を無視して弘美は普通に食べ出した。
う、なにを言う気だ?

「あ、美味し……ん、ううん、まぁまぁね」
「素直じゃないにもほどがある!」

『美味しい』の『美味し』まで言っておいて!? いや嬉しいけどね!?

「ちょっとは素直に褒めれないのかよお前は」

文句を言いながら俺もサンドウィッチを食べる。うむ、我ながら美味いと思う。
とは言え、さすがに学園の食堂にも劣るし普通に家庭の味レベルなのは自覚してる。
だから、本当は素直に『美味しい』の
「い」抜きだろうと思ってくれたのは嬉しい。

「あんたこそ素直に喜びなさいよ」
「まぁまぁと言われてか?」
「…ヒロのまぁまぁは、世間一般的にはまぁ美味いんじゃない? 調子に乗らないでよってくらいなんだから」
「いや、それはそれで微妙な評価なんだが」
「うるさい黙れ、あんた最近調子に乗ってるわね」
「…あの、俺ってば一応先輩だったような…」
「先輩面すんな」
「先輩だよ」

こいつもこいつで俺への対応に波があるよな。まぁ、ていうか優しくされるほうが慣れないからこっちのがいいんだけど。………Mじゃない、違うからな。断じて違うからな。

「ふん…あんたさぁ」
「何?」
「…なな…何でもない」
「7?」
「何でもないって言ってんでしょ犬畜生が」
「……」

何でここまで言われて俺は怒らないんだよ……昔の俺なら怒ってたよ絶対。慣れって恐いなぁ。

「何だよぉ。素直じゃないな」
「どうせ、小枝子様や紗理奈様ともまして七海様とも違うわよ」
「…拗ねてん―」
「拗ねてない!」
「…ま、言いたくないなら良いけど。変に比べなくたってお前はそのままで十分だよ」

スタイルのよさは勿論、小枝子ほど素直でも紗理奈ほど快活でも七海ほど真面目でもないし、しかも弘美って口は悪いしたまに陰険なことするし……………いや! いいとこもあるってうん!

「どう…十分なの?」
「え、ええ? どうって…十分…」

弘美があいつらと並んでも遜色ない部分…ねぇ。

「十分…可愛い? あと、優しい?」
「何で疑問なのよ!」
「いや、その…と、とにかく! 気にするな! 幼児体型でも愛があれば大丈夫だから!」
「…死にたいの?」

フォローしたのに!?

「全く……何であんたはそう、すぐにヒロを怒らすのよ」

疲れたようにため息ながらに顔をさげお弁当にを食べる弘美の態度に俺は唇を尖らせる。
何だよ。じゃあどうやったらお前が怒らずに笑うのか教えて欲しいぜ。

「俺だって怒られたいわけじゃないって。むしろいつも笑わせといてやりたいって」
「…いつもって、それヒロに阿呆面になれって? あんたじゃあるまいし」

……あの、割りと真面目にお前のためを思って発言したんだが。
ていうかさっきからお前食い過ぎだろ。人の顔見ようとしないし。ちょっとムッ。

「おい弘美、話してんだから人の顔見ろよ。マナー違反だろ」
「食事中に話をするの自体マナーとしてどうかと思うけどね」
「……」

ああ言えばこう言う! こいつ絶対俺のこと嫌いだろ! …くそぅ、でも、でもなぁ、気まぐれだろうと優しくされたことがあれば、やっぱりこっちは嫌いになれないんだよな。

「半端なことすんなよな…」
「はぁん?」

う、小さい声で言ったのに聞こえてたのか。

「…別に」

誤魔化すように残りのサンドウィッチにがっついた。空になった入れ物は蓋をして鞄の隣に置いた。

「…半端なのは、あんたでしょ。何よ。何よ…何なのよ!」

キッ―と上げた弘美の顔は明らかに怒っている。
うわ〜だから何で怒るんだよ。もう嫌だ。

「な、お、怒るなよぉ……謝るからさ」
「何が悪いか分かってないくせに謝るとかゆーなぁ!」

…まいったなぁ。










皐月様は、ヒロを怒らせる天才だ。っとにむかつく。
だいたい、幼児体型ってどういうことよ。そりゃ…小さいけど、でも胸に関してあんたに言われたくないっつーの!
ヒロを笑わせてやりたいとか…そんな言葉で……喜んでなんて、あげない。
それに、あんたの態度はなんなのよ。あんたが中途半端じゃないなら世界から曖昧という言葉が消えるわ!

「……」
「…なぁ、何怒ってんだよ? 俺が何したって言うんだよ? ……いい加減怒るぞ」

嘘つき。そんな困ったみたいに眉をハの字にしてそんなこと言ったって信じるわけないでしょ。

「……あんた」

誰が好きなわけ?

とか聞けないし。聞けるわけないし。だって…紗理奈様じゃあるまいし、女同士なのに当たり前に好きとか言えないし。

……だから、さぁ。そんな目で見ないでよ。…ヤバいって。
何か…好き、とか、可愛いとか、バカなこと思っちゃうじゃない。

「なに?」
「…バカじゃないの?」

何でこんなこと言ってるんだろ。

「バカだよ。だいたいさ、何で怒らないわけ?」
「え〜? そんなことで文句言われても。何でって…お前だし。慣れたとゆーか、それにお前だって八つ当たりにしろ意味なく怒ってんじゃないんだし。いちいち怒り返すのも面倒」

…こんな言葉に、面倒とか言われて、どうしてヒロは怒らないのよ。本気で怒れればいいのに。
そして失礼なこいつを嫌いになればいいのに。

「…あんたなんか嫌い」
「…そうなの?」

そんな目で見るな…バカ。

「嫌い。嫌いよ。何でヒロが…ヒロがあんたなんか好きにならなきゃならないのよ! 何であんたのために悩まなきゃならないのよ! どうせヒロは胸ないしちびだし素直じゃないし性格曲がってるし可愛くないわよ! 可愛いのは見た目だけよ!」
「自分で言うなよ。…色んな意味で」
「何でヒロが、あんたに嫌われたくないとか思わなきゃならないのよ! バカ!!」
「……お前、可愛いなあ」
「うるさい!」

可愛いとか、言うなぁ! ヒロが本命じゃないくせに! どうせもっと別の人が好きなくせに! 半端な態度とらないでよ!
ヒロに、こんな誰かと比べるような卑屈なことさせないでよ!
好きなら好きで誰がにさっさと告白しなさいよバカ! んなのだからいつまでも小枝子様と微妙な関係なのよ!

「…なぁ、なに悩んでるかわかんないけどさ。とりあえず俺お前のこと好きだし、嫌いになんてならないって」
「うるさい…」
「だからさ、ちょっとくらい素直になれ。誰かがお前のこと嫌いって言うなら俺がそのぶん好きって言うから元気になれよ」
「……何よそれ」

普段は生意気で優しくないし乱暴なくせに、こんな時に過剰なほど優しくしないでよ。
やっぱり好きとか思っちゃうじゃん。女同士なのに、真面目に好きになっちゃうじゃない。
未来永遠を誓えるわけじゃないし、どうせ学園を卒業したら疎遠になっちゃうに決まってるのに………なのに何で皐月様なんかを好きにならなきゃなんないのよ。

「ヒロは…あんたなんか嫌いなんだからね」
「はいはい…じゃあ飯も食ったしこれからどうする?」
「……皐月様は、どうするつもりなわけ?」
「んー…何か眠くなってきたし昼寝しない?」
「…この暑い外で?」

てゆーかさっきまであんたヒロに八つ当たりされてたって分かってんの?

「まぁほら、はらごなしに30分だけだから」

ぐだぐた言いながら結局、皐月様は寝た。映画館でさんざん寝たでしょと言っても聞かずに寝た。

信じられない…普通二人で遊びにきて寝るか? ヒロが暇になったらどうするとか気をつかいなさいよ。
本当…皐月様はバカなんだから。








何だかわからないが、弘美は俺に嫌われたくないらしい。
もしかすると合宿?後半からの不機嫌も誰かに嫌いとか言われた(あいつらが言うわけないし電話かメールで)とかなのか?
だけどそれで悩んだりしてたのか? あの弘美が? ……可愛すぎだろ。だからだよなぁ。
だから―こいつの暴言に怒れないんだよなぁ。

「んー、よく寝たぁ」

きっかり30分で弘美に起こされた俺は大きくのびをする。

「あんた寝過ぎ。つか食べてすぐ寝たら太るわよ」
「それを言うなら牛になるだろ」
「は?」

そして…偉そうにするわりに物を知らないところも憎めないんだよな。

「じゃあ行くか。まだまだ、今日は終わらないぜ」

遠足は家に着くまでが遠足、なんてな。











どうして弘美が情緒不安定気味かと言えば、本人ごくノーマルなつもりで皐月が気になったりするからです。
他にもありますがそれはおいおい…。
ラストまで大まかには決めてるので時間さえあればどんどん連載したいです。
忙しいし元々執筆スピードにムラがあるタイプなんですが、今年中に完結したいです。
みなさん応援よろしくお願いします。












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