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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



バレました


こんこん―

帰ってから昼ごはんを食べて(お弁当を持って行っててそれを食べた。しかしお弁当って何で室内で食べると不味いのかな?)シャワーを浴びてから俺はクーラーのきいてる部屋でごろごろしていたら、ノックされた。

「はいよー?」
「あたしだよ。君のあられもない姿を拝みにきたよ」
「…開いてるぞ」
「お邪魔しま〜す」

バタバタとドアを派手に開閉して紗理奈は俺が寝転がってるベッドにダイブした。

「おい、危ないだ、っておい!」

隣に着地した紗理奈は勢いそのままに仰向けに寝ていた俺を跨いでお腹に座る。
ぐぁ。お前…普通に痛いんだが。せめて座ると言え。力抜きまくってたわ。
足はベッドに乗せてるとは言え遠慮なく俺のお腹に体重をかけてくる紗理奈は、俺の非難の視線も構わずにこにこしている。

「んだらば、とって見よっかな〜」
「ちょっ、待てよ」

俺は慌てて手を伸ばして紗理奈の両手をそれぞれ掴む。
いきなりだな。いや、見せたっていいけど、人が漫画見てんのにいきなり過ぎだ。
とっさに放り出した漫画はベッドの横の床でひっくり返ってる。
折り目がつくから直させてくれ。

「何さ。見せてくれないわけ?」
「いや、いいけど、この体勢を何とかしてくれ」

相手がお前だからいいが、これが男なら間違いなくぶっとばしてるぞ。
こんな体の自由のききづらい格好、普通に屈辱的だし全く……ていうか、お前でも若干落ち着かなくなるし。

「え〜、いいじゃん」
「襲われそうで嫌だ」
「…マジでしてもいい?」
「…マジで殺すぞ」
「あは! 冗談冗談」

俺はふんっと紗理奈を押しのける。紗理奈はふふふと怪しく笑いながら、再び俺に近寄り今度はベッドに座る。
互いの膝がぶつかりしかも俺はあぐらをかいてるので、互いに上体を少し傾ければ頭がぶつかる距離だ。

「さ、とってとって」
「分かったよ」

室内でも当たり前につけていたが、念のためだし別にそこまで気をつけなくていいだろ。

パサリと長い髪を外すと一気に涼しくなる。シャワーの時にも基本的につけていて、洗う時だけ外して先に髪だけふいてまたカツラをつけて今度はカツラを洗うのだ。
うわ、改めて言うと面倒臭いな。でも入浴中もカツラつけてて良かったよマジで。昨日みたいなことがあるんだからな。

「……」

紗理奈は笑うのを止めてしげしげと俺を見る。

「な、何で黙ってるんだよ」
「いや…男としたら童顔だなって思っただけだったけど、可愛いなぁ」
「……照れるぜ」

本当は照れると言うかそんなこと言われても戸惑うが、とりあえずそう返す。

「…や、マジで可愛いじゃん。ボーイッシュキャラとしたらその口調も全然アリだよ。うん。顔と髪型合う〜」
「…ど、どう反応すればいいんだ?」
「照れて顎をひきながら上目使いに『ば、バカ…僕なんか、可愛いとか思ってないくせに』って言って。食べちゃいたいくらい可愛いよって言うから」
「…お前、いいから黙って頭を豆腐の角にぶつけてくれないか?」

そうしたらその変な思考回路が治るんじゃないか?

「やだよ。にしても…うん、可愛い男に見えなくもないじゃん」
「当たり前だろ。そうやって生活してたんだから」
「ふぅん…確かに、エピソードの一つもあれば小枝子が惚れても不思議じゃないか」
「何だよ。わりとモテてたんだぞ」
「弟扱いじゃない?」
「まあ、小枝子ほど真剣なやつは少なかったけどな」

可愛がり半分からかい半分だったのは認めよう。女に甘いと知れ渡ってたし、『告白』をしたい女にしたらフってくれて万が一付き合っても酷いことはされないだろう丁度いい相手だったんだと、今なら尚更良く分かる。

「ふぅん…にやにや」

何だよ。ていうかなに? その擬音を口で言うのはお前のマイブームなのか?

「ねぇ、皐―」

ガチャ―

「皐月様、話あんだけ…え?」



突然開いたドアからは弘美が顔をだし、俺を見て固まっている。

「っ!?」
「ひ、ヒロ!? こ、これはその…っ」
「し、失礼しました!」

バタン!
ドアが閉まった。

「…へ?」
「あ、あは…どうやらあたしが誰かを連れこんだと思ったみたいだね」
「ええ?」

気づいてないのか?

「ま、すぐ気づいて戻るでしょ。ごめん皐月。バレたね」
「いや、ごめんってんな軽く…」
「まぁほら、会長じゃないしマシじゃない?」

そうだけど! そのうち話そうと思ったけど! 心の準備ってもんがあるだろ!
いや、別に紗理奈は悪くないんだけど…むしろそもそも、朝に振り返って毛を回収さえしてれば…っ!

バンー!

また乱暴にドアが開いた。

「ええ!? ちょっ、あんた皐月様!?」

ああもう…面倒なことになったなぁ。
もし朝に戻れるなら、絶対にベッドをチェックするのに!










「…へぇ」
「えっと…ヒロ様、ご理解いただいたでしょうか?」
「頼む! 七海には黙っててくれ!」

俺と小枝子はベッドに正座して並び、机に座って椅子に足を乗せる弘美に低姿勢で説明した。
なんでこんなにへりくだってんのかは分からないが、七海にバラされたらヤバいしな。

「え〜、どーしよっかなぁ?」
「弘美、頼むよ」
「それってさぁ、小枝子様も紗理奈様も前から知ってたわけ?」
「あたしは今日聞いて、小枝子は中学同じだからね」
「…別に、黙っててあげてもいいわよ」
「ほ、本当?」
「さすがヒロ! 心広い! さすがあたしの後輩!」
「や、関係ありません。ただし条件があるわ」
「…な、なんざましょう?」

冷めた弘美の見下し視線に俺は姿勢を正す。俺の横ではもう関係ないと思ってるのか、紗理奈はふ〜と足を崩して枕に倒れた。

「…あんたの誰も知らない秘密をヒロに教えなさい」
「…は?」
「うわ、なかなか面白い条件だね」

ベッドに寝たのもつかの間、楽しそうに紗理奈はベッドを揺らして勢いよく立ち上がる。

「んじゃあ、あたしが秘密聞くわけに行かないから出てるね」
「ちょっ、紗理奈?」
「皐月、バリバリ秘密教えてあげなよ」
「おい!」

んな無責任な!
だが俺の狼狽も構わず紗理奈は機嫌よく部屋から出ていった。
そして部屋には俺と弘美が残された。
ゆっくりと顔を弘美に戻す。

「…マジですか?」
「当たり前」
「いや、言ったら秘密じゃなくなるじゃん」
「ヒロとあんたの秘密にすりゃいいじゃない」
「……」
「何よ。……心配しなくても、誰にも言わないわよ」
「いや、それは…信用するけどさ」

けどいきなり誰も知らない秘密とか言われてもなぁ…先生の件は言いたくないし紗理奈知ってるから除くとして…何かあったっけ?

「……」
「そんなに、ヒロには言いたくないわけ?」
「いや、つかそんな…誰も知らない秘密とかないし」
「…は、いや、一つくらいあるでしょ」
「う、う〜? ……あ」
「なになに?」
「実はまだ夏休みの宿題に手をつけてないんだ」
「…あんた巫山戯てんの?」
「いや、謝るから本を机に戻せ。ってもなぁ…マジで思いつかない」

興味深そうな表情を一転、不機嫌にふりあげた漫画本を弘美はふん、と投げ、漫画はベッドにばさと落ちた。

「…あんたねぇ、秘密主義もほどほどにしなさいよ」
「別にそんなつもりないって。色々合って男として暮らして、爺ちゃんと出会って崎山皐月になったくらいしか……ん〜、あ、一つある」
「…今度こそまともなんでしょうね」

さっきは素直に嬉しそうな顔をした弘美も疑り深そうに俺を見る。

「俺、前に隣に住んでた人に戦闘技術習って体鍛えてた」
「……はあ?」

うん、これなら教えてくれた爺と母さんしか知らない。ちなみに母さんが知らないことはたぶんないから、母さんが知ってるのはしょうがない。

「母さんと教えてくれた人しか知らない。爺ちゃんにも言ってない事実だ」

黙ってるわけじゃないけど、鍛えてたとは知ってるしわざわざ言う内容でもない。

「厳密には誰にも知られてない秘密なんて俺にはないし」
「何でよ」
「母さんに言わないことなんかないし」
「…まぁ、家族しか知らないならいいわ。他には?」
「え…他にも?」
「だって、あんたが人に言いたくない秘密じゃないと意味ないじゃない」
「……それはあれか? 脅迫のためか?」


半ば冗談で(半分は本気)言うと弘美は俺の予想と違う反応を見せた。

「……ばか」


…は? え、何だその顔は。何でそんな…傷ついた、みたいな顔してんだよ。

「…はぁ…もういい。ヒロがどうかしてた。じゃあね、皐月様」

ため息まじりに無理と見て分かる笑みを浮かべながら机から降りて部屋を出ようとする弘美。

「ぁ…」

引き留めなきゃ。
とっさにそう思って、ベッドから立ち上がりながら弘美に手を伸ばす。

「え?」
「っ、だ!?」

あ、足が痺れたー!
いったいどのくらい時間がたってたのかは分からないが、現代人の俺を痺れさせるには十分だったようだ。

勢い余って弘美を床に押し倒し、ガァンと派手な音がした。

「あれ?」

音ほど痛くない?
…………は! 弘美!?

「〜〜のっ、バカ!」

後頭部に手をあてながら弘美が怒鳴り、弘美はその勢いのままぽろぽろと涙を流す。

「あ、あああぁあ…ごごごめん! い、痛い?」
「いた、いに…決まっ、てるでしょ!」

うわああ! どうしよう! 泣かした! 泣かしちゃった!

「ごめ、ごめん! あの、そのっ! い、痛いの痛いの飛んでいけ〜!」

頭を押さえてる弘美の手の上に被せるように撫でてから宙に手をひらひらさせる。
睨まれた。
あ、だからそんな涙出てる出てる! あああ、勿体無い!(何が!?)

「バカ! んなので治るわけないでしょ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 痛い? 痛い?」
「い・た・い、わよ!」
「ごめん、ごめんな。ど、どうすればいい?」
「……」

うわぁ…何も言わないくらい怒ってるよ。ヤバい。そんな痛かったのか。

「あ、その、氷とってくる!」

混乱しまくっててようやく冷やすことに思い当たった俺は走ってキッチンと往復。
戻ってきた俺は袋に詰めた氷を慌てて弘美の頭に押し付ける。

「つめっ」
「だ、大丈夫…?」
「…大丈夫よ。ぶつけた時はマジどうしてくれようか皐月様は、とか思ったけど、今はそんなに痛くない。明日には腫れもひいてるって」
「でもお前…泣いて…」

弘美の涙は、まだ止まってない。

「…これは…ヒロ、ほら、泣いてストレス発散するタイプだから。ついでに泣いただけよ」
「え、と…」

いや確実にお前、俺に八つ当たりしてストレス発散するタイプだろ。でもこれ…もしかしなくても俺に気をつかって言ってるよな。

「ごめん…」

俺は、どうしていいか分からなくて、謝るしかなかった。









「ごめん」

バカは怒られた犬みたいにしょげかえりヒロに謝る。
痛かったのは勿論そうだが、普段なら泣くほどではない程度だ。
ただ皐月様ののらりくらりとした態度と、よく分からない感情に振り回されてるヒロ自身にムカついた。
さらにそんな自分が何だか無性に悔しくて、床に倒れた衝撃で自分で意識しないで涙が出てしまったのだ。

「俺、どうやって謝ればいい?」

だからいくら何でもそこまで慌てたり、狼狽する必要ははっきり言ってないが、だが心配されて悪い気はしない。
ヒロは涙をぬぐって止める。涙にはストレスを発散させる機能があると何かで読んだが、少なくとも怒りは落ち着いた。

「別に、いいわよ」

確かに皐月様はムカついてムカついて仕方ないが、具体的に何が悪いわけではない。
ただ下僕のくせにへらへらしてるのが癇に触っただけだ………たぶん。

「でも…あ」
「何よ」
「じゃあ、秘密言うよ」
「え」

あるのかよ!と思わず皐月様のような口調で怒鳴りそうになった。最近ヒロの口が悪くなったとしたら確実に皐月様のせいだ。

「俺、お前のこと可愛いなって思ってるんだ。下僕扱いも最近はそれほどムカつかないし。」
「…は?」
「内緒だぞ?」
「…ば、バカじゃないの! んな、ご機嫌とりっ、誤魔化せると思ってんの!?」
「え…いや、そんなつもりはないんだけど…つーか―」

続いた皐月様の言葉に、今度こそヒロは皐月様の部屋を飛び出した。









「つーか、そういうとこが可愛いんだけど…」

恥ずかしいから小さく呟くと聞こえたのか聞こえなかったのか弘美は俺にバカと怒鳴って出ていった。
なにはともあれ、まぁ元気そうで良かったと言うべきか。
しかしさっきの秘密は……我ながら恥ずかしすぎる。絶対に誰にも言えない。
だってそうだろ? 下僕扱いされても怒らないどころか可愛いと思うなんて、俺は変態かよ。
弘美が変に解釈しなけりゃいいが…でもだからって正しい意味を聞かれても俺にも分からないが、とりあえず変態ではない。

「…はぁ」

俺はベッドに倒れる。めちゃめちゃ疲れた。
あーあ、最悪。
あの時、ベッドを確認さえしてれば紗理奈と弘美にばれて、あまつさえ弘美を泣かしたりしなかったのに。


ちぇっ。
何だかなあ。バレたのはいいけど、泣かれたのはやっぱりキツイ。
後でもう一度、謝っておこう。
とりあえず今は…夕食まで寝よう。














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