あい・らぶ・まみぃ!(43/59)縦書き表示RDF


あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



頼りにしてるよ紗理奈さん


「……ん、んあぁ…」

朝か…う、なんか眠い…時間は……あれ、携帯電話は…?

「〜…ん…」
「……え」

隣になんかいた。
ていうか、七海だ。

「…あ」

そうだ。昨日介抱されたんだった。つか、一瞬真面目にびっくりした。
隣に金色が寝てんだもん。

欠伸をしながらベッドから出る。まだ朝食まで時間あるし…どうしよう。昨日、一昨日とトレーニングを何もしてないしな。
今までもたまに寝坊したことはあるが時間ある時にちゃんとやってたのだ。こればかりは女になろうと止めない。

ズル―ぱさっ

……カツラがとれた。
そういや昨日髪をふいてもらってたんだよな。…よく無事だったな俺。しかも引きずられて…。

もしバレてたらと思うと血の気がひくぜ。特に七海は崎山皐月を知ってるんだからな。

いそいそとカツラを装着し、鏡でチェック。うん、オッケー。

「…んぅ…」
「!」
「んんんっ……ふ、あぁ…んぅ…皐、月? もう起きているの?」
「は、はいっ。目が覚めたもんですから」

眠たげに目をこすりながら上体をおこす七海に、俺はカツラごと頭皮を押さえながらゆっくり振り向く。

バレてないよな?

「そう…まだ6時じゃない。休みなのだからまた寝ていいわよ」
「七海、様は?」
「私は…一時間ほど寝るわ。昨日は遅かったから」
「そういや…紗理奈と遊び終わった後なのにまだ起きてたんすもんね」
「紗理奈? ああ…あれからまだ遊んでたの? だからあんな時間にお風呂に…」
「七海様はどうしてあんな時間に?」
「ん? ちょっと、ね。起きるなら早く出ていきなさい」
「はーい」

ま、バレてないなら何でもいいや。俺はさっさと部屋を出た。振り替えれば良かった、と、後悔することになるなんて思わなかった。










「…ん…」

皐月が出て行ったので私はまた寝た。
クーラーは適度にきいていて丁度いい。気持よくパッと起きるのもいいが、休みが続くとやはりたまにはだらだらしたくなる。
それは私だって例外ではない。

皐月がいたので端に寄っていた枕を真ん中に置き直し、私はうとうとする。

そんなことをしていてふと目が覚めると7時になっていた。
そろそろ起きようかしら。
朝食は9時から10時だが、朝にシャワーでもあびて支度をすればすぐだ。

「…ん?」

ベッドに毛が落ちている。
つまみあげる。
短い…茶色の毛だ。紗理奈たちの色ではないし第一皐月以外に私の部屋に入ったのはメイドだけだが、二人とも黒髪だ。

「……?」

……えっと? どういうことなのかしら? 私の金の一部にしてもおかしいし短い。
私の髪は長いから、こんな10センチ弱の毛は明らかにおかしい。

「……」

皐月は黒髪だし…。誰?
何だか気持悪くなってきた。濃さが違うが茶髪だし紗理奈の髪と言うことにしておこうか。

「…駄目だわ」

もし誰かが侵入してるならはっきりさせねばならない。
譲り受けたと言えここは私のものだ。ましてや客人がいるのだから不確定要素などあってはならない。

私は慎重にハンカチに髪の毛をのせて包んだ。









「……」
「会長? 何か元気ないですよ?」
「え…ああ、そうかしら?」
「はい」

今日はどうするか話しているなかで黙々と朝食を食べていた七海に紗理奈が俺たちを代表して声をかける。

「そう…実は、見つからないのよ」
「会長、何か無くしたんですか?」
「それならヒロたちも手伝いますよ」

あからさまに覇気のない様子に俺も頷くが、七海は首を横にふる。

「違うわ…調べたんだけど、誰も、私たち以外にここにいないのよ」
「は? そんなの当たりま……ままま、さか、誰か、いたんですか?」

どもりながら何故か真っ青になる弘美。
何だ? 泥棒か? ん? でもいないんなら普通だろ。ここ、七海の敷地内なんだし。

「え、もしかして幽霊とか?」

楽しそうに問いかける紗理奈にえ、と小枝子は不安そうな顔をする。

「ばば、バカじゃないの紗理奈様! ゆゆゆ幽霊なんて…い、いないんだから!」

ばん!と机を叩く弘美。
つかお前…それでそんな真っ青なのか。幽霊が駄目なんて、ずいぶん可愛い弱点だな。
ひねた俺には、幽霊より生身の人間の方が恐いくらいだし、そんなことを怖がるなんて普通の女のコっぽいな。

「違うから落ち着きなさいヒロ。ここに幽霊なんていないわ」
「そ、そうですよね」

あからさまにほっとする弘美。うわーなんか凄くきもだめしがやりたくなってきた。
七海の話が終わったら提案しようかな、なんて考えていると七海はポケットからハンカチを取り出した。

「これを見なさい」

そのハンカチを広げると一本の毛があった。……これがどうしたんだ?

「これって…」

俺は首を傾げたが紗理奈と弘美は分かったらしく神妙な顔つきになる。
助けを求めて小枝子を見ると、なんかすごい微妙な顔をしてる。え? なにその顔?
何かを伝えようと小枝子は口をパクパクさせるが全く分からない。

「小枝子? この毛に心当たりがあるのかしら?」
「いえ! まさか!」

ん〜? いや、普通にこのメンツなら俺じゃないか?
茶髪は俺と紗理奈だけだし、紗理奈は俺より濃い。

「これ…私のベッドに落ちていたの。この別荘に、当てはまる人がいないのは分かるわよね?」
「え?」
「何よ皐月、心当たりが、あるの?」
「あるもなにもお―」
「ふ、不思議ですよね!」

あるもなにも俺のじゃん。昨日寝たし。と言おうとしたら小枝子に思いっきりさえぎられた。

「皐月さんも私も弘美さんも黒ですし七海様は金髪、紗理奈さんとも色合いが違いますもんね!」
「……ああ!」

俺、今黒だ!
そうかそうかそうかぁ!
だからかあーあー…3人の態度も小枝子の表情にも納得だ。俺の髪の色が茶色と知ってるのは小枝子だけだ。

「皐月様…今頃気付いたわけ?」
「鈍すぎよ」
「ほんっと、皐月は鈍いよね。あらゆることに」
「紗理奈、言い過ぎだろ。なんだあらゆることにって」

とりあえず気付かなかったことにはするが紗理奈のいいぐさにはムカつく。
どこがだよ。俺、普段は鋭いだろ? 剃刀並と言ってもいいぜ。いやむしろ出刃包丁だ。

「え〜、言ってほしいわけ? にやにや」
「口でにやにや言うな」

何処ぞの悪代官並のにやり顔しやがって。てか、こんなやつでも猫被りしてりゃ白雪の王子様だしな(それ以外にも色々異名がある。勿論七海たちにも)。

「とにかく、この髪の持ち主を探すわよ」
「はい」
「了解です隊長」
「…が、頑張ります」

七海が気を取り直してそう言うと弘美は真面目に返事をし、紗理奈はふざけて敬礼し、小枝子は俺をちらちら見ながら返事をした。

つーか……どうすればいいんだ? いやマジで。こんなもん…探したってただの無駄足になるし…。

「皐月? あなたちゃんと聞いていたのかしら?」
「え…あ、はい。聞いてます聞いてます」
「…ならいいわ。といっても、建物は一応探したの。誰か潜んでると言うことはないわ。二人組で建物の回りを少し見回るくらいね。それでも見つからないなら、警察に」
「あああ!」
「…何よ」

俺の大声に不機嫌そうに眉をよせる七海に俺は大げさにお腹をおさえる。

「痛い痛い痛い! お腹が痛い!」

んなもん通報されてたまるか! ああもう融通きかないな! これはもう、紗理奈にでも助けを求めるしかない(え、小枝子? 役に立つと思う?)。

「え?」
「だ、大丈夫? 皐月、君、拾い食いでもしたの?」
「だっ、ああ、痛い!」

誰がするかと言ってしまいそうになりながら、俺はううんと唸りながら向かいの紗理奈に目配せをする。

「ちょっと誰か俺をトイレに連れて行ってくれ!」
「ん、よしきた、あたしが運ぼう!」
「あ、私も手伝います」

や、小枝子は別にいらないし。ていうか普通に信じてんのかよ。

「大丈夫大丈夫。んじゃとりあえず3人で見回りしといてくださいよ」
「うう、いつもすまないねぇ」
「なにそれ? ていうか皐月様、急にどうしたわけ?」
「さぁ? 私にもわかりません」

いや、お前は気づけよ。
小枝子の意外な鈍さに俺は紗理奈に肩をかしてもらいお腹が痛いふりをしながら内心毒づいた。










「さて、で? 何かよう?」
「ああ……トイレに入る必要はあったのか?」

俺は紗理奈に肩をかりたままトイレに入ったはいいが、3個室ある中のうち一つにまで入っている。手洗い場で十分だろ。

「駄目駄目。ヒロとか心配してるきたら皐月がぴんぴんしてたらまる分かりじゃん。ただでさえ大根なのに」
「大根?」
「大根役者」
「…そんなにへただったか?」
「うん」

…うん、いいけどさ、役者になりたいわけじゃないしさ。

「で? 何かあたしに用だったんでしょ?」
「うん。そう、実はあの髪の毛なんだけど…」
「?」
「何の問題もないから何とか七海を収めてくれないか?」
「…は? えっと、犯人をかくまってるの?」
「違う。じゃなくて…えっと…」

もしかして、言わなきゃ駄目か? う〜ん…でも男として生活してたのは言ったし…。あ、駄目だ。こいつも崎山皐月の写真見たし…。
七海じゃないだけマシだが…う〜ん〜…。

「ねぇ、どうなのさ? 内容によっては黙ってるからさ」
「内容がよらなきゃ?」
「面白おかしく話す」
「……」

や、やっぱり小枝子とだけ話して解決すりゃ良かったか? けど…失敗して警察呼ばれてマジで調べられたら絶対バレるし。

「大丈夫だって。秘密は守るよ。友達でしょ?」
「う〜ん…」

まぁ、そうだな。紗理奈だしぃ…この際、紗理奈なら、全部言っても…いい、かな?
俺が崎山皐月であることを言えば、こいつに隠し事は一つもないことになる。

「……分かった。言うよ。俺…カツラなんだ」
「え゛…」
「え、あ、違っ。は、はげてないぞ!」
「な、何だぁ」

いや、こっちがびっくりしたわ。そこまで驚くとは思わなかったし。

「でも何でカツラ?」
「…崎山皐月、俺の従兄弟を覚えてるか?」
「会ったことないけど、写真でみたあれでしょ?」
「あれ、俺。男と女の二重生活のために二つの戸籍持ってるんだ。」
「……へ?」
「いや、だから」
「ちょっちょっちょっ!? ちょっと! きき、君、が…あの、崎山皐月?」
「あのって何だよ」
「え…と、ほら、君の従兄弟って言うからちょっと調べたんだ。あたしとヒロは社交会なんか行かないから知らなかったけど、願塊会社の崎山社長の孫なんだよね。かなり金持ちじゃん」
「ああ」
「…君が?」
「ああ、爺ちゃんには高一ん時に初めて会って引き取られたんだ」

だから金持ちっぽくないのは仕方ないと言うと紗理奈ははあぁ…と何やらわけの分からない息をはく。
? 何なんだその反応は? ていうか、そんなに驚くのか? 紗理奈だし『へぇ、そうなんだ』くらいかと思ってた。

「ふーん…そうなんだ…」

え、だから何だその反応。微妙に半眼で睨むかのような…。

「頼む! 何か手ぇ貸してくれ。七海には崎山として知り合ってるからバレるわけにはいかないんだよ」

拝むように手を合わせると紗理奈ははぁとまた息をはく。

「…分かったよ」
「ありがとう」

有難い。有難いが…もっと友好的に協力してくれると思ってたから、渋られて意外な感じ。

「あれ、でもベッドに毛があったんだよね?」
「ん、ああ。昨日紗理奈と別れてから色々あって七海の部屋で寝たんだ」
「…そう。えっと、じゃあとりあえず、カツラを外した姿は後で見るとして、会長には清掃会社の人だとか適当に誤魔化すよ」

あ、その手があったのか。なるほど…清掃会社、それならここに入ってても何の問題もないな。
ほ…紗理奈に言って良かったぁ。

「んじゃ、そろそろ戻ろっか。あ、便秘ってことにしたらいいよ。それならいきなり元気になってもおかしくないし。10日くらい出してないっていいなよ」
「ああ」

あいにく便秘になったことはないからそうなのかは知らないが、紗理奈がそういうならそうしとくか。










端から見てると実に分かりやすい腹痛を訴える皐月を連れてトイレに入ると、やはり皐月はすぐにケロリとした態度をとる。
いつものように軽口を叩きつつも本題に入る。

「…崎山皐月、俺の従兄弟を覚えてるか?」

カツラと言う予想外のカミングアウトの後なだけに話が変わったのであたしはあれ?と思いながら頷く。

「会ったことないけど、写真でみたあれでしょ?」
「あれ、俺。男と女の二重生活のために二つの戸籍持ってるんだ。」
「……へ?」
「いや、だから」
「ちょっちょっちょっ!? ちょっと! きき、君、が…あの、崎山皐月?」
「あのって何だよ」

う…皐月には悪いけど素直に言うわけにはいかないと言うか、むしろ認めたくないからあたしは誤魔化す。

「え…と、ほら、君の従兄弟って言うからちょっと調べたんだ。あたしとヒロは社交会なんか行かないから知らなかったけど、願塊会社の崎山社長の孫なんだよね。かなり金持ちじゃん」

半分は本当、ただ皐月の従兄弟だから気になったわけじゃないだけ。それだけ。

「ああ」
「…君が?」
「ああ、爺ちゃんには高一ん時に初めて会って引き取られたんだ」

だから金持ちっぽくないのは仕方ないと言う皐月。

皐月は自分を汚れてるなんて言うけど、とんでもない間違いだ。
むしろ、性的なことを避けてきただけにその潔癖なほどの態度は、あたしには綺麗に映るくらいだ。
純粋な子供の時に傷をおった皐月はそのまま、純粋な子供のままに守られた、そのまま無垢な皐月。

あたしだって、そんな可愛い友達に嘘をつきたいわけじゃない。全部分かってる。
それでも、感情は簡単に制御できないから…あたしもまだまだ子供だなぁと思う。といっても、皐月の真っ白を思わせる幼さとは別物だけど。

はあぁ…と思わず自己嫌悪のため息をはく。

「頼む! 何か手ぇ貸してくれ。七海には崎山として知り合ってるからバレるわけにはいかないんだよ」

拝むように手を合わせてくる皐月。何も分かってない皐月。あたしが自己嫌悪してるのも、あたしがどれだけショックを受けてるかも知らない皐月。
また息がもれる。

「…分かったよ」
「ありがとう」

皐月はほっとしたように、けど少し不満を表すように礼を言う。
あたしがどうしようかな的な態度をしたのが不満らしい。けど、あたしだってまだ子供なんだ。
全知全能じゃないしましてそんな、何でもかんでも頼られたって、困るんだよね。


なんて、笑う皐月にはそんなこと言えないんだけど。
本当にもう…別に童顔でもとんでもない美少女でもないくせに、つい味方したくなるくらいに可愛いんだから。





















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