あい・らぶ・まみぃ!(42/59)縦書き表示RDF


段々作者にもどうなるかわからなくなってきた今日このごろです。
一応結末まで考えたので目指して頑張ります。

あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



持ち上げられなかったらしい



「ふに〜…」

海とは違い気のぬける熱めのお湯につかり俺はため息ともつかない間抜けな声をもらす。
先に入らなかったから確かにお湯は冷めていたが温めなおせば同じだ。温めてる間に体と頭は念入りに洗っておいた。
疲れがどっと抜けていくようで落ち着く。

「はふ〜」

またも口からもれる声を他人事のように耳にしながら外を見る。
大きめな窓がついていて、ボタン一つで曇りガラスになったり普通になったり開いたりする。
どうせ外には誰もいないので今は普通ガラスだから外の景色がはっきり見えてちょっと露天風呂気分だ。

「ふぃ……ん、そうだ」

露天気分を味わう良い方法を思いついた。
俺はいそいそと頭上の電気を消して真っ暗にし、明るい月明かりの中で手探りで窓を開ける操作をする。

「…ぁ」

普通ならぬるめだが熱いお湯につかってるので風が冷たく感じて気持良い。
目が慣れてきたらますます月の明るさが分かる。満月ではないが浴室いっぱいを照らすには十分で、気分はいい。

「むふふ…」

思わず怪しい笑いがもれる。
酒を飲んでもいないのにテンションが高いのに自分で驚くが、たぶん眠いからだ。

「……」



…はあぁ、いいなぁ…。
むにゃ、眠…。もうでなきゃ。でもなぁ…ああやばいって……………………



…………はっ、うわ寝てた。やばいやばい。

俺は頭をふってとりあえず眠気を頭の角に追いやりながら湯から立ち上がる。
ちょっとくらくらする。
眠気か湯中り(ゆあたり)かは分からないが転ばないようにしないと。
俺は慎重に湯船から出―

パッ―

え?

突然電気がついた。俺はびっくりしてとっさに足を下ろす動作を止める。

ガラ―

ドアが開いた。

「あら?」
「あ、え? ええっ?」

そこには全裸の七海がいた。

いやここは風呂場でだから服を着てるほうがおかしいし俺だって裸なんだがでもちょっと待てなんで入ってくんだよつーかもう夜も遅い時間なのにわざわざカブるってどんな状況だよ。

「入ってたならどうして電気消してたのよ? まぁいいけれど」

頭ん中ぐちゃぐちゃに混乱して固まっている俺に反して、七海はいたって普段通りの動きでドアを閉めた。

い、いやいやいやよくないよいやいいのか!? こいつにしたら同性だし恥ずかしさ0なのかしかし俺には無理ですマジでハズイですだからって女のコのように恥じらい隠すなんてのがむしろ無理だしここは当初の予定通り撤退するのだ!

「そ、そそれじゃあ俺はもうあが―

急いでタイルにおろした俺の足は思いっきり滑った。

―るうっ!?」

バランスを失った俺は背後の壁に思いっきり頭をぶつけて、その痛みを感じるか感じないかと言うあたりで意識がなくなった。










「もうあが、るうっ!?」

間抜けな声をあげて私が手を出す間もなく皐月は盛大に風呂場の縁か壁あたりに頭をぶつけた。

「皐月!?」

冷静沈着をモットーにしてる私と言えど、さすがに慌ててお湯に沈んでいく皐月の腕をひっぱり起こす。

ぐったりとしているが、血はでていない。コブにはなるだろうが息もしているし命に別状はなさそうで私は安堵の息をはく。

「全く、何を慌てていたのよ」

答えが返らないのは分かっていたがついそう言ってしまう。
そう言えば以前に入浴した時も一人だけ水着をしていた。しかし恥ずかしいと言ったって今までにもそんな機会はあっただろう。
銭湯などの共同浴場は日本では珍しくないし、そもそも修学旅行などのイベントでは……そういえば男として生活していたらしいから、裸を見せる経験がなかったのかしら。

とりあえず皐月は湯船につけておく。何故か開いている窓を閉めて、私は体を洗い頭を洗いしっかりとケアする。

長い毛先の先々も、足の指の間も爪も無駄毛までチェックする。

よし、これで大丈夫だわ。こうした日々の努力により私の美貌は保たれている。

さてと、そうしてからようやく私はお湯につかる。
やはり気持が良い。私は母方の血から金髪だけど、やはり心は日本人ということだろうか。

にしても…。

ふと、同じ浴槽内に座らせてる皐月を見る。
確かに胸は全くないが、肌は綺麗だ。それにその顔は案外整っている。
夏休みになってからはそばかすはなかったし、昨日は眼鏡もなかったが改まって見なかった。
しかしそばかすメイクと分厚い眼鏡のない素顔は思ったより可愛い顔をしている。

「って、当たり前よね」

だって一度チラリと見た写真でも皐月君とそっくりだったのだから不細工なはずがない(その時は同一人物では?と言う疑惑で頭がいっぱいでそこまで頭がまわらなかった)。

「……」

ぴちゃ―

腕をあげると静かな浴槽に水が跳ねる音が響いてて、何だかいけないことをしてる気がしてドキドキする。

そっと、頬に手をあてる。すべすべした頬。
ちょっと引っ張ると皐月はむにゃと声をもらす。

「ふふふ…」

そういえば皐月君には最近会ってないわね。彼は元気かしら。自分と似た顔があるってどんな感じなのかしら。

「……」

本当に、そっくり。
私は皐月に近寄り隣合って座る。

「…〜〜」

何だか落ち着かなくなってきた。隣にいるのは皐月なのに。顔ばかり見ていたからだ。
胸を見れば………駄目だわ。平らだもの。
ああ、そういえば皐月は女でも男として生きてきたんだから、こんな感じなのだろうか。

ちらと横目で皐月を伺う。目は閉じられたままだ。


………大丈夫かしら?
少しばかり心配になってきた。というか、顔が赤い。



あ…
湯中り、かしら?
私より前から入ってたのだし、出ようとしたってことは体を洗ったりは済ませて湯につかっていたのだろうし…。

ならば心配するほどではないが、お風呂から出ることにする。私としてはもう少し入っていたいが、仕方ない。
皐月に服を着せて寝かせなければならない。










「…ん…あ? …あああ!?」

目を開けると七海が大きく映っていた。驚きに声をあげて起き上がろうとすると何故か体のあちこちが痛んだ。

「お…ぉぉお?」
「…なにやってるのよ」

俺が唸ってると呆れた声がして七海は俺から顔を離す。

「う、うぅ、なんか体が痛いんすよぉ」
「……まぁ、あれよ。あなたを介抱するためにここまで連れてきてあげたのよ?」
「あ、あー? …っ!!!」

お、おわわわわわあぁ!!
おお思い出したぁ! 風呂場でこけて…っ! ここ…どこ?

「?」
「うぇ、Where are we now?」
「どうして英語なのよ…私の部屋よ。お風呂場から一番近かったから」
「そ、そう…てか俺の着替えっ…〜〜」

こいつしかいないじゃん!
あ〜あ〜あ〜! やばいって! 裸見られた! お婿にいけないわ! ってんな問題じゃないし!

「く、くあぅ〜」
「何を悶えてるのよ。シーツが乱れるから起きたなら戻りな……動けるかしら?」
「無理だから! 色んな意味でアウトだから!」
「声が大きいわよ。防音だけど、私に迷惑でしょうが」
「う〜、う〜っ」

は、恥ずかしい!
この上なく恥ずかしい!

「う、うう…あ、ありがとうございましたぁ」

けど着替えさせてくれたしお礼は言う。倒れた俺を世話してここまで連れてきてくれたんだも……連れて?

「…体が痛いのって…?」
「私が足をつかんで引きずってきたからか、湯中りのどちらかね」
「後者なわけあるかっ」

礼を言って損した。いやまぁ、介抱はしてくれたかも知れないが、服まで着せてくれたなら放置しても良かったし。

そう言うと七海ははぁ?と疑問符を浮かべ、

「そんなことしてもしあなたが風邪をひいたらどうするのよ? 夏場でも油断は禁物よ」

と言った。
真顔なだけに、ずぅんと心にきた。
こいつ…いいやつだなぁ。そうだよ。こいつのちょっとナルシストで横暴なのは天然だし、ひねてるわけじゃないんだよ。
真面目だからやたら怒られてるけど、優しいやつなんだ。前もご飯持ってきてくれたりしたしな。

「七海……へへ、ありがとうございます」

にやける。
うん、そういうとこは、

「大好きですよ」

優しい人は好き。七海の打算のない態度は、好き。
だからいつも怒られてバカにされても俺は七海を嫌いにならない。
いつも大真面目だから、そんなバカみたいに真っ直ぐなとこは嫌いじゃない。

むしろ、俺みたいに汚れて曲がったやつにはまぶしいくらいだ。なんて、絶対口にはしないけど。

「は。…ふん、いきなり、何を言うのよ。もう寝るわよ」

照れたのを見られたくないらしく七海はさっさと電気を消した。けど俺にはしっかり、七海の赤い可愛い顔が見えた後だった。

「でも、俺もここでいいんですか?」

そりゃ痛いけど、叫ぶほどじゃないし帰れるぞ。明日にはたぶん治ってるだろうし。

「いいわよ別に。痛いんなら仕方ないしね。でもクーラーはつけてても暑いだろうからくっつくのは不許可よ」
「わかりました」

ベッドは大きくダブルベッドちょい(どの部屋も同じ)だから離れても余裕だ。
俺は大きく息をする。洗濯したてのようなシーツは、俺を安心させるのに十分だった。










「……」
「皐月」
「……くぅ」


寝るの早っ!
何なのかしらこの子は。……なんかムカつくわね。

またほっぺたを引っ張ってやろうかとも思ったが、あまりに大人気ないのでやめにした。
私に比べたら皐月は子供もいいところだ。犬と同じとさすがに本気で思ってはいないけど、扱いはそのくらいでいい。

「……お休みなさい、皐月」

人が側にいると言うのは、思ったよりいいものかも知れないわ。
私は寝ぼけ頭でそう考えた。必要以上に接触するのは考えものだが、この程度ならいいだろう、と。
















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