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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



遊びたおす夜


「ぷっはー! この一杯のために生きてます!」
「おっさんかよ」

紗理奈は相変わらずと言うか、ハイテンションだな。
晩飯の時間、朝と同じく隣は七海で何故か反対側の隣には弘美が設置された。

「うるしゃ〜い。にゃはは、にしても皐月、もてもてだね」
「なんの監視かと聞きたい」
「え〜? 勿論、ライバルの監視だよね? ヒロ?」
「はぁ? 紗理奈様酔いすぎですよ」

つか、その冗談はあれか? 弘美を怒らせて俺に八つ当たりをさせるという遠回しな嫌がらせか?
もてもてって…こいつが俺に対して物的愛着以上の感情を持つわけないだろうが。
つーか女同士だし。そんな物好きは小枝子くらいだ。

「酔ってないよぉん♪」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ」
「そうね…まぁ明日には紗理奈帰るんだし、いいんじゃない?」
「え!?」

予定は一週間って聞いてたぞ?

「ん、ああ、帰るのはあたしだけだよ。明日の夜の便でスペインに行くから」
「そ、そうなのか?」

さらりと言うが、聞いてないぞ。うぬぅ…何だよ。

「うん、あたしがいなくて寂しいだろうけど我慢してね。抱きマクラをあたしにみたててもいいよ」
「しねぇよ」

ほんとはちょっと寂しいなとは思わないでもない…が、昼間のお姉さんぶった態度が気にくわないのでそんなことは言わない。

「またまたぁ、お姉さんがいないと寂しくて夜泣きするくせに」
「だからしないっての!」

この態度腹立つわぁ。

「ま、今日は目一杯遊ぼうよ。合宿っぽく枕投げとか人生ゲームとかトランプとかしようよ」
「ん、いいなそれ」

態度は腹立つが、うん、遊ぶのはいい。
紗理奈と遊ぶのは、楽しい。











「ん〜…こっち」
「ぶっぶー! はずれぇ!」
「ちょっ、ばらすなよ弘美」

俺は弘美から譲り受けたジョーカーをぐるぐると数枚の手札の中でまわす。
よし、こんなもんか。
そして扇にひろげて紗理奈に向ける。

「ねぇ皐月、ジョーカーはこれ?」
「……あ、ああ、うん」

紗理奈はにんまりと笑いながら聞いてきた。戸惑いながら相槌をうつがジョーカーじゃない。
いくら何でもジョーカーの所在は明かせないぜ。

「皐月、10持ってる?」
「ううん」
「今あたしがつかんでるの、ずばりそう?」
「いいえ違います」
「じゃあこれ」

はい、あなたがつかんでたのはハートの10です。
ていうか何の心理戦だ。俺は何て答えれば紗理奈を騙せたんだ。……こいつは詐欺師にも騙されなさそーだな。

「あーがり」

紗理奈はにっこり笑ってトランプを二枚揃いのトランプを床に落とす。
くそ〜。こいつ、運良すぎじゃね?

現在、ババヌキ5戦目で、紗理奈は5連続トップだ。
紗理奈以外は順番に勝ったり負けたりだが、紗理奈は何故か一番だ。ズルとかじゃないよな?

「おやおや皐月君、なにかなその目は?」
「…ズルしてないだろうな」
「え? してるよ?」
「そうか………あ? え?」

ズルしてんのかよ!?

「ちょ、ええ!?」
「皐月様うるさい」
「いやうるさいてお前……七海様は、いいんですか?」
「いいじゃないかしら、別に。賭けてるわけじゃないし遊びなんだから」
「それにぃ、見抜けないんだし仕方ないじゃん」
「そんなバカな…」

しれっとした七海に何がおかしいのか笑いながら俺のわきばらをこづく弘美。

「納得いかねー」
「ちなみに賭けてたら会長とヒロは、何としてもあたしがインチキできないようにプロだって呼ぶよ」

つまり、俺が甘いと言いたいのか。
俺はみんなでトランプを始める前に、紗理奈とだけ賭けをしていた。
一つ言うことをきくと言うたわいないものだが…デキレースでは納得できないぞ。

「…なぁ」
「なに?」
「さっきの賭け、無効だよな?」
「え? 本気で言ってるの?」
「…ですよね」

納得できないからって覆えらないんだよな。
うわー…諦めろ俺。

「? お二人で何か賭けてたんですか?」
「ん、紗理奈の命令聞かなきゃならないんだ。あー、よし、あと2枚だ」

一周して弘美から回ってきたのでペアができてあと2枚。次に七海が俺からカードを引く。
ぐ、ババが残ったか。

「あなた、それババね」
「…だから言うなって」
「あ、あがりです」

小枝子があがる。弘美の手札は一枚で、順番的に俺が引く。くそぅ…。

俺は床に2枚のトランプを置いてどっちがどっちか分からないように何度も入れ替える。

「よし、どうぞ」
「じゃあ右をとってちょうだいな」

俺は右のトランプを持ち上げ―よし、ジョーカーだ。これで次に俺が七海から―

「そっちじゃないわ。私から見て右だからあなたからは左よ」
「…え」
「皐月さぁ、そこで笑っちゃ駄目でしょ」
「……」

こいつ、俺の顔からどっちでも言い直せるように俺にめくらせたな。性格悪いって。

「七海様…ズルいっすよ」
「勝負の世界は非情なのよ」
「遊びじゃないんですか?」
「いついかなる時も真剣勝負。私は手を抜くなんてしないわ」
「ワー、カッコイイー」
「もっと真面目に褒めなさい」
「真面目なら褒めません」

片言なんだから嫌味と気づけ。











「ふわぁ」
「お、弘美はもうお眠か?」

腐ってもお嬢様な弘美は手で欠伸を覆う。からかうように言うときっと睨まれたが、互いに本気ではないので睨み顔だろうが可愛いくらいだ(顔だけはいいからな)。

「は? ざけんじゃないわよ。ただ、まぁ…夜更かしは美容に悪いから部屋に帰るわ」
「そうね。私も少しやることがあるから、今日はこれでおひらきにしましょうか」

七海がそう言いながら立ち上がり弘美も立ち上がる。
おい、このちらかったトランプとかジェンガとか人生ゲームとかは誰が片付けるんだ。

「まぁまぁ皐月、あたし手伝うしさ」
「う…顔に出てたか?」

部屋から出る二人をうらめしそうに見ていたら紗理奈に肩をたたかれ、ちょっと恥ずかしい。
小枝子も笑顔でジェンガに手を伸ばす。

「皐月さんは正直な方ですから。私、ジェンガやりますね」
「ああ、頼―」
「小枝子は先にお風呂入ってきなよ」
「え?」
「だってここのお風呂は無理矢理入っても4人が限度だし、順番に入ってくれないと。今日はもう11時だしなおさらだよ」
「…でも、少しでも皐月さんといたいです」

……う、ん…なんだろう。なんか、変な感じ。俺は…こんな小枝子にどう反応してやればいいんだろう。
何を感じてるのかも自分でもよく分からない。
昨日までなら普通に、可愛いなぁそんなに好かれてるなんて嬉しいなぁ。って思ってたはずなのに。……自分で自分がよくわからない。

「駄目ぇ、昨日二人が喧嘩したせいであたしは冷めたお風呂に入ったんだからね」
「…ぅう、わかりましたよ」

名残惜しそうに部屋から出る小枝子に俺は『お休みなさい』と挨拶をした。

「はい、お休みなさい、皐月さん!」

小枝子は嬉しそうに俺に笑顔をふりまいて部屋から出ていった。
…なんだか、苦しいな。普通に接するって言っても、距離感が分からなくなっちゃった。

「さて、片付けよ。さっさとやってお風呂入りたいし」
「ああ」

俺はジェンガを集めて適当に箱につめる。人生ゲームは札も駒もぶっこんで折りたたんだボードをいれて蓋をする。
紗理奈も表裏を無視してトランプをまとめてケースにしまう。

ちなみにこれらはダイニングの端にある棚に入れてあったやつだ。
七海の別荘と言えば書庫はあるかも知れないが純粋な避暑地と言う気がして遊ぶものはないと勝手に思ってたが、ダイニングの棚には玩具が一杯だし、ビリヤードとか卓球とかダーツとか色々あるプレイルームもあるらしい。

「あ…と、皐月」
「ん?」

キッチンに回って(ダイニングの隣でくっついてる)冷蔵庫に手をかけながら紗理奈に振り返る。
紗理奈はまさに部屋を出ながら思い出したように俺を見て言う。

「さっきの賭けだけど、あたし明日帰るしもうちょっと付き合ってよ。後でプレイルームね」
「ん、分かった」

まぁ、それくらいならいいか。俺はまだいるわけだしちょっと夜更かししたっていいだろ。
しかし紗理奈…元気だな。







トス―

トストストストストス――

カンッ

「……遅い」

苛立ちを誤魔化すように俺は最後に的に当たらずに落ちた矢を拾う。
ダーツを投げ始めて、何度目だったか元々投射は得意だから簡単で、飽きたんだがあんまり遊ぶと紗理奈とやって楽しくないからダーツを投げ続けてる。

ささってる矢を抜いて箱に片付ける。

つか今何時だよ。時計を見………………(紗理奈と別れてからすぐに来たんだが)すでに一時間ほど経過してる。



え? かなり待ってるじゃん。つか俺、忍耐力ありすぎじゃない?
あいつ、約束忘れてんじゃないだろうなぁ。
携帯電話は充電きれたから部屋に置いてきたし…一旦戻ろうかな。つか紗理奈、いくらなんでも遅すぎじゃね?

そう考えてるとガチャと音をたててドアが開いた。

「あれ、もう来てたの?」

紗理奈の言葉にあのなぁと俺はため息をつく。

「後でって言―」
「ていうか、服変わってないじゃん。昼は水着だったとは言えお風呂入ったら着替えなよ」
「…え?」
「ん?」


さっきより動きやすそうな服をきてる紗理奈は首にタオルをかけていて、その髪は光の反射とかでなくしけって見える。

「…風呂上がり?」
「だから後でって言ったじゃん。お風呂入らなきゃなんのためなのさ」
「…だ、って…う、う〜ん」

あ〜…でも確かに、言われて見れば俺の気がきかなかったのか。紗理奈、お風呂に入りたがってたし。
で、でも卓球とかしたら汗かくから後かと思ったんだよぉ。

後でってのはほら…なに? 休憩、みたいな?


まぁ、いいんだけどさ。風呂なんて後で入れば。

「いいや。とにかく、遊ぼうぜ」
「ん、だね。とりあえず、ダーツでも」
「却下」

ピンポイントかよ。

とにかく卓球をすることにした。









カン―
コン―
カコン―

始めこそ小気味よい音を鳴らしながら会話と共にラリーを続けていたが、徐々に早さが上がり本気になってくる。

「皐月!」
「何だ!?」
「結局!」

回転のかかった玉をまっすぐに打ち返す。

「誰が!」

それを難なく打ち返される。
うぬ。単純な力勝負なら負けない自信はあるが、さすがにうまいな。

「好きなわけ!?」
「んなっ!?」

カーン
打とうとした瞬間問われた内容に気をとられ玉は俺の後ろの壁に当たった。

「な、だ、誰って誰の誰が誰なんだよ」
「え〜? 小枝子とヒロと会長の誰が本命なわけ?」
「…誰も違うって」

こいつまだ昼間の話題を引きずるのかよ。
まぁ……男と結ばれるのだけはありえないから、そりゃ女と結婚する予定だが、それは世間体のためなんだからな。
だから俺のこと別に普通に好きで金目あてで俺と婚姻してくれる女がいれば一番いいな。

「はぁ、レイプされたからってもったいないなぁ。セックスっていいものだよ? 気持良いし、ストレス発散にもなるし」
「価値観を押し付けるな」
「いや、性的行為は誰だって気持良いって。だからみんなオナニーするんだし」
「お、おにゃにぃ…」
「オナニー」
「お、おお何度も言うなバカ! お前マジで女かよ」

意味くらい知ってるが…男はともかく、女もするのかよ。

「皐月、女に幻想みすぎじゃない? 皐月が男のふりして男同士でバカしてる間に、女はエロイこと学んでたんだから」
「聞ーきーたーくーなーいぃ!」
「ていうか、男として生きてたならこのくらいのエロ話してたんじゃない?」
「女はっ、女は清いと信じていたのに…」

確かにエロ話はよく聞いたが、女はそんな話してないじゃん! 男は見るからに盛ってたけど女はそんなことなかったじゃん!

「皐月、中学生男子みたい。あ、勿論童貞のね」
「〜……うう、お前なんか、お前なんかお嬢様じゃないやい」

こんなやつが小枝子たちと同類、というか紗理奈とか二人もいらん! 一人で十分すぎて釣がくるし!

「とりあえず卓球はあたしが勝ちだしぃ、次は麻雀でもする?」
「ルール知らないし」

ポンジャンなら昔やったけど、別物だよな。
あと卓球はズルだろ。だいたいさりげなく話をなかったことにするなよ。
まぁ、続けたくないからいいんだけどさ。











「だいたいいつもは3人くらいなんだけどさぁ、今は一人もいないんだ」
「……」
「皐月と遊んでるせいだよ」
「……」
「皐月と遊ぶのが楽しいのが原因なわけ」
「……」
「責任とってくれるわけ?」
「……」
「聞いてる?」
「……聞いてるけど、何の話か分からないぞ」

なんとなぁく、今までの流れから分かるような気はするが…。

「ん? あたしの恋人が今いないって話に決まってんじゃん。話の出だしが『最近いっつも一人で寝るんだよね』からなんだから分かるでしょ」

俺と格ゲー対戦をやりながら(これも意外だがあった。最新のゲーム機もあったし何でもありか)あっさり答える紗理奈。

「普通恋人は3人もいない」
「あ、大丈夫。いつだって平等に愛してあげるから」
「そんな問題じゃないだろ」

責任とかとれないし。だいたい俺と遊ぶのが楽しいって別に俺のせいじゃないだろ。
ていうか…何でさっきからそれ系の話ばっかふるんだよ。

「あ」

ぐはぁああー
大型画面の中で俺の操作するキャラクターが血を吐きながら倒れる。

「やったぁ、勝ちぃ!」

さっきから集中できない。
パズルゲームも全部、対戦しても負け続けてる。

「…紗理奈、さっきから何なんだよ」
「ん? ああ、ここだけの話だけどあたし、皐月がまともに恋愛できるように耐性つけようと思ってるんだよね」
「なぬ?」
「これから会長たちの目をぬすんで猥談とかセクハラとかするんでよろしく」
「よろしく、じゃねぇよ」

もの凄く余計なお世話だ。
しかもセクハラはお前がやりたいだけだろ。

「んじゃ次は…」
「ふわぁ…ふぃ…なぁ、今何時だ?」

何か眠くなってきた。
時計を見ると、うげ。もう2時かよ。
普段は12時には寝てるだけに時間を知ると余計に眠く感じる。

「ふわぁあ」
「…じゃあ、もう寝る?」
「ん…悪いな」
「いいよ。あたしは明日の帰りに寝ようと思ってたけど、皐月は明日もみんなと遊ぶもんね」
「うん。ふわぁ」
「お風呂入りに行きなよ。片付けはあたしがやっとくから。お休み、皐月」
「ん。ありがとう。さっきの気付かいは余計だけど、また遊ぼうな」
「駄目駄目。絶対いつか皐月をエロエロにするんだから」
「ならないから」
「そんで、幸せになってもらうんだ」
「……お前は」
「ん?」
「俺の母親かよ」
「あはは、お姉さん、くらいにしといてよ」

軽口を言う紗理奈。
トラウマの解消なんてありがた迷惑だけど、いらないお節介だけど、けどさらりと言った最後の言葉―幸せになってほしい、なんて、本気の顔で言うから、俺は許してしまう。
聞くだけで嫌気がする単語を並べられても、紗理奈にはかなわないと思ってしまう。
真剣なくせに、すぐに笑う紗理奈だから、きっとこれからも許してしまう。

だって俺のほうこそ、その笑顔に許されたんだから。

「だから、同い年だっての」

調子にのるだろうから口にはしないけど、な。













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