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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



どっちかなんて決めれない


じゃばじゃばと音をたてて海に入ってから泳ぎだす二人。

全く、お昼ご飯を食べたとは言え元気なものね。…と言うか普通は元気でもあそこまで行こうなんて思わないのだけど。

二人が目指した小島(直径10メートルほどで雑草があり小さい洞穴がある程度)は、ここから確か5キロはある。

「あの二人は元気ですねぇ」

ヒロがそう言いながら私の元にくる。小枝子もやってきて私たちはとりあえずシートに並んで座る。

「ね、ね、小枝子様」
「え、はい?」
「皐月様と喧嘩ってなにしたんですかぁ?」
「え、あ…その」


小枝子が気まずそうに私を見る。私はまっすぐに視線を受け取って微笑む。

「ああ、それは私も聞きたいわ」
「……その、ひきませんか?」
「ん〜、小枝子様が皐月様にスカトロ行為を要求してたらひく」
「そ、そんなことしません!」

小枝子は悲鳴のように叫んで否定。
? すかとろって何かしら? でも二人とも分かってるみたいだし……聞きづらいわ。
皐月がいれば聞けるのに。使えないわねと思いながら私は先を促すことにする。

「で? 本当はなになの?」
「…キス、しました」
「……それだけ?」

ヒロは呆れたように言う。私も正直同意見だ。赤い顔をして何事かと思えば……私は愛の形は様々だと思うから同性愛を否定するつもりはないし、キスくらいなら海外では挨拶がわりだ。

「えと…その、舌を、いれてたりして…」
「……」

それは…挨拶、ではない。

「で、でもキスは普通に許してくれてたんですよ? その…少しは、受け入れてくれてると思うじゃないですか」
「えっと、口と口?」
「はい」
「……」

よく分からないのだけど、つまり

「皐月が悪いわね」
「え?」
「だって、恋人なんでしょう?」
キスをする間柄なのにそれが一歩進んだだけで皐月の反応がオーバーなのよ。

「…違います、私の片思いです」
「? キスしてるのに?」

ますます分からなくなってきた。え〜と、皐月と小枝子は日本人よね? あら?

「えっと、私が無理矢理キスしたんですけど、皐月さんは抵抗しなかったんです。だから…」
「だから許されたと思って強姦しようとしたわけ?」
「ち、ち違いますっ!! ……それは、まぁ、したい、とは…思いすけど」

真っ赤な顔で応える小枝子。にしても正直な…。

「まぁいいけど…とにかくそれで小枝子は皐月に距離をとられてるのね」

今は紗理奈と仲良くなってるし。前なら確実に小枝子を誘ってたでしょうに。
でも、つまり皐月は小枝子のこと恋愛感情でみてなかったのね……あれだけべったりだったのはどうしてかしら。

「…七海様?」
「え…? なに?」
「……別に。何でもないです」
「? 小枝子、なにかヒロ変じゃない?」

前からよく拗ねてたけど、高校に入学して正式に淑女会に入ってから……ううん、皐月がきてから、ヒロは少し変わったわ。

「え、と…七海様が、笑ってたからじゃないですか?」
「え? 私、笑ってないわよ?」
「……無自覚ですか」
「え? ヒロ、何か言った?」
「いいえ!」
「ふふ」

小枝子が脈絡なく笑い、何故か不機嫌なヒロが小枝子を睨む。

「何よ!」
「だって…ふふ、いえ、何でもありません」

何がおかしいのか全く分からないが、小枝子は強いなぁと思う。
私は恋ってよく分からないけど、好きな相手に拒絶されて笑ってられるんだから、強いと思う。
勿論本心かなんて私には分からないのだけど。









つい笑ってしまって弘美さんに睨まれたけど、最近は私も慣れてきたからこの程度ではビクビクしない。

「何よ!」
「だって…ふふ」

きっと二人も皐月さんが好きだ。恋愛かは分からないけど、たぶん絶対。
だって弘美さんは言うに及ばず独占したがってるし、七海様は…私と皐月さんが喧嘩したと言って少し笑ってたから。
勿論無意識だろうけど、私と皐月さんが喧嘩したままなら仲直りさせるだろうと思う。
七海様は物言いは厳しかったりわがままなところもあるけど、噂通りに清廉潔白な人だ。まっすぐで、だからこそ笑っていたのも性格が悪いとは思わない。

だから笑ってしまった。全然気づいてないのがおかしくて。

「いえ、何でもありません」

でも教えてなんてあげない。
今は嫌われてしまったかも知れないけど、けどまた最初からはじめればいい。

想っていたのは長くても、友達になれたのは最近だ。
それであれだけ仲良くなれたのなら、頑張ればまた皐月さんを振り向かすことだってきっとできる。
だから内緒。
ライバルは、少ないほうがいい。











「はぁ…はぁ…」
「遅いよー」

やはりと言うか、かなり差がついて小島についた。
俺が小島に足をかけたころには紗理奈の体は乾いていた。

「う〜…疲れたぁ、はぁ」
「あはは、皐月は力が強いし今までの体育も負けてたけど、こりゃ夏休みあけのプールでは勝ったね」
「はぁ…言ってろ。すぐに、追い越してやる」

紗理奈と並んで小島の端に座り、息をととのえながら言い返すと紗理奈はにししと笑う。
黙ってりゃこいつだって美人なのに、こいつは悪巧みするように笑うから年より幼いガキ大将にしか見えない。

「あはは、ま、君運動神経いいもんね。もうたぶん会長よりは早いんじゃない」
「そうか?」
「うん」
「そうか…」

そう言われると嬉しいな。

「皐月ってさ」
「ん?」
「可愛いよね」
「…は?」

唐突だな。しかも、全く嬉しくないし。嫌がらせか?

「うん、可愛い。友達じゃなかったら襲うね」
「……」
「大丈夫。友達は襲わないよ。皐月は友達友達ぃ!」
「ならわざわざ言うな。ひくから」

というか昨日あったこと分かって言ってんだから性格悪いだろお前。

「だって、言わなきゃ皐月無防備なんだもん。あたしは襲わないけど、おんなじように無防備にしてると襲われるよ」
「…そりゃありがとう」
「あ、そんな流しちゃダメだよ。マジな話なんだし。一回犯されたんなら学習しなよ」
「……んなこと言われても。だいたい、俺のどこが問題なわけ?」
「わかんないかな〜。皐月は男として生きてたんでしょ?」
「うん」
「だからこう…すれてないし、男女のに関して無防備なんだよ」
「俺の前には女しかいないんだが?」
「皐月は貧乳だけど、スタイル自体はいいよ。引き締まってるし」

無視か。
だいたいそれを言ったらお前のビキニのが刺激的なんだが。七海ほどでないが乳あるし。
それに俺に胸がないのはサラシで潰してたからで、もしかするとこれから成長するかも………成長したらもう男装できないじゃん。
あ〜…駄目だ俺。すっかり『女顔の男』から『男らしい女』になってる。

「あと、やっぱり雰囲気かな」
「雰囲気?」
「そ、あのね、あたしとか分かる人には分かるんだぁ。皐月は不安定なんだよ。男みたいだったり女らしかったり。その違いにぐっとくる。それに…そのせいか皐月はたまに儚い印象受けたりするから、普段のギャップで悩殺だね」
「………すまん、正直よく分からない」

男のふりして生きてたのに今は女でどっちつかずなのが駄目ってことか?

「う〜ん、うまく説明できないや。とりあえずさ、どっちにするか決めたら?」
「何をだよ」
「君が男なのか女なのか、だよ。勿論体は女だよ。分かるでしょ。皐月がどう思ってるかだよ」
「……分からない。前は男って言ったんだが…」
「うん。見てて分かるもん」
「…決めた方がいいか?」
「決めれないなら仕方ないけど、でもそれは、男にも女にも好かれるかも知れないってことだよ。だってどっちの性質もあるんだもん」
「……」

俺が黙ってると紗理奈はふぅとオーバーにため息をつく。

「じゃあ聞き方を変えよう。男とセックスするか女とセックスするかどっちがいい?」
「どっちもやだ」
「はぁ…一生恋愛しないつもり?」
「……そんなこと、わかんない。だって、セックスとか恐いし。恋とか、わかんない」
「ずるい答えだなぁ」
「……」
「で? 皐月は小枝子のことどうしたいの? 好きな気持ちだけちゅうぶらりんになって、可哀想だと思わない? 友達としてあんなべたべたしてさ、小枝子は皐月と違う好きなんだ。性欲込みなんだ」
「……」
「また友達に戻って、都合よく友達でいてもらうの?」
「……だって、小枝子が…」

小枝子が友達でいいって言った。
ていうか、なんでこんな話になったんだ?
俺は視線を海に落とす。

「こんな話、嫌だと思ってる? せっかく旅行らしく楽しくなったのにって思ってる?」
「……」

図星だから、何も言えなくなる。口をつぐむ俺に紗理奈はあははと明るく笑う。

「でもダァメ。今言わなきゃ、皐月は問題後回しにして考えないでしょ」
「………別に、紗理奈には関係ないだろ」
「へえ?」

う、な、何だよその目は。

「関係ない?」
「う…うるさいな」
「じゃあいいんだ? 皐月襲っても」
「え」
「とりゃ」

抱きつかれた。

「は、離せバカ!」

ふりほどくと不満そうに紗理奈が舌なめずりする。
その目はぞくりとするほど色っぽくて吐き気がする。

「いーじゃん、舐めるだけ」
「冗談じゃない。俺は唾液と精液が大嫌いなんだ」
「へえ…でも関係ないなら友達でもないし?」
「…分かった。分かったよ。もう言わないからそのえろそうな顔をやめろ」
「ん、わかればよろしい」

あっさりにぱぁと見慣れたふやけ顔で笑う紗理奈。
く…ひっかけられてると分かってても従うしかない。

「で? どうなわけ?」
「………小枝子には、小枝子に決めてもらう」
「……ずばり今のままじゃん」
「だ、だって…前にちゃんと断ってるし」
「はぁ…仕方ないか」

紗理奈は大きくため息をつく。
うう…だって、俺が悪いのか? そりゃ、キスを拒まないからああなったのは反省してるけど、これからも友達ってのは小枝子が望んだんじゃん。

「………はぁあ」
「な、何だよ」

紗理奈が青空に似合わない大げさなため息をつく。
そして俺の頭を撫でてくる。帽子がはずれないように俺は強く下に帽子をひく。

「止めろ。帽子がとれる」
「いいじゃんとれば」
「…駄目」
「何で? ま、いいけど。にしても皐月は…」
「?」
「ほんっと、子供だねぇ」
「何だよ。お前と同い年だって」
「いやぁ? 精神年齢が、ね」
「失礼な!」

俺が怒ると紗理奈はからからと楽しそうに声をあげて笑う。

「あははは、いや、いやぁ、皐月はそのままでいいよ。可愛いもん。ず〜っと子供でいてよ」
「なめるな。紗理奈なんか飛び越してすぅぐに大人になるんだからな」
「無理無理」

紗理奈は俺の頭を遠慮なく撫でまわし(あ、帽子とれた。まぁカツラがとれなきゃ水に入るまではもういいや)、宣言する。

「大丈夫。お姉さんが守ってあげるからさ」
「だから、同い年だっての!」

俺を何だと思ってるんだ。
















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