あい・らぶ・まみぃ!(32/59)縦書き表示RDF


あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



やっぱり夏は暑いんです


「…暑い」

雑誌の表紙をかざるような流行りの服装をそのまま持ってきたような涼しげな格好をした少女が学園前にいた。





まぁ、俺なんだが。

肩、腹、腕、足と男のままでは露出できない女ならではの格好をしていても、暑い。
今年一番の汗だくだ。何故って…


炎天下で1時間も放置されて涼しい顔をしてられるかー!


「がーっ! あいつら電話もでないしメールも無視だしなに考えてんだよ!!」

何だ? 罰ゲーム?

ピピピッ!

俺は怒りにふるえながら携帯電話を開く。紗理奈からメールだ。


『ごめん、今起きた。』



は? 今、2時なんですけど

…寝過ぎだろ! つか、約束してる日くらい起きろ!

ピピピッ!

ん? またメール…今度は七海か……お前まで寝坊してんじゃないだろうなぁ


『いつまで門の前にいるつもりなのかしら? 紗理奈に何か用でもあるの?』

「…は?」

用もなにも

ピピピッ!

またメール…今度は弘美か

『言い忘れてたけど、紗理奈様はいっつも遅れるから、起きたメール来るまではいないのが当たり前なのが暗黙ルールだから。まぁ夏だし、焼けたくないし紗理奈様がくるまで出ない。ちなみに紗理奈様は片道1時間』



言うのが遅ーいっ!!

俺は中に入ろうとして、門が開かない!?
く、そういえば中からは開くが外からは普通には開かないんだった。
学生証があればあくんだが…持ってねぇし。

ええい、こなくそっ! こうなりゃ飛び越えてやれ!

俺は門の前から裏へまわり(門にはカメラがあるから離れる)勢いをつけてジャンプして壁に指をひっかけ、飛び越えた。

ふ、俺にこの程度の壁なんてないも同じさ。

ビィーーー!

「!?」

突然けたたましいサイレン音が響く。
な、なにぃ!? こんな罠が…!

「あんた…本当にバカね」
「な…弘美…さん」

顔をあげると建物の一階の窓から弘美が顔をだしていた。
あ、これ寮棟か。


弘美が携帯電話を取り出し、何処かに電話をかける。

「あ、おばあちゃん? ヒロだけど。……うん、それ皐月様だから。…うん………そう、切って。…うん、ありがと。じゃあね」

弘美の電話が終わるとサイレンは止まり、俺は胸をなでおろす。

「助かった〜。ありがとうございます、弘美さん」
「てかね、あんたが簡単に侵入できることに対策ねらないわけないでしょ。
てか、さっきあんたにメールした時から何かと思ってたけどなにこれ…全部あんたからじゃない。電話かけすぎ。ストーカー? メールも…ぷ。ずっと待ってたわけ? ダサっ」
「うるせぇ…もっと早く言えよ。俺がどんだけ待ったと思ってんだよ。よくも無視しや…しやがりましたね」

やべ、紗理奈に使ってないせいで気がゆるんだってか、暑さで頭おかしいってか、サイレンにびびって混乱してるってか…敬語がボロボロだ。

俺は焦るが弘美は気にした風もなく、窓枠に肘をついている。

「ふん。知らないわよ。バイブだし気づかなかったの。つか、紗理奈様と最近仲いいし、聞いときゃいいじゃない」
「あのな…あのですね」
「皐月様さ、何でヒロに敬語使ってんの?」
「…は?」

なんだ突然?

「同じ年の紗理奈様や小枝子様に使ってないのに年下のヒロにだけ使ってたら、ヒロが強制してるみたいじゃん。ヒロのイメージダウンになるんだから、気をつけなさいよね」
「はぁ……すみません?」

そういやこいつ、素直で純粋無垢な猫被ってんだっけ?
でも小枝子だって使ってんだし別に…なぁ?
また何癖つけて俺をいじめるつもりかよ。

「だから!」
「ああ分かった分かった! 分かったからそう怒るなよ。こう見えて俺、気が弱いんだから」

まぁ本人が言うんだから、タメグチでいいってことだよな。

「見たまんまじゃない」
「……」

いや…そう、か? 俺…気が弱そう?

「皐月様、おーい。落ち込んでる場合じゃないよ」
「ああ…とりあえず、中にいれてくれよ。」

汗が気持悪い。服も置いてってるし、着替えよう。

弘美をどかして窓枠に手をかける。

「ちょっ、玄関から入りなさいよ」
「いいじゃんか、よっ」

靴を脱いで中に入る。弘美が嫌そうな顔をしてるが無視だ。
つか汗臭いのはお前らが無視したせいだからな。

「あんた…汗かきすぎ」
「仕方ないだろ。お前も、七海も俺のメールも電話も無視するんだから」

そういやあいつ、俺にいつまでいるとか聞いてきたな。ってことは俺がいるのを知って無視してたんだよな。

「ってちょっと待ちなさいよあんた!」
「ん?」

「あんた、自分の中では七海様のことまで呼び捨てにしてるわけ!?」
「そうだけど…それがどうかしたか? 弘美だって俺のこと内心じゃボロクソだろ?」

尋ねると弘美はくやしそうに腹立たしそうに俺を睨む。

「……そもそも、あんたと七海様はランクが違うってか格が違うってか、もはや核が違うし」
「コアから!? てかだから文字でしか分からないボケはやめなさい!」

律義にツッコミをいれる俺だが弘美は面倒そうに自分のベッドに戻る。

つかお前まだ寝間着じゃねぇか。

「うるさいなぁ。着替えたら? 服、ちゃんと置いて帰ってる? 貸さないわよ」
「あるよ。あとお前、ちゃんと用意しろよ。いつまで寝間着なんだよ」
「うるさい。ヒロは元がいいから化粧しないし30分あれば十分なの。もう朝風呂は入ったし」
「俺だって化粧なんてしないっての。んじゃ、遅れるなよ」

「待ちなさいよ」
「はい?」

振り向くと顔に布が襲いかかってきたので反射的に掴む。

「早く汗ふかないと、バカのくせに風邪ひくわよ」

タオルだ。つまりこれでふけ、と。
まぁシャワーを浴びるつもりではあるが、気持ちはもらっておこう。

「サンキュー」

俺は後で返すと言って弘美の部屋をあとにした。

自室に戻るとむわぁ、とこもった熱い空気に俺は眉をしかめる。

ぐわ…日当たりがいいのも考えものだな。

窓を全開にしてクーラーの電源をいれる。温度は18度設定。

「あちぃ…」


夏だなぁ…









「入りますよー」
「ノックをしなさいといつも言ってるでしょう。犬だからって甘やかさないわよ」
「そういうのは本当の犬に言え。じゃなくて、何で私の電話無視したんですか」

弘美は気づかなかったんだし仕方ないとして、だ。お前確実に知ってただろ。


七海は窓辺のテーブルで本を読んでいたが顔をあげてうざそうな視線を俺に向ける。
涼しい部屋だなぁ。ま、俺の部屋はもう電源切ったけど。
あと30分くらい、ここに居座るか。

「うるさいわねぇ。あなたが一人で汗だくで立ってるのが見えたの。ほら、門が見えるでしょう?」

七海の側によると確かに門が見える。

見えるが…それがどうした?

疑問の視線を向けると七海は分からないのこの阿呆は、とでも言いたそうな視線を返してくる。

「あなたが頑張ってたから、邪魔したら悪いと思ったのよ。まぁさすがに1時間は体に悪いかと思ってメールしたけど」
「……おま…言いたいことは色々あるが、とりあえず…あー…いい。なんか疲れた。紗理奈が来たら起こしてくれ」

ベッドに寝転がる。
つか七海…お前の言ってる意味が分からない。俺が悪いのか?
もう、面倒だ。
七海のベッドはすでにベッドメイキングがしてあり、洗い立ての石鹸の香りがする。
マメなやつだな。ちなみに俺は気が向いたらやろうと思いつつ、まだ一度もシーツを洗ってない。
あ、休みなんだし、やらなきゃな。業者に頼もうかな〜

「ちょっと止めて。さっき終わったところなのよ。週に一度しかしないんだから、私が最初に味わうのよ」

週一なら十分だろ。


「ん〜…毎週土曜って…決めてんすか?」

七海の言葉を無視して尋ねると七海は本を閉じて立ち上がってきて、俺の腕をひこうとするから先に掴んで引っ張る。

「きゃっ…………どうしてあなたが引っ張るのよ」

七海は俺に引っ張られた勢いでベッドに肘をつき至近距離で俺を睨む。
あ…マジで眠くなってきた。

「…七海ぃ、うるさいなぁ…」
「あなたね…はぁ、もういいわ。離しなさい」
「……」

起き上がる七海。見上げる。
…綺麗だ。
窓からさす光が七海に陰影をつける。
長い髪がすけて輝いてるようだ。
この瞬間を切り取って飾っても、絵画として通用するだろう。
でも、絵画のように綺麗でも、七海は絵画じゃない。

生きていて、触れることができる。温かさが今も伝わってくる。

「皐月? 聞いているの?」

七海が手をふるが、俺は七海の手を離さない。

「…一緒に寝よー」

考えるより先に口にだしていたけれど、なかなかいい案だ。

「え?」
「それなら…七海も一緒に気持いー」

うん、七海が最初にこの気持良さを味わいたいって言ってたもんな。

「う…んぅ……寝よぅ? ちょっとだけ」
「駄目よ。だいたいクーラーがきいてると言っても、二人で寝たら暑いでしょう」
「ん〜…でも、夏でも母さんは一緒に毎日寝てた…よ。クーラーもなかったけど、でも…一人じゃ寂しいから」

なんでこんなこと七海に言ってるんだろ?
寂しいのかな? …うん、寂しいなぁ。
爺ちゃんのことは好きだけど、キスできるけど、一緒に寝るのはできないから。

「でも最近は殆ど一人なのでしょう?」
「うん…だから、寂しい」
「……分かったわよ。ここに座っててあげるから、寝なさい」

七海は俺に手を握られたままベッドに座った。

「…うん…ありがと……七海は、あったかいから落ち着く」
「そう…じゃあ、また寂しくなったらこうしてあげるわ。ただし私の気がむいたらね」
「…うん……」

ちょっとだけ、5分だけ、寝よう。










「…んぅ、あ…紗理、奈…?」

目を開けるとつまらなさそうな弘美がいて、それから紗理奈と目があう。紗理奈はにこっと笑う。

「おはよう寝ぼすけ、なんてね。あたしも人のこと言えないけどね」
「え…あぁ…ごめん、今何時?」

どうやら寝過ごしたらしい。七海、起こせよ。と、右手が空だ。
七海はいつの間にか消えていた。まぁいいか。
まだ外は明るいし、それほどではないだろう。

「5時」
「……え?」


どうやらかなり寝過ごしたらしい。

「最悪なんですけど」
「う…ごめん弘美、その…今からじゃ駄目か?」
「…いいけど条件があるわ」
「なんなりと」

弘美は無意味に沸点が低いので、少しでも俺に非がある場合は下手にでるに限る。

「今日はちゃんとヒロの奴隷らしく、ご主人様に絶対服従して。今日だけってか本当はそれが普通なんだけど……仕方ないから今日はそうするの」

拗ねるような弘美に俺は安堵する。そんなに怒ってないようだ。
それに言い方はアレだが、ようは罰として一日言うこときくってことだろ。

「了解しました、お姫様」
「よし、じゃあ行こう。とりあえず会長が今手配してるから、顔を洗ってきなよ。よだれついてるよ」
「…はあい」





















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