あい・らぶ・まみぃ!(28/52)縦書き表示RDF


読んでくださってる方は分かってると思いますが、行のあけ方を変えました。
こっちの方が読みやすいかと思いますが、どうでしょう。

あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



朝がきて、おはようのキス


私はゆっくりと目を開く。朝日が窓からふりそそいでいて、白い部屋に広がっている。

動けない。
何故でしょう。

理由は簡単だ。隣にいる少女が私を拘束してるから。

安らかに、何の苦悩もないかのように、子供のように無防備に眠る少女。

「?」

そばかすがはげてる…

ふと、嫌な予感がして視線だけを動かして、少女の顔の下―枕を見る。
白い枕カバーには茶色がついていた。


「っ! ……はぁ」

反射的に怒鳴ってやろうとして、止めた。
皐月はアホの子だから、仕方ないわね。それに…ここで寝るように言ったのは私だわ。

そして昨夜のことを思い出す。



夢を見てた。

遠い昔の夢、だけど時々、未練がましく見ては泣いてしまう夢。

いつも、仕事に追われる両親は幼い私を置いて出ていく。それを、今の私が後ろから見ている夢。

仕方ないことなのだと、今の私には分かる。たくさんの人を救い感謝される両親を尊敬しているし、私もそんな風になりたいと思う。

だけど当時の私にはそんなことはわからなくて、泣いて両親を困らせるのだ。私は後ろからそれを見てるのに、いつの間にか幼い『わたし』になってて、泣いてしまうのだ。

けれど私にかまってばかりいられないので、お父様とお母様は家政婦に私を任せて出ていく。
それが、何度も見た夢の内容。

けれど、昨日は違った。

私を頭を優しく撫でて、大好きだと言ってくれた。

そして私が『わたし』になって、声が違うことにようやく気付いた。
お父様とお母様じゃない。

誰…?

「でも少し、いい子すぎるんじゃないかな?」

「…え…?」

皐月の、声?
そういえば、寝る時に隣にいたけれど…夢に出てこなくてもいいんじゃないかしら

「たまには我が侭を言ったっていいんだよ。大丈夫。少しくらいなら、笑って抱きしめるから。辛いなら、支える。泣いたなら、笑わせてやる。七海のこと、みんな大好きだから」
「……………」

恥ずかしい…。
夢で皐月にこんなことを言わせるなんて。おそらくは、言って欲しかった言葉なのだ。
だって、凄く、嬉しいから。

でも皐月じゃなくてもいいだろう。皐月なんて…犬なのに。
バカで間抜けで…何でも力で片付けようとするし大雑把だし、喜怒哀楽の分かりやすすぎな単純だし、バカだし…あ、二回目だわ

「寝てる?」

皐月がいぶかしんでいるってあれ、夢じゃ、ない?

とっくにお母様たちの映像は消えていて暗闇だったのでそっと目を開ける。

皐月の喉元が間近に見えて、額に温かいものがあたる。
慌ててまた目を閉じた。

え? なにこれ? どうなってるのかしら?

皐月が…私にキスした?

「お休み、七海」

様をつけなさい、様を。
ってそんなことを言っている場合じゃないわ。
え…抱きしめ、られた?

ぎゅっと皐月の温かい体が押し付けられてくる。

や、何? 恥ずかしい…

目を開けると間近に皐月の顔がある。眼鏡は外してあるがそばかすはついたままだ。

拭ってあげようかしら…? あら? 夢じゃ…ない? 現実?
現実に…皐月にキスされた?

体温があがるのが自分で分かる。

あ、ああもう! どうして私があなたごときに触れられてあまつさえ……こんなにドキドキしなきゃいけないのよ!

「皐月離れな…寝てる?」

図らずともさっき聞いた皐月と同じ言葉を呟くけれど、皐月はすぅすぅと眠っていて時折むにゃむにゃと寝言を言う。

「…はぁ」

私は腕を皐月の背中にまわして力をこめる。皐月は少し体を揺らしてさらに私を抱きしめる手に力をいれた。
けれど痛くはない。
トクトクと穏やかな皐月の鼓動が私に直接伝わってくる。

いつしか私のドキドキも収まって、疲れもあっただろう。
深い深い眠りについた。

夢は、見なかった。



「……」

思い出したら、また恥ずかしくなった。
そうだ。額に…
額に手をあてると、熱いような気がした。

「……」

時計を見ると、朝の6時。いつもなら起きる時間だけれど、今日は土曜日でお休みだし、昨日も遅かった。
だから、もう一眠りくらいしてもいいだろう。

「お休みなさい、皐月」

私はそっと皐月の額にキスをした。
やられっぱなしなのは、私の趣味じゃない。










「………パ、パ…………。はっ、バッカみたい…」

夢から覚めて、ヒロは自嘲する。
本当にバカだ。ヒロを置いて行ったのに、まだこんなに好きだなんて。
本当に好きだった。勿論純粋に、愛していた。
なのに、ヒロが行くなと言ったのに、妻に言われるままに海外に仕事をしに行ったのだ。
そして飛行機事故で…。
バカだ。あんな女の親の会社で働かなければよかったのに。
泣きもしなかったあの女。ヒロに同じ血が通ってると思うだけで腹がたつ。
だからだろうか。母さん母さんと言う皐月様を見るとムカつく。

ヒロに、マザコンの皐月様に何か感じる権利があるとは思わない。
だってヒロだって世間一般からすればファザコンだと思う。
それに七海様や紗理奈様も…親に何かしら普通でない感情を抱いている。
それは負い目だったり執着だったり恨みだったり…色々だ。

「皐月様、ね…」


皐月様を思い浮かべてみて、無意識に唇は弧を描く。

ここ数年はそんな感じに少し歪んだ、ヒロたちみたいに猫被りな人ばかりの淑女会(おばあちゃんの地位を利用してちょくちょく来てた)にいなかった存在が、皐月様だ。

トラウマもちで、口が悪くてバカ正直だ。
お人好しで食い意地がはってる。
そんな人はいなかった。


ふいに、皐月様に会いたくなった。


朝の7時。何だか知らないが皐月様はいつも早起きなので起きてるだろう。
昨日は遅かったので寝てることもあり得るが、それならそれで叩き起こせばいい。

仮に乱暴に起こしたら、きっと怒るんだ。もっとこっちが怒鳴ったらきっと皐月様ももっと怒鳴るだろう。

それでもきっとヒロが怒鳴るのを止めれば、すぐに笑ってくれるだろう。
そんな単純なところ、嫌いじゃない。

「ん、決めた!」

ヒロは皐月様の部屋に行くため、着替えを始めた。










「お邪魔します皐月様いるー!?」
「きゃっ…な、弘美、さん?」

勢いよくドアが開けられ、着替え中だった私は慌てて上着を胸にあてる。

「あら失礼。皐月様は…いないか。それじゃ」
「ちょっ、ちょっと待ってください! 皐月さんがどうかしたんですか?」

部屋に皐月さんがいないらしい。別に、どうということはない。
朝食かも知れないしたまたまトイレに行ったのかも知れない(お風呂は個室にあるけどトイレはない)。
散歩をしてるのかも知れないし、学園の外に外出してるのかも知れない。

けれど、少し気になった。
だって、相手は皐月さんだから。私の大好きな人だから、些細なことが気になる。









いつもは鍵がかかっているらしいドアはあっさり開いて、ベッドには皐月さんと七海様が抱き合って眠っていた。

「会長!?」

紗理奈さんが叫ぶように言うと七海様は体を揺らしながらゆっくりと起き上がった。

「ん…なぁに? 勝手に人の部屋にはいるなんて…あなた方それでも淑女?」

平然と答える七海様に弘美さんが苛立たし気に室内に入る。私と紗理奈さんも続きドアを閉めた。

「……七海様、横の下僕は?」
「え…ああ、ポチ? 一人では寂しいだろうからここで寝かせてあげたの。それがどうかしたかしら? あなただって前にしたでしょう?」
「……」
「紗理奈も小枝子も…血相を変えてどうしたのよ?」

弘美さんはズンズンベッドに近寄ると皐月さんを乱暴に揺さぶる。

「ちょっと皐月様! おきなさいよ!」

私も歩いて弘美さんの後ろから皐月さんの寝顔を覗きこむ。
ああ…可愛らしい。

「んぅ…あと5ふん」
「駄目」
「ん〜、わぁったよぉ。おはよう、かぁさん」

皐月さんは寝惚け眼をこすりながらそう言って上体を起こす。
弘美さんはますます不機嫌そうに眉をひそめて

「あんた何寝惚け―」

怒鳴ろうとしたけれど、途中で皐月さんが弘美さんの頬にキスをしたから固まった。

「…ん〜……あ? れ? …弘美? ………うわあ!?」

パチッと目を開けた皐月さんは自分でした行為に驚いたのか、跳ねるように弘美さんから離れ、後ろの七海様に抱きつき

「って、うなあぁ!? だうっ!?」

その相手が七海様なのにも驚いたようでさらに跳ねてベッドの枕側の壁に頭をぶつけた。

「う〜ぁ…いっ、てぇー。あー、目ぇ覚めたー」

ベッドの上でうずくまる皐月さん。弘美さんはそんな皐月さんに目もくれずに皐月さんがキスをした頬を両手で押さえて呆然としていた。
私は腰を折って顔を近づけ、皐月さんに声をかける。

「そう、目覚めのご機嫌は如何ですか?」
「ああ…小枝子か…えー…と、何だかよく分からないんだが、何で俺弘美にキスしてんの? てかキスといや昨日…いや、何でもない」

昨日? 昨日、誰かとしたんですか?
嫌だ。皐月さんが他の人として欲しくない。
嫌だ。皐月さんは私の恋人でもないのに、独占しようとする私が嫌だ。

「昨日? 昨日何ですか? 誰にしたんですか?」
「いや、何でもない」
「……」

こんなにも嫌な気持ちで胸がいっぱいになる自分が、嫌いだ。

「あー…小枝子」
「はい、なんです?」
「おはようのキス!」

皐月さんはそう言うと私の頬にぶつけるようにキスをして立ち上がって

「んじゃ、失礼しました」

と走って出ていった。


「ぷっ」

時が止まったかの室内で、紗理奈さんが吹き出した。
私たちが見つめる中で紗理奈さんは声をあげて笑う。

「あは、あははははっ…く、くく…君ら…おかしすぎっ」









カツラも大丈夫。と言うかカツラはつけたまま寝ても取れないから大丈夫。まぁそうじゃなきゃ七海と寝たりできないし。
そばかすもオッケー。
制服もバッチリ。
眼鏡……ない。

あれ? どこやったっけ?

………! 七海んとこか




え。戻って大丈夫か?
う〜ん…弘美も怒ってるだろうしなぁ…
七海は…ま、まさか覚えてないよな?

あー…てか俺、いつの間にキス魔に?


……あ、わりと前からだな。額や頬にはちょいちょいしてたしな。
ただあの二人は怒りそうだから問題なんだよな。

「……まぁ、眼鏡くらい無くてもいいか」

一番大変な七海にはバレてるし、他のやつらになら女だって分かりさえすればいいんだしな。

つーわけで、飯にしよう。

「今日はなんにするかな〜」


















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