あい・らぶ・まみぃ!(25/59)縦書き表示RDF


すみません。区切りがわからなくていつもより長い上に、いつもよりぐだぐだです。
それで良いという優しい方はどうぞ。

注)何かこれはおかしいだろ。と思うところがあれば遠慮せずに言ってください

あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



優良さんじょー!


振り向くと見覚えのある綺麗な女性がいた
え…優希様、だったかしら?
それは友人の母だが、とてもそうは見えないので(若作りにも無理がある)義理だろうと私は勝手に思っている
しかし何故、優希様が? 皐月君の…皐月…いや、確かに似ているとは思ったけれど、変装なんて変だけど……まさか?
「小枝子は私ですけど…え、あなたは皐月さんのお―」
「えっと…そっち3人は淑女会の子よね? 皐月ちゃんのママ、優良(ゆうり)よ。よろしくね」
「優良…さん?」
別人? まさか、だってどう見ても同一人物だ
「ええ、なんなら優良ちゃんでもいいわ。皐月ちゃんは中かしら?」
「え、ええ…」
優良と名乗る女性はにっこりと、同性で年上なのに可愛いと思える笑顔を浮かべてドアをリズムをつけノックする
「さーつーきちゃんっ、あーそびーましょ。優良ちゃんよー」
「ゆう、り…?」
「そ、あなたの愛する優良ママよ。開けなさい」

「本当に? 本当に…母さんなの?」
もの凄く質問したい
優希様との関係は? 本当に別人?

皐月君は……皐月?


だけどまだドアの外にしめだされてるのに、まだ皐月が落ち着いていないのにこんな質問はできない
早く開けて
皐月の感情云々より、気になって仕方がない

早く、早く開けて

気になって仕方がない
いらいらする。母親が現れたと言うのにいつまでドアを閉めているつもりだ
口にも表情にも出さないが、私ははやる気持ちを抑えながらじっと優良さんを見つめる
見れば見るほど、優希様にしか見えない




「皐月ちゃん」
「…なんで、今なの? なんで授業には来てくれなかったの?」
「え? 私参観するなんて言ったかしら? 今日、とは言ったけど?」
皐月様の不思議そうな問いに、優良ちゃんと呼べなどとほざいた母親にしては若すぎる女は逆に不思議そうにそう言った
「…え? あれ? でも…」
皐月様の戸惑った声に優良はため息をつく
「まぁ皐月ちゃんが開けないのは何故か分かるわ。意地になってるんでしょ?」
「……」
「で、もぉ? 私、魔法のアイテム持ってるわよ?」
うわぁ、何か頭悪いこと言ってるし。さすが皐月様の母親、でいいのかな?
「魔法…?」
「そ、じゃんじゃじゃ〜ん、私の手作りケー―」
優良の言葉が終わらないうちにドアが勢いよく開いた


「いらっしゃいませ!」

泣いた跡を隠さすに笑顔の皐月様がいた

早っ!!
あんた…プライドはないのかよ。ケーキて…まぁ無駄に食に貪欲なのは知ってたけどさぁ
「効果は抜群ね」
さすが、母親…扱いは心得てるわけね
ヒロはこっそりため息をつく
ま、良かったじゃん。あんたには優しい母親がいるんだからさ
うちのなんか……やめた
あんなの母親だなんて認めたくないし、『母親』の言葉からあれを連想したことが自己嫌悪だ
バカだと思う。たかが母親の行動や言動一つで一喜一憂するなんて
ま、事実皐月様はバカだし、それに単純なのは、悪い印象じゃない
あと…やっぱり皐月様は元気だけが取り柄なんだから、笑ってたりするほうがいいかな



「効果は抜群ね」
母さんがにっこり笑う
会いたかった。会いたくて抱きしめたくてキスがしたい
だけどそれより先に、俺は欲望のまま腕を伸ばし
「ありがとう! うわ、チョコにイチゴのホールだ。僕の好きなやつじゃん。うまそー」
母さんからケーキの入ってる箱を受け取り中身をチェックした
くる、と踵を返し机に箱を置いて奥の棚からポットやカップを出し、いつものように紅茶の用意をする
「弘美はいつもみたいにオレンジジュースでいいか……い、いいですか?」
「いいけど…あんたあっさりしすぎじゃない?」
「そうですけ、どっ!?」
振り向けば紗理奈のアップと共に手刀がきたので受け止める
「おおぅ!? なんだ紗理奈さん!?」
「せっかく心配したのに君の態度なにそれ!? ちょっと一発叩かせなよ!」
「や、ちょっ、待てや。分かった、分かったから待て。俺が悪かった。死ぬほど悪かった。だからやめろ」
紗理奈は逆立ててた眉をゆっくり戻しふぅと息をはいてから手をおろす
だから俺も息をはいて手を下ろ
「たぁ!」
「だあ!?」
殴られた
おま、手刀より酷くなってる!
初志貫徹(しょしかんてつ)!」
「知るか!」
「さて、あたしも紅茶いれるよ。そこの…優良様? はミルクいれますか?」
「優良ちゃんか、さんで」
「……優良さんはミルクいれますか?」
「お願いするわ」
とりあえず紅茶をいれて席につくと母さんが隣なのはいいとして反対側は何故か弘美だった
図にすると


弘美―俺―母さん

小枝子―紗理奈―七海


ん? 変だな。このさい弘美は普段の4人の時は隣だからいいとして、何故に七海が母さんの前?
三人で椅子に座る時はいつも真ん中のくせにな?






…はっ! 七海、母さんと面識あるじゃん!!
しまったぁ! うわ! うわっ! どうする!?

だって滝口皐月=崎山皐月ってバレたら、家で男のふりできねーし!
どーする? どーするよ俺!?


1、断固として他人のそら似(いや無理がある)

2、この際ばらして口止め(保証はない)


「結婚する?」


母さんが普通に言った。突然のことに4人はクエスチョンマークを浮かべているが、俺には分かる
こいつ俺の脳内読みやがった
「いや、なんでやねん。つーかナチュラルに心を読まないでください」
つかしかも俺の脳内選択肢に『結婚』をいれるな
「だって皐月ちゃん、分かりやすいもの。まだ説明してないんでしょ? お母さんがしてあげるわ。説明が終わるまでケーキはお預けね」
「え」
説明をするのも「え」だが、ケーキお預けにも「え」だ
してくれるなら手間はないが何を説明するつもりだ
そして何故ケーキをお預けなんだ! もうフォーク持ってるのに!? 弘美と紗理奈はもう食べてるし!
「さて七海ちゃん、私に質問があるんでしょ? 3つまでどうぞ」
「なんで3つ?」
「何事も3つくらいが丁度いいのよ」
よく分からん理屈だ
「…では、あなたと優希様のご関係は?」
またストレートな。紗理奈と弘美は分からないのか首を傾げる
「優希? 誰それ。紗理奈様知ってます?」
「いや。知らないよ。小枝子は?」
「えと…知ってますけど、私から説明するのは少し…」
「じゃあ聞こう。てかこのケーキ美味しいよね」
「ま、手作りにしてはね」
「ゆ…優良さんはお料理が上手だと聞いてましたけどお菓子作りも得意なのですね。私もたまにしますけど、これには負けますね」
「へぇ、あたし料理って全然できないんだよね、なんかこう違うものにな―」
「紗理奈。小枝子にヒロも、あなた方少し黙りなさい」
七海の厳しい言い方に小枝子がびくっとするが紗理奈は平然とひらひらと手をふる
「はぁい」
「えっとね、皐月ちゃんたちは隠したいみたいだけど、実は優希ちゃんは私の双子の妹なの。皐月君は皐月ちゃんの従兄弟」

あー…まぁ無難な設定だよな
七海は何やら複雑そうな顔で俺を見ては母さんを見る
「え…そ、そうなんですの?」
「そうよ。当たり前じゃない。だって優希ちゃんと私が同一人物だったら、皐月ちゃんが皐月君ってことじゃない。この子、女の子よ? まぁ皐月君可愛いし、皐月ちゃんとそっくりで見分けつかないくらいだけどね」
「そ…そうなんですの?」
七海は依然として胡散臭そうな疑惑の目を俺に向けているが、母さんの「女の子よ?」のくだりで無理矢理納得するような頷きをする
まぁ…納得するしかないよな。普通…
つか母さん普通に嘘言えるんだ。しかもスラスラ…まぁ、分かってたけどね
「うん。だから変装するって聞かなくて…せっかく皐月ちゃん可愛いんだから、変装なんかとっちゃえばいいのにね」
「そ…そうですわね」
「まぁ中身は皐月君よりずっと男前だけど、並べると双子の兄弟みたいよぉ。というかまぁお父さんが男として皐月ちゃん育てたから仕方ないんだけど」
「男と、して?」
「あ、駄目よ」
「え?」
「それは4つめの質問だから答えられないわ」
「……え」
七海は驚いてるが確かに『そうなんですの?』って質問二回してるもんな
「じゃあ皐月ちゃん」
「いただきます」
俺はフォークを置いて右手で掴んで3口で食べた
「ごちそーさま」
「早っ! しかも君、行儀悪すぎ。男として育ったのは分かったけど、だからってありえないよ」
「うるさいですよ、紗理奈さん」
「まぁ皐月様だし? てか今の話だと従兄弟が同じ名前なわけ? 変なの」
「優希ちゃんと私そっくりだから、同じ日に子供生んで、その瞬間にこの名前をつけようって思ったの。運命よねぇ」
「へぇ、双子って面白いんですね。皐月に似た男ねぇ。会ってみたいかも」
感心半分、好奇心七割でにやにや笑いをする紗理奈に俺はため息をつく
「止めたほうがいいですよ」
「恥ずかしいのよね? 皐月君ね、可愛いわよ。本っ当に皐月ちゃんにそっくりだからびっくりするわよ。はい写真」
全く母さんはまた面白がって好き勝手なことを……ん?
「写真?」
待てやお前。一体何の写真だ
見られる前に母さんが鞄から出した写真をひったくって検証


写真には、友達と写ってる中学のころの俺と、それに紛れるように黒髪が長い俺が並んでいた

「……」

髪の毛が黒で長くなってはいるが眼鏡とかないし普通に顔が同じなのが分かるが、表情も微妙に違うしこうやって見るとマジで双子に見える
これ、どうなってんだ?
流行りのCGってやつか?

わかんねぇけど…スゲーな。前から思ってたけど、設定とか凝りすぎだろ
「あ、本当だ。皐月様にそっくりだ」
横から弘美に覗かれてたがこれなら見せても特に問題はない
「あ…ああ、男前だろ?」
「え〜? まぁ不細工じゃないけど女顔だよね」
「そんな不満そうに…さ、紗理奈さんはどう思います?」
紗理奈に渡すと七海と小枝子も覗く。七海はしばらく凝視してから何やら考えてるようで黙りこんしまう
紗理奈は気づいてないようで困ったように頭をかく
「え、ん〜、悪くないんじゃない? 可愛い系だよね。ていうかマジでそっくりだから何とも言いにくいんだよね」
「とっても素敵ですわ」
「へぇ、小枝子こういう趣味なんだ? もしかして皐月とラヴな関係?」
「え、あ…」
反射のように俺を賛辞してから気付いたのかぱっと頬を染める小枝子に母さんがにっこり笑う
「可愛いなぁ。ねぇ皐月ちゃん、いつ結婚するの?」
「…何を言いますか。僕は誰とも付き合ってない。と言うか母さんさ、本気で僕を婿にだす気?」
「違うわよ。皐月ちゃんは可愛いお嫁さんをもらうの」
「……はぁ、本気だから性質悪いんだよなぁこの人」
「なに? 皐月様の母親って阿呆なの?」
母さんも母さんだが、弘美は弘美で何の遠慮もなくとんでもないこと聞いてくるな
「本人を目の前にしてそういう言い方はやめてください。というか…違います。私の戸籍……男なんです。え〜、ほら、私、男として育てられたって言ったでしょう?」
「はぁ? 戸籍が男って…真面目に言ってんの?」
「はい」
「じゃあじゃあ、私、皐月さんと結婚できるんですか?」


おい、何を聞いてますか小枝子さんよ

「勿論よ小枝子ちゃん、私小枝子ちゃんみたいな娘欲しぃわ」

母さん! …うわ、なんだこの状況は
「本当ですか?」
「ええ、皐月ちゃんはどう思ってるの? どの子が本命? 美人揃いよね」
「母さん…うち2人は悪魔だからね?」
紗理奈は除いた。そう悪い奴じゃないみたいだしな
「お、最初はあたしたちのことひとくくりにしてたのに減ったね。何? 真面目に会長かヒロのことお気に入り?」
「いやお前だし。素でわりといいやつっぽいし」
「へ? あ、あたし?」
本当に考えてなかったのか意外そうな紗理奈
「そりゃまぁ七海様と弘美さんだって嫌な人じゃないけど…いじめっ子だし」
「皐月ちゃんいじめっ子嫌いだもんね」
「でも対象俺だけだし相手が女だから手ぇ出せないしストレスたまるわぁ!」
「というか弘美さんも七海様もそうは思いませんけど。七海様は思っていたよりは厳しい方だけれどしっかりしてるのだし、弘美さんの我が侭も可愛い範囲じゃないですか」
「甘っ! 小枝子、お前聖女かよ。あの普段の猫被ってないの見て……はぁ、イイヤツだなぁ」
「結婚するの?」
「しません。あ、いや別に小枝子が嫌いなんじゃなくて、むしろ好きだぞ?」
母さんにぴしゃりと断りをいれるとあからさまにショボンとする小枝子にフォローをいれる
ああ面倒だなぁ。てかあなたそんなキャラでした? いやまぁ、可愛いけどさ……


あ、ヤバい。なんか母さんにかなり毒されてる。可愛いのは認めるし女は大切にしようと思うし守りたいけど、だからって恋愛対象にするってわけじゃない

確かに母さんの言うことも、分からないでもない

俺は絶対に男を好きにならないし、女の方が親しくはなれる
そして女でも構わず好きになるのなら、確かにここにいるのはタイプは違えど上玉揃いだ

けど、正直今はそんなの考えられない
小枝子のことは本当に(母さんと爺ちゃんの次に)好きだし、可愛いからキスして(勿論、頬だ)抱きしめたいくらいは思うけど、唇には恥ずかしいし、肌を晒してセックスしたいなんて絶対に思わない

「まぁ結婚はおいといてよ。今は、考えられないし。けどま、男とする気だけはないから、母さんの可愛い娘も夢じゃないんじゃない?」
嘘だけど
「やぁね、皐月ちゃんは十分可愛い娘よ? だぁいすき」
「…母さん…」
「だからその変装とって? バレてるんでしょ?」

うわぁ、すがすがしいほどの笑顔で言い切られたよ

「それ、ヒロも思ってたぁ。バレてんのにする意味ないじゃん」
「まぁね。聞くタイミング逃してたけど、なんで変装なんてしてたわけ?」
弘美と紗理奈の疑問に俺は「あー」と唸りながら母さんに助けを求める
にっこりと我が母親ながら可愛い笑顔を向けられ俺も微笑む

「皐月ちゃんバカだからね」

待てや母親
いきなり笑顔でなに娘を罵倒するか

「だから、皐月君との関係を聞かれるのが面倒だったのよ」

う〜ん…苦しいと思うよ

じと〜、と小枝子以外の3人娘が俺を見てくる
「もう一つ理由はあるけど、内緒よ。皐月ちゃんがいいかな〜って思ったら話すわ、ね?」
「う、うん」
「今言いなさい」
「やです」
「いいじゃん。なんならもれなくあたしが校内新聞にして発表するからさぁ」
「いーわけあるかぁ!」
紗理奈に怒鳴りながら先ほどの発言を後悔する。何でそーゆー思考回路になるんだよ
やっぱお前も悪魔だ!
「ま、とにかくとりなさいよ。私も前から止めて欲しいとは思ってたわ。あなたが他の方に猫を被るのは勝手だけど、敬語すらままならないのだからこの部屋では止めて欲しいわ」
七海が腕組みをしながら相変わらずの尊大な態度で背もたれにもたれて言うが、敬語は使えって言うわりに矛盾してんだよ
「やー、です、よ。命令聞く義理はありませーん」
「あ、皐月ちゃん皐月ちゃん」
「え?」
母さんが綺麗な笑顔のまま鞄から何やら出す
「鞄にチョコレートが一個だけ残ってたわ。欲しい?」
小さな袋入りの一粒を眼前に出してきたので頷く
「欲しい!」
「じゃあ目をつぶって口開けて?」
「あ」
素直に目をとじ大きく口を開けるとサイズの大きい眼鏡が少しずれた
「邪魔だし、眼鏡とるわよ」
何に邪魔だよ。まぁ眼鏡くらいはいいか。それより
「早く〜」
「落ち着きなさい。ケーキカスがついてるから拭うわよ」
「〜」
口を開けたままなのに頬を何かで拭いてくれるから頬肉が口内にへこんでくる
てか、そんな両頬にいっぱいつくほど変な食べ方したかなぁ?
「はい、投入〜」
苦甘いチョコが口に入ってきたのでよだれだらけの口を閉じる
「ん〜。美味しい。ん? みんなどうかしました?」
味わいながらようやく目を開けると小枝子は苦笑し、3人は何やら珍しいけどどうでもいいような、そんなものを見るような目をしている
「…皐月…あなたバカでしょう?」
「は? 失礼な…何様だ、ってどうせ七海様だっつーんですよねはいはい」
七海の唐突な言葉も流すがさらに紗理奈や弘美、小枝子まで微妙な表情だ
「いや、あたしもバカだと思うよ」
「ヒロは前から思ってたし」
「……その、そういうところも皐月さんの魅力の一つだと思います」
「?」
なんだ? チョコを食べさせてもらったら駄目なのか?
「皐月ちゃん、髪の毛うっとおしくなぁい? ヘアピンつけてあげるわ。部屋を出るときにとればいいでしょ?」
「え、やだよ」
「あら、実はもう一粒チョコレートがあっ―」
「つけるつける、つけて?」
「いい子ね、皐月ちゃん」
「うん。僕いい子だよ」
母さんが俺に包みごと渡し、シンプルな紺のヘアピンを持ち喜々として俺の前髪に触れた
「美味しい。母さん大好き、もっとないの?」
「残念、ないわ」

「…ちぇっ、まぁいいや。ねぇねぇ、膝に乗ってもいい?」
「どうぞ」
にっこり笑って母さんは膝をたたく
「うんっ」
俺喜んで母さんの膝に座る。4人の微妙な視線はオール無視
母さんへの愛に他人の意見は関係ないのさ
何故なら母さんを愛してるからだドーン!(効果音)

あ〜、やっぱり母さんの傍は落ち着くなぁ
母さんの腕を掴んで俺の体にまわす
「ふふ、皐月ちゃん子供みたいね?」
「子供だよ。どれだけ年をとったって僕は母さんの子供だ。どれだけ年をとったって、僕は母さんを愛してる。ずっと一緒だよ」
もたれると豊かで柔らかな弾力のあるものが背中に触れる。膝枕ならしょっちゅうだったけど、膝に乗るのは本当に久しぶりだ
と言っても母さんが足を広げた空間に座るのであって本当に上には乗らないけど(だって俺の方がでかいんだぜ?)
「でもね、やっぱり学校っていいものでしょ?」
「うん。大変だしいじめてくる後輩も厳しい先輩も、他にも色々あるけど楽しいよ。でも心には母さんがいるよ。それくらいならいーじゃん」
「そうね。でも、いつかは別の人を見付けなきゃ。別に男の子でもいいわよ。特に仲のいい子が確か二人くらいいたじゃない。戸籍なんて、どうにでもなるんだからね?」
最後にこの体制で甘えてた時は頭の上から声がしたけど、今は耳の後ろがくすぐったくて、でもそれすら心地よい
母さんが優しく俺の髪を撫でる。カツラを外せばよかった。感触がよく分からない
「ただの友達だよ。あと、普通はどうにもならないよ。あと…ムナクソ悪くなるから二度とそんなこと言わないで」
俺の物言いに俺らを鑑賞するようにして話をしていた4人がばっと俺を見た
「ごめんね。でもきっとまた言うわ。皐月ちゃんのこと愛してるもの」
「……」

こんなにも近いのに

こんなに、誰より傍にいて温もりも、吐息さえ感じるのに

母さんが、酷く遠い

母さんのさりげない一言で、一瞬のうちに俺の満ちたりた幸福な気分は無散した
そして、最近よく感じる恐怖が訪れる

母さん…何が目的なの?

愛してるよ。心の底から愛してるんだ
他に何もいらないなんていいきれないし、もし爺ちゃんと母さんが断崖絶壁で落ちそうでどちらを助けるか聞かれても、どっちも助ける


でも今、目の前で本当に母さんがナイフをつきつけられたら?
きっと何も考えてなんかられない
感じることさえできない
守るために何の代償も躊躇わないだろう

もしかすると、爺ちゃんを殺せと言われても、そうするかも知れない





そこまで考えて、戦慄した

何だ? 今何を考えた?
爺ちゃんを…殺す?
あんなに大好きなのに?

あんなに…俺を愛してくれてるのに?



俺は…未だに母さんしか愛してないのか?

母さんしか、見れてないのか?

「皐月ちゃん?」
「ぁ…母さん…僕は…ごめんなさい。期待に、沿えない」
「え?」
「愛せないんだ。誰も、母さん以上に思えないんだ。だって…僕は爺ちゃんを……あんなに愛してくれてるのに、母さんのためなら殺してしまうって気付いたんだ」
「…皐月ちゃん…」
「僕は最低だ。クズだ。ゴミだ………『先生』は、正しかったんだ」
「皐月ちゃん! …今のは訂正しなさい」
母さんが厳しく(珍しく)鋭い声をだすから4人はびっくりして声を失うが、俺は以前ひたすらこれで怒られたから驚きはしない
「…無理―」
「皐月ちゃん!! お母さんの言うことが聞けないの!?」
「……ごめんなさい」
それでも、母さんの声が悲しくて辛くて、そんな悲壮な声だから
嫌われたくなくて、謝る
「…うん。ママもごめんなさい。怒鳴ったりして。恐かった?」
「……怖いよ。母さんが俺を『愛してる』っていう時が、一番恐かった」
正直にそう言うと母さんは笑顔を消して目を見開いた。母さんが今日来てから初めて笑顔がなくなったんだけど、それはほんの数瞬でまた笑顔が現れた
「…そうね。ごめんなさい。気をつけるわ」

いつからだろう? 母さんがいつもいつも、常に笑顔を浮かべていたのは
元々優しい人で、よく笑う人で、だから気付かなかった

でも、待って

本当に?
そんないつもいつも、常に心から笑顔を浮かべられる人間なんているの?
母さんは…いつから無理をしてたの?


俺のせい?
俺のせいだ。俺が甘えるから母さんが頑張って、俺が甘えるから母さんは心配をさせないように笑うんだ

俺はバカだ。母さんが俺にまで気をつかってるなんて、今の今まで気付かなかった

「…愛してるんだ」
「ええ」
「愛して欲しいんだ」
「……愛してるわ。本当に、心からあなたを愛してるわ。世界で何よりあなたを愛してる。あらやだ、皐月ちゃんのことを言えないわね、だってお父様か皐月ちゃんなら、あなたを迷わずにとるもの。あなたは私の可愛い、本当に可愛い娘よ。愛してるわ」
さっきのとは違う『愛してる』で、俺は嬉しくてしかたなかった
何処が違うかなんてよく分からないけど、こう、想いと言うか厚さが違う気がする
「…うんっ!」
とにかく、『愛』をつたえるために「愛してる」と言ってくれてるのが分かる
それがとても、嬉しかったんだ

母さんが俺のためにたくさん苦労をしていても、俺を愛してくれているなら許される気がした

そんなのただの自己満足なのに
苦労をかけて、手間をかけさせて、なのに俺はただ母さんに甘えて泣くだけだ

頑張ってる?
母さんを支える?

笑わせる。今の俺は頑張ってなんかない
まして支えられない



でも、どうしたらいいんだろう?
勉強を頑張ればいいの?
真面目にすればいいの?

違う。母さんは、俺が『マトモ』になるのを望んでるんだ

じゃあ…何をすればいい?

どうやって男に慣れればいい?
どうやって女に慣れればいい?
どうすれば人に触れられて過剰反応せずにすむ?


どうすれば…恋ができる?



「ねぇ母さん」
「ん?」
「…やっぱり何でもない。それより聞いて。僕、今回のテスト凄く良かったんだ」
「あら、何点?」
「平均したら…60くらいかな」
「良かったわね、赤点じゃなくて。皐月ちゃんは頑張り屋さんだものね」
「うん」
「でも、次は70点を目指しましょうね?」
「う〜ん…無理」
「皐月ちゃん?」
「…いや無理だって。精一杯ですから」
「皐月ちゃん、何も100点をとれ、なぁんて言ってないわ。でも諦めたら何もできない。そうでしょう?」
「…うん」

言われてから気づく
俺は今までだって、そうだ

諦めて、妥協して、甘えていた

そうか、そうだったんだ。だから俺は駄目だったんだ

「分かった。頑張るよ。頑張って…頑張ってみる」

だから
どうか俺に呆れないで
どうか俺を見捨てないで

「だから、待ってて。いつか、人間になるから」
「君はどこぞの化物か、なんだよ人間にって。皐月は人間じゃないわけ?」
あ、しまった。間違った
「…あ…あはは」
「まぁまぁ。皐月ちゃん、ママはいつまでも待ってるからね」
「うん」



「あら、もうこんな時間なのね」
下校ベルが鳴り響き、七海がそう呟いた
ああ…そう言われて見ると窓の外はかなり暗い。最終の下校ベルが鳴るのは7時だったか
それで部活も全て終わりだ。夕御飯は6時から9時だしもう始まってるが、今からだとちょうど部活が終わった生徒軍とかち合って混雑してしまう
「とりあえず寮に戻りましょう。優良…さんも、申請すれば生徒と同室でなら宿泊可能ですわよ」
片付けをしながら七海が言うが、母さんはあっさり口を開く
「あらありがとう。でも大丈夫よ。もう帰るから」
「ええ!?」
まぁ泊まるとも聞いてないけど、もう帰っちゃうの?
「ごめんね。でも待たせてるから」
「タクシー?」
「ううん、ヘリコプター」
「…は?」

ちょっと待て、お前今なんつったんだよ

「飛行機は大げさだからぁ、ヘリで来ちゃった」
キャハと可愛く言う母さんだが、今度ばかりは流されないぞ!
「ここまでくるなよ!」
「大丈夫よ」
「ど・こ・が!?」
「この学校、ヘリポートがあるから」
「そういう問題じゃない! 激しくない!」
「まぁまぁ、えっと…皐月の母親らしいよ」
なだめるように言う紗理奈だが、それ、バカにしてんだろ?
「そーいう紗理奈さんの母親だって何なんですか。わけ分かんないですよ」
「あ〜、うちの母親最近化粧にこっててさ。指揮者で忙しいわりに化粧サロン作ろうとしてるんだ。あと素で人を飾るのが好きなんだよね。特に若い子が好きなんだ」
理由は分かったが、だからってあの言い方とか初対面でありえねーし
「変態ですね」
「君の母親も十分変だよ」
「そこも愛してます」
「あーはいはい」



「じゃあ皐月ちゃん、またね」
「うん」
母さんは俺の両頬に一度ずつキスをしてそう言った
「みなさん、うちの皐月ちゃんをよろしくお願いします」
「いえ、皐月は私たち淑女会の立派な一員ですから。責任を持ってお預かりいたしますわ」
な、七海…そんないきなりどうしたんだ?
嬉しいけど…キャラ違うし不気味だぞ
飛び立つ母さんを見送るとふぅと七海は息をはく
「さて、行きましょうか。あ、念のために言っておくけど、形だけはああ言っただけでペットがあまり調子にのるんじゃないわよ」
「そーそぅ。まぁ小枝子様はともかく皐月様はあたしの下僕なのを忘れないでよね」



……そうだよ。これがこいつらの本性だよ
少しでも喜んだ俺が阿呆でした
「まぁまぁ。それより行こう」
「あ、はい。お腹も減りましたしねぇ」
「駄目だよ」
「え?」
「九時までは食堂に行っちゃ駄目だよ。お風呂にでも入ってなよ」
「…はい? ちょっ、何でですか? 食堂閉まってるじゃん」
俺に餓死しろと?
「とにかく駄目。小枝子、皐月か食堂行かないように見張っててね。あたしたちは…ね? 会長」
「ええ…そうね。じゃあ皐月、絶対に何も食べては駄目よ。餓死しても駄目よ」
「な―」
「言うこと聞かなきゃヒロの下僕から家畜に格下げだからね」
「…それ、どっちが下なんだよ」
「バァカ、家畜に決まってんじゃん」
なんなんだこいつらは…
つか…なに企んでんだ?




ここまで読んでくださりありがとうございます。
これから皐月はトラウマを乗り越えて行く予定ですがぶっちゃけあまり考えてません。
とりあえずみんなと仲良くなるつもりですが、誰と結ばれるかも考えてない上に、新しいキャラも考えたりしてます。
が、かきわけも面―ごほん、難しく収集がつかなくなりそうで迷ってます。
何かご意見があればどうぞお気軽にお寄せくだされば光栄です。


シロクロ











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