あい・らぶ・まみぃ!(22/55)縦書き表示RDF


あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



お背中流させていただき……辞退してぇ


「……」
「うわ、あたしだってそんなあるほうじゃないけど…皐月って胸ないねぇ」
胸を隠したくなったがそんな女々しいことはしたくないので無い胸を張りつつも、やはり恥ずかしいから顔どころか全身が熱い
「…ほっといてください。あの……変じゃないですか?」
ぴちぴちする。酷く窮屈だ。胸や腰や尻の部分は若干ゆとりがあるが、股と肩が酷く窮屈で食い込んできて痛いくらいだ
つまり俺は紗理奈より5センチほど背が高いにも関わらずガリガリってことだ。おかしいな。体重は結構あるんだが…筋肉は脂肪より重いんだっけ
「ん〜だいぶサイズが違うね」
「う〜…」
「そか、授業じゃないんだしセパレートにすればいいんだ」
「え」
今俺が着ているのはスクール水着、略してスク水だ。胸のゼッケンには『紗理奈』とある。みんな名前でよびあうものだからゼッケンも名前らしい。普通は名字だろ
「はいこれ」
「……は」
いやスクール水着の時点で死ぬほど恥ずかしいのに、なんでそんな面積の少ない…赤ビキニなんだ。いやそりゃお前のなんだからお前には似合うだろうが…なぁ?
「無理無理無理! 無理ですって! 死ぬ!」
「大丈夫。その水着着る時もそう言って生きてるから」
「むしろ殺せ!」



風呂場に行くと小枝子はバスタオルを巻いていたが、紗理奈も入ってきて3人揃って隠そうともしない。小枝子と七海と弘美が湯船から出て俺をじろじろ見る
「ぅわあ…」
「あなた…なんだか凄いことになっているわね。というかもうすぐ授業で使うんだから買いなさいよ」
「うわ〜ん、小枝子〜!」
二人の視線が恥ずかしすぎて小枝子の背中に抱きついて盾にする
「だ、大丈夫です。似合ってますよ」
「ていうかスクール水着なんて誰でもそれなりに見れるでしょ。いくら皐月様が貧乳でもね」
「う〜、恥ずかしすぎて死ぬ。死ぬんだ。誰だよこんな拷問考えた阿呆は」
「ヒロだよ…あ? 誰がクソだって? …はぐわよ」
そこまで言ってない!
弘美がああん? と睨みをきかせながら俺に近づいてきて脇腹のたるみに手を伸ばす
「ひいぃっ! 本当にごめんなさい! 俺が悪かったマジで! 後生だから止めてください!」
「え〜?」
「何でも言うこと聞きますからお願いします!」
「ふ〜ん…じゃ、いいや。もうヒロは温まってるから背中流してね」
弘美は身をひるがえし並んでるシャワー軍の一つの前の風呂椅子に座った

「う…さ、小枝子ぉ」
「えっと…そんな目で見られてもさすがに困るんですけど」
「早くしてよ」
「皐月、あまり我が侭を言わないの」
七海が早々に湯船に紗理奈と共につかりながらも叱咤してくるので、仕方なく俺は小枝子から手を離す
「…分かりましたよ」
くそぅ。俺が悪いのか? ていうか女同士だからって全く恥ずかしくないのか? そういうものなのか?

小枝子を湯船につからせて俺は弘美の背後に膝をつく。ヒロが振り向いて猫の形をしたスポンジを渡してくる
「はい、ヒロのスポンジは特注だから丁寧にしてね」
「可愛いですね」
つかパンツといい…猫好きなのか。俺も好きだけど
つか動物はどれも好きだ。だって嘘をつかないし、こちらが優しくすれば酷いこともしない。…多少つれない時もあるけどな
「それはいいから。あ、先にこれ使って」
「? 何これ?」
見知らぬボトルを渡された
「化粧落とし。さっさとその不細工3割増になるそばかす落としたら?」
「え…まぁ……バレてるしいいか」
正体隠すっても七海も気づいてないっぽいってか、普通は男だと思ってるやつとそっくりな女がいても親戚くらいに思うか
「そうそう。あんた真面目にしたら多少は見れるんだから変装はやめてコンタクトにしてみたら?」
「それは無理っす」
そもそも目は悪くないしな
俺はボトルの後ろにあるように、手にオイルのような液体を出して顔にこすりつけ、シャワーを出す
「っ!? 冷たっ」
「バカじゃん? 水の方ひねってんじゃん。ったく」
弘美が水を止めてもう一つの蛇口をひねると、ちゃんと暖かい湯が出てきた
そうか、左が湯か。見た目同じだから分からなかった
顔を洗ってから髪をかきあげて鏡を見る
うん、俺の顔だ。つかカツラってすげーな。よっぽど生え際を凝視しなきゃ分からん
前髪が目にかからないように斜めにおろしてから改めて弘美のスポンジを手にする
「じゃ、洗いますよ」
ボディソープをつけて泡立てる。そして顔をあげるとさっきから意図的に見ないようにしてる白いもの、すなわち弘美の肌が目に映ってくる
うう…なんで見てる俺がこんなに恥ずかしく思わなきゃならないんだ。
仕方ないだろ! こちとら男として生きてきたんだ! 半分くらいは男の精神なんだ! ……たぶん(実際に普通の男がどんな精神かなんて知らないが)

泡立てたスポンジを弘美の背中にあてて上下させる
う〜…スポンジ越しのくせに柔らけー。マッサージなら母さんや爺ちゃんにしてやるけど体は……洗ってもらっても洗ってあげるって発想はなかったな
「ちょっと皐月様、ちゃんとやってよ。ふざけてんの?」
「え?」
「弱すぎ」
「あ、はい」
幾分か力を余計に、けれどけして強すぎないようにスポンジに力をこめる
「あ、そう、そんな感じ」
「はい。あ、右腕を」
「ん」
細い腕もしっかり洗うが、力をいれたら折れそうなほど細くてハラハラする
普段はそこまで意識しないが、裸になられると嫌でも意識する

女ってやつは、なんて弱い生き物なんだ

あんなに威張っていて俺に暴力をふるいまくる弘美だって、俺が本気を出せば簡単に死んでしまいそうに見える
「ん〜、そんなもんかな。じゃあ次前で足で、次に髪ね」
「…え? ま、前?」

俺は聞き返す
いやちょっと待てよお前。いくらなんでもそれはなしだろ
「だから前。ほら」
弘美が気安く振り向き
「ひえぇ!」
思わずのけぞると弘美は顎をつきだすようにして尊大に俺を睨む
くそぅ、薄い胸をはりやがって(俺も変わらないが)
「まぁだ顔赤いし。女同士なんだよ?」
「そうですけど…風呂なんて母さんとしか入ったことねーし」
「修学旅行とかは?」
「えー…休んでました」
嘘。行ってた。ただ風呂は女なのが嘘とバレないように夜中になってからこっそり男風呂に行ってた。腰にさえ巻いてれば知らないオッサンに会った時もバレなかったし………ばれてない、よな?
「へ? あんたハブられてたわけ?」
「まさか。ただたまたま風邪をひいたりしてまして」
「ふーん。つか母親とあんたは女で、それを見慣れてりゃ平気でしょ?」
「んー、やっぱり弘美さんたちは母さんとは違うし…」
「具体的には?」
「弘美さんより母さんのが胸がデカくて美人だ」
断言できるな。だがはっきり言うと可哀想だから隠したのに
「……殺してー」
「え? 自殺願望?」
「皐月様をだよ!」
桶を縦にして俺の頭を叩こうとしてくるので右手で止める
凶暴なやつめ

「スキあり!」

「! …あ、ぶな」
フェイントだった
弘美は俺がいつものように受けとめるのを予測していて、むしろいつものことだと気を緩ませる俺の脇腹に器用に座ったまま蹴りを入れてきた
が、わざわざ攻撃のタイミングを知らせてくれたので左手で(かかと)を受け止めたのだ
「う〜、悔しいなぁ。今のはいけると思ったのにぃ」
「いやまぁ…『スキあり』とか言われたらねぇ」
「あ、そか。じゃあ次は黙ってやるわね」
納得して笑う弘美に俺はげんなりする
「やらないっつー選択肢はないんですか」
「あると思う?」
「……はぁ」
ため息をついてからスポンジで弘美の体を洗う

見えない
俺には何も見えない
何も感じない

まして!

ムニュムニュしたものなんて存在しない!



「……」
俺は無言で弘美にシャワーをかけて髪をすき、しばらくしてから止める
弘美は自分で髪をかきあげて少ししぼり、振り向いた
「やればできるじゃん皐月さ…ま? えっと、顔がありえないくらい赤いまま目が虚ろなんだけど、あんた生きてる?」
「……」
俺は立ち上がり湯船に向かう
「あら終わったのね。じゃあ次は私を―」
俺は七海の言葉を聞き流して倒れるように湯船に入る
バシャー!
凄い破裂音がして全身が痛い

あ〜、へたこいた……
水の何とか力ってやつか。ヒリヒリするぜ
誰かが俺をつついてくる
うぜーからとりあえず膝をかかえて丸まる
誰かが俺の水着をひっぱってくるが無視だ無視

にしても、あーー…恥ずかしかったぁ
つか、ありえない。日本人ならもっと慎みを持てよ
どいつもこいつも、小枝子だけかマトモなのはよ
てかあと二人もまだ洗わなきゃならんとか最悪だ
このまま無視して浮かんでたらチャラにならねーかな

段々俺に触れてる腕が多くなり揺らしてくる
なんなんだおい。早く洗えってか?
うるさいなぁ。ちょっ、なんでそんな下から抱えるようにするんだよ
ああもう!
「いいかげんにしろー! 体洗うにも少しくらい待て!」
勢いよく立ち上がって言うと俺を囲んでいた4人は驚いたように瞬きを何度もしている
「? アホ面並べてどうかしたんですか?」
小枝子まで。いくらお前らが美人だっつっても、そんな間の抜けた面まで画になるのか母さんくらいだからな
「どうかしたって…なんで君普通なの?」
「は?」
抗議するような紗理奈に小枝子も頷き、弘美がふぅぅと息を吐く
「だって皐月様ずいぶん長くもぐってるから…」
その言葉に2人も頷くが、七海はいまだ間抜け顔だ
「はぁ…私、わりと息を止めるの得意なんですよ。あー…七海様? えっと…ご心配おかけしてすみません」
ぼーっとしたままの七海に声をかけてからみんなに謝ると、七海はきゅっと眉を逆立てる
「バカ! 心配なんかしていないわよ!」
「ぅぎゃあ!」
思い切り油断したところを思い切り引っ掛かれた。頬がヒリヒリする
「うわ…綺麗な3本線だ。くく、皐月様似合〜う」
「な…なにするんですかもう! 体洗ってあげませんからね!」
「結構よ! お先に失礼するわね!」
そう言うと七海はドスドスと機嫌悪そうに丸い尻をふりながら去って行った
だから少しは隠せって!
「あ、まぁた顔赤くしてる」
「う…えと、次は紗理奈さんですね」
露骨な話題変換に紗理奈は苦笑して立ち上がる
「ああ、頼むよ。と言ってもヒロみたいなのは勘弁ね。普通に背中と頭だけでいい。前はさすがに恥ずかしいしね」
「な…」
やっぱり弘美がおかしいんじゃねぇか!















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