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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



これは俺のせいか!?


隣を見ると佐枝子がにっこり微笑んでくれた
「…えへへ」
知らずに笑みがもれる。俺は昨日とは違いのんびりした気分で授業に…
「―で、――に」
………気分はのんびりだろうとわかんねぇ! うわぁ…今更だって分かっても何か凹む。いや今更だ…あ〜、そか、以前は寝てたから己の学力低下にも気づかなかったのか……よし、寝るか
俺はピカピカの教科書をたてて頬杖をついて、右手はペンを持ちノートの上に転がして眠ることにした



「…?」
何だ? 後頭部に違和感が…。そっと振り向くと、左斜め後ろから悪魔の一人、紗理奈が俺に消しゴムを投げてきていた
何しやがるあの女…
「次はぁ、皐月さぁん」
「え、は?」
ちょいと俺の机に小さな紙が置かれた。開くとページと答えが書いてあった
目を上げるとおずおずと佐枝子が俺を見ていた。いつの間にか数学になっていた
俺は佐枝子にウインクしながら立ち上がり、柚子先生に向かい高らかに宣言する
「4です」
「はぁい、佐枝子さんよくできましたぁ。皐月さん、ずるしちゃあ駄目よ〜」
「……はい」
ばればれでした
席につくと佐枝子が小さな声で謝ってきたが、元はと言えば俺の頭が悪いのが原因なので気にするなとまたウインクをする
あとで一応紗理奈にも礼を言っておくか



「普通寝る? 君ってホントに女らしくないよね」
「ぐぐぐ…も、申し開きもございません」
礼を言う前に呆れられました
現在は食堂から昼食をとってきて淑女会室にいます。佐枝子も誘おうかと思ったが、すでに消えていた
他に友人もいるだろうし、たぶん『淑女会』と言うものには気後れしているのだろう。何処か一歩ひいたような態度のあるやつだからな
実態はコレなのになぁ…
「だいたいあなた…朝のあの態度はなにかしら?」
「えっと…あれは弘美さんに言ったんですよ?」
「関係ないわ。というかむしろヒロだからこそ関係があるのよ。同じ淑女会の仲間だもの」
「……私は…?」
「あら? ペットが何か言ったかしら?」
こいつ素で言いやがった。ああ…真のお嬢様ってきっと佐枝子だけか。あいつは天然記念物級の貴重なやつだったんだなきっと
「……何でもないッス」
「なにかしらその口調は」
「新手の敬語です」
「下手な嘘はやめたら? ただの簡略敬語じゃん」
余計なことを言うな紗理奈! つかお嬢様なら世間知らずなはずなのに(七海はそうだった)お前は妙に俗っぽいな
「そうなの?」
「会長は知らないだろうけど、体育会系が使ったりするんだ」
「へえ…聞いたことないわね」
「まあここではね。あたしはたまに父さんについて競技場に行くからさ」
「競技場…?」
「あたしの父さんは空手家なんだ。母さんは指揮者」
「…ずいぶんちぐはぐですね」
「だからじゃない」
「はあ…七海様は…お医者様でしたね」
「あら、知っていたの?」
「ゆ、有名ですから」
危ない。知ってるのは『私』でなく『俺』だった
なんかややこしいなぁ
「そういえば弘美さんは?」
さっきから黙って昼飯をつついてる弘美に話をふる
「パパが2年前に死んで財産食い潰してる」
「そうですか。知らずにすみません。ところでその沢庵、残すんですか?」
「え…まあ」
みんな定食だが、弘美のトレー上の料理は順調に減ってるのにおまけのようについている沢庵は残っている
「余ってるならくれます? 私沢庵好きなんですよ」
つか好き嫌いがあったら貧乏なんかやってらんねー…まぁ、嫌いなのもあるけどな
あ、でも母さんが作ったものならいけるんだぞ……誰に言い訳してんだか
「いいけど」
「ありがとうございまーす」
例によって大盛りだ。う〜ん、このぽりぽりした触感と鰹節風味が好きだ
「……」
「? っん。どうかしましたか? ってなに3人で私を見ますか。え? 何かついてます?」
「ないけど…あんた普通なんだ。いや、おかしい」
妙にもほどがある弘美に俺は眉を寄せる。3人は揃って俺に奇異の視線を向けている
「は?」
「普通は死んだ、なんて言われたらもっとすまなさそうにするもんでしょ」
「いや別に今時珍しい話じゃないでしょ。私だって父親は生まれる前に死んでますし」
「あら? でも確かプロフィールには弟が生まれたって…」
「さ、再婚です」
うお〜! なんて面倒なんだ! つか知ってたのかよ!
「ふぅん…ま、どうでもいいけど」
なら言うなよ! あ〜…だりぃ
「ごちそうさま。会長、今日は何か仕事あったっけ?」
「あなたたちがすることは特にないわ。いくらか書類を確認して提出するだけだから。だからこの子の躾にあてたじゃない」
「そっか」
…あれ? 何か普通に『躾』とか言われてますけどフォローは誰もなしか?
「皐月様ぁ」
「はい、何ですか?」
フォローか?
「オレンジジュース、食堂からもらってきて」
……先輩をパシリか?
「あ、あたしクッキー。いやぁ何か足りないと思ったら食後のデザートだね」
「じゃあ茶葉が減ってるから追加をお願い。銘柄はこれね」
渡されたのは見るからに上等そうな紅茶葉が入っていたらしい空の袋
「行くなんて言ってな―」
「早く! 皐月様はヒロのペットでしょ!」
「…はぁ、わかりましたよ」
何でこう我が侭かな。お前が男で俺が素なら気絶するまで殴ってるぞ
「5秒以内ね」
「無理に決まってんだろ」
「良いから行け!」
無茶を言う弘美に言い返すと怒鳴られた
「はいはい…わかりましたよお嬢様方。注文は3品でよろしかったですか?」
「皐月様!」
何なんだよったく



「ただいま」
「遅い!10分もかかってる!」
俺が出る前は片側のソファに3人並んでいたのに弘美が俺のいたソファに来ていた
お前は何処のスパルタ教師だ? ていうかなんでカリカリしてるんだよ
まぁ弘美がこっちにきたのはいい。あの並びだと面接を受けてる気分だからな
「いや普通往復もっと…30分くらいかかるよ。もしかして走った?」
紗理奈の問いにさりげなく七海が俺を睨む。冤罪だっての
「あ、いえ、階段を3段飛ばしにして早歩きしました」
さすがに優雅に歩いてる中を走る気はない
「へぇ…君って案外スポーツできる人?」
「い、いいえまさか。運動音痴もいいところですよ。あはは」
「あら? 書類では滝口り―」
「ほ、ほら七海様紅茶葉! とりあえず1キロもらってきましたよ」
「あ…ああ、ありがとう」
「クッキーはこのお皿借りますよ」
ティーポットなどが入っているのがガラス窓越しに見えたので棚を開けて皿をだす。むむ、開けると何やら色々あるな
「じゃああたしが紅茶いれるよ。ヒロは今日はオレンジだよね。皐月はいる?」
「あ…お願―」
「いらない」
頼もうとしたら弘美が断り、紗理奈が苦笑しながら了解する
「…私の意見は無視ですか」
「いいから、座りなさい」
「命令口調ですか」
「早くぅ!」
「はいはい。弘美さんは我が侭ですね」
皿を真ん中に置いて弘美のグラスにオレンジジュースを注ぐ。ついでに俺のも
「何よ。文句あるわけ?」
「別に。ま、弘美さんみたいな美人さんの言うことですし、聞きますよ。で? どうかしましたかお嬢様?」
「……あ、あんたにも多少は下僕の自覚があるみたいね」
「諦めただけですよ。私は懐が深いので大抵の我が侭は受けながすことにしたんです」
お前らの態度ないちいち怒ると疲れるし。てか下僕扱いにも嫌なことになれてきたしな
「我が侭ってなによ!」
「はいはい、オレンジジュースをどうぞ」
「…ん。ありが―」
「あ、クッキー美味しい」
何だこの味は? ハチミツとちょっと違うけど似てるような…
「ごっ」
さらにクッキーを取ろうとすると後頭部が殴られた。冷たい
え? 冷たい…? …っておま! コップで殴りやがったな! 中身が頭にぶちまけた状態じゃねぇか
信じらんねぇ。つか一瞬何が起こったかと思ったぜ。びしょ濡れで頭を押さえながら顔をあげる。うっとおしいオレンジ臭い前髪をかきあげる
「? ちょっ、何でまた私見られてるんですか。いい加減訴えますよ」
俺は中国から初めて来たパンダか。それともツチノコか
3人の視線に俺は睨みかえす。ぱらぱらとかきあげた前髪が落ちてくる。ん? 何かいつも以上に前髪が邪魔だな…
「あ、眼鏡が…」
また手で後ろにとかそうとして眼鏡がないことに気付いた
眼鏡(ダテ)してれば前髪が直接目にかからないから、普段はかきあげるほど邪魔に感じない。さっき殴られて落ちたか
「…皐月」
「はい?」
「あなた…そばかすが消えてるわよ」
「…え……」
顔をあげてぴかぴかの窓ガラスに自分を映す。ほんのちょっぴり、特大の今の眼鏡をかけたら隠せる鼻の横あたりの部分がオレンジジュースで溶けていた
「っ!」
衝撃で机に落ちた眼鏡を拾ってつけ、前髪を垂らしてうつ向く
すでに弘美への怒りでなく己の迂濶さにいらいらしている
「な、なんのことですか?」
「……」
当たり前だがそのくらいで疑惑の視線はなくならない。いやまぁ疑惑と言うか、むしろ紗理奈と弘美はぽかんとしてるが
「そ、そんなことより言うことがあるんじゃないですか? コップで人の頭を殴るなんて」
「まぁ…いい音がしたよね。たんこぶできた?」
頭をさする。出来てるっぽいがカツラ越しだから微妙な感じでどのくらいのデカさかは分からない
「大丈夫ですけど…と、とりあえず濡れたんで顔を洗ってきますね!」
「あ、ちょっと!」
とにかく問いつめられて眼鏡を外すとばれるので、逃げた
あーもう! これって俺のせいか!? つか2日目でバレんのかよ!















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