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あい・らぶ・まみぃ!
作:シロクロ



淑女会というもの


昼飯は購買でパンを買い(さすがお嬢様学園で購買は順番を待てば普通に買えた。あと学食を食べるのも普通に並んでいて戦場のごとき雰囲気は全くない)適応に食べ、午後の授業が始まった
隣をそっと見ると佐枝子と目があった。が、佐枝子はさっと下を向いた
……はぁ。授業は何言ってっか全然わかんねーし、佐枝子にはバレちまうし……マジでこんなとこ来なきゃ良かった
何で母さんはここを選んだんだろう?
「……はぁ」
「滝口さん、次のページを読んでください」
「……はぁ」
「滝口さん?」
「…あ…はい。えっと…すみません、ぼーっとしてました。何ページからですか?」
「……16ページです」
現代文なので何とか読めた。漢字なら得意だ。英語は日常会話ならできるが、読み書きは極端な分野しかできないから教科書なんてちんぷんかんぷんだ
う〜…しかし言語系は仕事上当然としても数学や化学や歴史なんかは中学レベル…いや、ずっとサボってたし小学生かも…
今更ながら、この計画は無謀だろ。本当に、今更過ぎだが



「皐月さぁん、じゃあ案内するので支度してね〜」
「は…はぁ」
ホームルームが終わると柚子先生がいきなりそう言ったので俺はよく分からないが、とりあえず教科書を置勉をするわけにはいかないので鞄につめた
「あの…何処へ?」
先生の後をついて行くが行き先が分からない。しかも無意味にまた注目されているし
何故だ? こんなに完璧な優等生スタイルは他にないだろう?
「そんなの決まってるじゃなぁい。部室よー」
「は?」
「だって『淑女会』に入るんでしょお?」
「……はい?」
しゅくじょかい…? 祝除海? …わ、わからん
別棟にまで連れて行かれ最上階の重厚なドアを先生がノックしてる間に上のプレートを見ると、『淑女会』と書いてあった
淑女…?
母さんの言葉を思い出してみる

『皐月ちゃんは立派な淑女になって、ついでに学園で可愛いお嫁さんを見つけてね』


『淑女になって』

……これかぁ! つか何だよ淑女会って! 部活なのか!?
「皐月さん? ほぉら、中に入ってぇ」
「…はい」
絶対に入部なんかするか!
俺は気合いを入れてから室内に入った3人の生徒が並んでいた……真ん中の七海だし!
3人はにっこり笑っていた。2人は兎も角七海は猫かぶってるな。会う度にそれを感じるからな
「ご足労いただきありがとうございます」
「みんなぁ、仲良くしてあげてねぇ。じゃああとは若い人どぅしってことでー」
先生は一切説明もなく出ていった。それとも俺がぼーっとしてる間に説明してたのか?
先生が出ていきドアが閉まると、3人はため息をついてから俺をじろじろ見始めた
って全員が猫被りかよ! お嬢様ってみんなこうなのか!?
「なんで学園長はこんな子をうちにいれるのかしら」
七海がそう言うとリボンの色から1年と分かる小さいのが頷く
「ですよねぇ、何のために推薦制にしたんだか」
「ま、人数少ないのは事実だしさ。雑用にしよっか。名前は…皐月だっけ」
そう言ったのは2年で…見た覚えがあるというか、同じクラスどころか俺の斜め後ろの席のやつじゃん
「そうねぇ。皐月…ね」
「じゃあ決まりぃ! 今日から皐月様はあたしの奴隷ね」
は? 奴隷!? てか様をつけて呼んで奴隷扱いするのがお嬢様なのか!?
「待った。あたしだって雑用が欲しいよ」
おいおい。どうなってんだよ。止めろよ唯一の3年
「喧嘩しないの」
七海がさすが3年と言うかここのまとめ役みたいだ
「この子はこれから我らが淑女会の共有ペッ…ごほん。共有財産とします」
ペット!? 今ペットっていいかけただろこいつ! しかも財産って言い直しても物扱いかよ!
「ねー、黙ってないで何か言ったらぁ?」
「じゃあ…淑女会って何ですか? つか巫山戯てんですか? 誰が奴隷だ。帰ります。さよなら」
やってられるか。なぁにが淑女だ。なりたくねーよ。七海には敬語で喋ってたしこの話し方で問題ねぇだろ
「え…?」
「はいぃ?」
「な…」
3人は驚いた顔で俺を見る。何だよ。かったりぃなぁ
「なるほど…見た目のいっそ目を見張るほどのダサさに反して反骨精神は満々なんだ。だから学園長、ここに寄越したのか」
目を見張るほどのダサさ……! それで注目されてたのか!? しまったぁ。完璧過ぎて最早こんなやついなかったか!
「ええ…これは、教育が必要なようね」
七海はめちゃめちゃ睨んでくる。うえ、やべぇ。大人しい優等生って皮をかぶっときゃ良かった
「つか生意気だしー、淑女会も知らないなんて…バカ?」
1年のくせにお前のが生意気だろちびっこめ
「うるさいですよちびっこ。とにかくお騒がせしてすみませんでした」
「ちび…っ、ムキー!」
だいたいいざという時の猫被りなら俺だってできるっての。佐枝子のこともあるし大変なのにやってられるか
「ちょっと待ちなさい。あなた、名前は?」
一礼してさっさと出ようとすると七海が俺の手を掴もうとしたのでとっさに俺から掴む
「人に名前を尋ねる時はご自分から名乗られたら如何です? 私はあなたがたの名前を知りません。最も、興味もありませんが」
「なっ!? あなたねぇ!」
「うるさいです。こっちは忙しいんです」
「……榊原七海よ」
七海は俺を睨み手を振り払いながらしぶしぶそう言った
「あたしは手塚 紗理奈(てづか さりな)だ。よろしくなー、さ・つ・き」
2年のそいつはフレンドリーな口調に反して俺を視線で射殺さんばかりに睨む。うぅ…こいつら強気に出たら反発するタイプか
「ヒロは弘美(ひろみ)だけど、よろしくしたくなぁい。七海様ぁ、こんなの追い出しましょうよ。おばあちゃんも何考えてんだか…」
自分自身を『ヒロ』と呼ぶちびっこはため息をつく
「おばあちゃん?」
「そーだよ。ヒロは、ここの学園長の孫なんだよ! だから生意気なあんたなんか退学にしちゃうんだから!」
あの上品な白鷺学園長の孫…? 可哀想に、遺伝子って時々残酷なことするよな
つか虎の威を普通に着るなガキ
「はいはい。で? 七海さんは何か用ですか?」
「ヒロが話してあげてるのに流すなー! ていうかさん付けなんて失れ―」
「ピーチクパーチク(さえず)らないでください」
はっはっは、慇懃無礼とは俺のためにある言葉さ
「………皐月、あなたを淑女会に入部することを許可するわ」
「嫌で―」
「拒否権はないわ。淑女会は部活だけど生徒会の代わりなの。あなたは名誉ある淑女会の一員に選ばれたのよ?」
「淑女会って名前がちょっと…そ、それに! 部活で生徒会の意味がわかりません! 私は転入してきたばかりなのにいきなり生徒会なんて…。それに普通は全校に呼びかけて投票とか…」
名前を否定すると睨まれたので慌てて別の理由を言う。我ながら即興にしてはちゃんと理由になっていると思う
「…わかりました。まずはあなたにこの学園での常識を教えてあげるわ」
「え、いらな―」
「必要よね?」
にっこりと、笑顔なのに迫力はもの凄かった
「……はい、よろしくお願いします」
自分の情けなさに脱帽だ
俺は強制的にソファに座らされ、3人は机を挟んだ向かいのソファに座る
ソファは家のお気に入り並に柔らかいのに居心地悪りぃ!
七海は腕組みして俺を睨んでるし、弘美は紅茶飲んで俺のこと無視だし、紗理奈なんか机に頬杖までついてるし……か、帰りたい…



2時間後、とっくに部活を終えて帰れと下校の鐘が頭上からなり響いたのにまだ俺はここ、淑女会室にいた
サイドの二人は俺を睨むのに飽きて帰りたがってるが、主格の七海が粘っているので退屈そうに菓子を食べている
気づけよ七海。お前以外解散したいんだよ
ちなみにこの2時間で俺はこの学園の歴史を知り伝統を知った
弘美が俺を様付けするのは同学年にはさん付け、年上に様付けがルールだからだそうだ
「そうじゃなきゃなんでヒロが皐月様なんて様付けしなきゃならないのよ」
とは弘美の弁だ。何て生意気なガキだ。それは3人ともだが…3人ともへたに顔が整ってるから何となくそれほどムカつかないんだよな
美人は得だなおい。くそぉ…まぁ母さんほどじゃねぇけどな
肝心の淑女会についても聞きすぎるほど聞いた
昔、この学園が出来て間もない頃の話だ。まだ学生に自由なんかなく、この学園にはとにかく学問に関係することしかない、まるで収容所のような体をしていた
だがある日、数人の生徒が立ち上がったのだ
「学園とは本来、清き乙女を正しき淑女に導く場。闇雲に知識を詰め込むだけでは、何の意味もありはしない」
後は言わなくても分かるだろ? 頭の堅い教師に反発した生徒たちが自由を求め署名運動など地道にこなし、さらに勉学にも励んだことにより自由と勉学の両立を示したのだ
最初は数少ない部活動の一つとして認識されていた生徒のための自治組織だったので、世に生徒会というものが広がってからもこの学園では変わらず『淑女会』という部活になっているが、内容は普通に生徒会だ
これが淑女会の由来だ。ちなみに名前は当時のスローガンが『文武両道の素晴らしき大和撫子である淑女を目指す』と言うたいへん古臭い(実際昔のことだ)もので、頭の堅い教師に対抗すべくつけた名前らしい
「す、素晴らしいですね七海様! 私目が覚めました!」
「本当!? 私も嬉しいわ」
「はい、それでお腹が減ったので帰ってもいいですか?」
「……コラァ! 全然分かってないじゃない! あなたはこの2時間私の話の何を聞いていたのかしら!!」
「かーえーりーたーいぃ!」
「子供じゃないんだからだだをこねないの!」
「……帰ります」
「だからまだ話は…」
「もう淑女会でも何でも入りますよ。雑用だってします……だから、今日は帰してください。一度に全部言われても、覚えられませんよ」
疲れたんだ。何もかもがありすぎて。もう、帰りたいんだ。母さんと爺ちゃんの元へ
俺が心底疲れた表情だからか七海はため息をついた
「…分かったわ。一日で全部をするのは無理よね。寮に帰りましょうか。明日からちゃんと淑女会にくるのよ? 大丈夫。私がちゃんとあなたを立派な淑女にしてみせるわ」
ああ…帰れないんだ
泣きたかった
七海は怒鳴ってすっきりして、二人はあんまりに怒られて憔悴する俺を哀れんだのか、話を聞いてるだけで疲れたのか、とにかく3人とも俺を非難してた様子はなく普通に並んで、無言で寮まで歩いた
気が重くて仕方なかった。明日は多分また淑女会に行くはめになるだろうし、唯一素でいられる佐枝子とはヤバい状態だ
何より母さんに会えない。あと爺ちゃんとも
………憂鬱だ。真面目に泣きたくなってきた
俺は隣の3人に気付かれないように鼻をすすった















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