ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
1、おためし屋
 「お腹すいた。会議はもう終わり」麻衣子はいらだっていた。
イベントの企画会社イベンタリストの社長岡本麻衣子32歳は5年前に社員3人と横浜で立ち上げたキャリアウーマンだ。2000年の仕事始めの1月5日、この日は朝10時から去年から企画していた次のイベントの会議を始めたが、4人の考え方が合わず夜の7時になってもまとまらなかった。
 「美味しいものでも食べないといいアイデアが浮かばないよ。今日はどこへ食べに行こうか。栄子、ネットで探して」社長が頼むと佐藤栄子23歳は、レストランの予約をインターネットで検索し始めた。
 「この前予約で一杯だったメルモに行きたいな」有名なカリスマシェフがいる店だ。三村幸恵26歳はどうしても行きたかった。
 「あの店は名前ばかりで美味しくないらしいよ」西尾弥生27歳はその店に以前行ったことがある友人からよくないうわさを聞いていた。
 「残念でした、メルモは今日も満席です」栄子が他の店を探そうとした。
 「どこでもいいからともかく駅に行くよ」何時までたっても行く店が決まらない様子にいらだった社長は、まず会社を出て店を探せばよいとみんなで会社を後にした。
 いつものように4人は会社のビルを出て近道の公園の中を歩いていた。すると、公園の出口の空地に屋台レストランに改造したキャンピングカーが停まっていた。
 「こんなところに屋台レストランが来たのは初めてだね。店の名前は『おためし屋』だって。看板に何か書いてあるよ」栄子が看板に近づき読み始めた。
 『おためし屋では、まずお客様におためしの1皿を食べてもらい、それをお客様が気に入れば5,000円のコース料理がはじまるシステムをとっております。もし、おためしの1皿をお客様が気に入らなければ、おためしの1皿は無料です』と書いてあった。
 「面白そうだね。入ってみようか」最初はみんな不安だったが、社長の一言で入り口のドアを開けた。店はカウンターのみで5人しか座れない。
 「いらっしゃいませ。どうぞお入りください」30代の男性が1人で料理を仕込んでいた。4人とも恐そうな人が出てこないかと心配していたが、優しそうな若い男性だったので安心した。
 「あのう、おためしの一皿を食べて気に入らなければ、本当にお金を払わないで帰ってもよろしいですか」4人みんなが聞きたかったことだが、社長が思い切って恐る恐る聞いてみた。
 「本当ですよ。安心して食べてみてください」ドクターシェフの言葉に、4人ともほっとした。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。