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後日談第4話 元町人Aは調査を始める

2021/03/30 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

2025/02/10 誤記を修正しました

「なるほど。風の神様と氷の女神様がそのようなことを……」


 教会であったことを報告すると、義父上は腕組みをして難しい顔になった。


「常に風が吹き常に氷のある場所、か。その条件に当てはまりそうな場所といえば東の山脈だな。エスト帝国との国境ではあるが、一部の高い山々には万年雪がある。だがその頂きに二柱の神を祀る神殿を建てるというのは無理があるな」

「それは、そうですね」


 義父上の話に俺は頷く。それに、わざわざあんな回りくどい言い方をしたということはもう少し別の場所を指しているような気がする。


「お父さま。山の頂にあるのは氷ではなく雪ではありませんか? それですと風の神様の仰った条件とは少し違う様に思います」

「む、それもそうだな」


 アナの指摘に対して義父上はそう同意すると益々難しい顔になった。


 俺としては雪も氷であることには変わりないと思うのだが、どうやら氷の聖女であるアナにとっては少し違うらしい。氷の女神様と話したアナがそう言うならきっとそうなのだろう。


「では、もっと北のほうではないかな?」


 今度は義兄上がそうアイデアを出す。


「うむ。氷と言えば北にあるが、セントラーレンどころかノルサーヌの領内にもそのような場所があるという話は聞いたことがないな。ノルサーヌの北の海のその先であればあり得るかもしれんが……」


 そこまで北に行くと北極海とか、そういったレベルになりそうだ。


 北極海があるのか、それとも陸地があるのかは分からない。だが、前世で言う北極海のような場所に浮かぶ島とかであれば条件は満たすかもしれない。


「少し、ノルサーヌの北まで確認しに行ってみましょうか?」

「いや、アレン。お前が行けば各国を刺激してしまうだろう。それにノルサーヌの北の海は遠く危険だ。単なる調査ごときでお前を危険に晒すわけにはいかん」

「わかりました」


 義父上の言うとおりだ。こればかりは仕方がない。

 アナを救うためにやったこととはいえ、俺は危険人物だ。スカイドラゴンの報復というプレッシャーはあるが、人為的な事故が起こる可能性だってあるだろう。


「そうだ。……ロー様に相談してみましょう」


 久しぶりだったので危うく変態と言いそうになったがなんとか堪えられた。


「なるほど。良いアイデアだ。ロー様はあの杖を保管してくださっているうえ、無私の大賢者様に連なるお方だ。何かご存じかも知れない」

「アレン、お父さま。飛竜の谷のメリッサも何か心当たりがあるかもしれません」

「おお。メリッサ殿もスカイドラゴンとなる前にその翼で各地を回ったのだったな。その際に何か見つけているかもしれんな」

「はい」


 ああ。そういえばそんなこともあった。もともとはエイミーたちのイベント回避が目的だったが、あいつらはレベル上げをサボっていたせいで普通のワイバーンにやられたんだっけか。


 だが結果的に二人は旅行を満喫したわけだし、終わり良ければ総て良しというやつだろう。


「それに飛竜の谷ならエルフの里とは違って我が国の領内だ。エルフの里の前に飛竜の谷へ向かうと良いだろう」

「わかりました。では雪が収まり次第、飛竜の谷に行ってこようと思います」

「ああ。そうだな」

「アナも来る?」

「はい。私も久しぶりに会いたいです」

「うん。じゃあ一緒に行こう」

「はい」


 こうして俺たちはまず、飛竜の谷に向かうこととなったのだった。


◆◇◆


 あれから三日後、俺たちは飛竜の谷へとやってきた。しっかりと雪の積もった神殿前の広場にブイトール改を着陸させるとシートベルトを外して降機すると、エスコートしてアナも降ろしてやる。


 すると、神殿の中から小さな白い塊が弾丸のような速さですっ飛んできた。


「きゅー」

「うわっ」


 俺は何とかその塊をキャッチして踏み留まるが、かなりの衝撃だった。


「シエルちゃん。大きくなったね」

「久しぶりですね。シエル」

「きゅー」


 さらにじゃれつこうとしてきていたシエルちゃんだったがアナの声を聞くと急に大人しくなり、トコトコとアナのところへ歩いていく。そして甘えるかのように彼女の手にすりすりと頬を擦りつけ始めた。


 俺にはタックルなのにアナにはあの態度とは。


「あら、アレンさん。それにアナちゃんも。いらっしゃい」


 神殿の中からメリッサちゃんが姿を現した。その後ろから少し遅れたジェローム君が慌ててこちらにやってくるのが見える。


「ほら、ジェリー。早くしなさい。アレンさんたちが来てるわよ!」

「ま、ま、まってよ……」


 なんともこの夫婦らしいやり取りしつつ、ジェローム君がどたどたと神殿から出てきた。


「い、い、いらっしゃい。ううっ。寒い」

「きゅー」


 アナに甘えていたシエルちゃんはジェローム君を見つけると弾丸のような速さで走っていくと思い切りジェローム君にタックルした。


「は、走っちゃダメだよ。転んだらいたいよ」

「きゅー」


 ジェローム君はそう言いながらもシエルちゃんにじゃれつかれている。あちこちを甘噛みされているが、あれは痛くないのだろうか。


「シエル!」


 メリッサちゃんの一言でシエルちゃんはピタリとじゃれつくのをやめ、すっかり大人しくなった。


 ああ、なるほど。完全に関係が把握できた。


「さ、入りましょ。外は寒いわ」

「ありがとう」


 こうして俺たちは神殿内へと向かうのであった。

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