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チートを作れるのはおれだけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

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01.チート奴隷、誕生

「な、なあ! おれ、じつはお前のことが――」
「ごめんねー、今日はサヨナラをいいに来たの」

「………………え?」
「あたしさ、アイホーンのパーティーに誘われたから、彼と一緒に行くことにしたんだ」
「そんな! 約束したじゃないか、十六歳になった一緒に旅に出て、世界中をまわった一緒にビッグになろうって」

「あははははは、そんなの本気にしてたの? やめてよー。ハードなんてアイホーンに男として全部負けてるじゃん」
「おとことして……ぜんぶ」

「あたし、奴隷の一人も持てないような甲斐性なしは趣味じゃないの。その点アイホーンはすごいよ、もう奴隷をもってるもん」
「………………」

「じゃあね、あたしもういくから。あっ、今度帰ってきたときにお土産くらい買ってくるから、期待しててね-」

 その日、おれは幼なじみに振られた。
 子供の頃から一緒に育った子を、隣村の金持ちイケメンにとられた。

 おれは決意した、甲斐性のある男になって、彼女を見返そうって。
 彼女が死ぬほど悔しがるくらい、甲斐性のある男になろうって。

 そう、思ったのだった。

     ☆

 16歳になった日、おれ、ハード・クワーティーは生まれた村を旅立った。

 村の古い風習に、男は奴隷をもってはじめて一人前だ、ってのがある。
 もう風化しきったような風習だから、もたなくても何もいわれない。

 でも、もつと一目おかれるのは今でも変わらない。
「奴隷持ちは男の甲斐性」なんて言葉があるくらいだ。
 だからおれは奴隷を持つ事を夢見てきた。

 16歳になったのをきっかけに、村を出て、三日かけて歩いて、プリブの街にきた。
 街に入って、何回も下見をした道を通って、ウェッティ奴隷商会にやってきた。

 街でも珍しい四階建ての立派な建物、中から立派な身なりをした男が出てくる。
 多分客なんだろうな。
 大きな建物に金持ちっぽい客。
 それだけでここがいかに儲かっているのかが分かる。

 深呼吸する。スーハースーハー。
 懐に忍ばせてる銀貨袋を確かめる、うんほぼ(、、)全財産なのがちゃんとある。

 それをしっかり抱きかかえて店の中に入った。
 店の中はすごく広いロビーのような作りで、中年男がおれを出迎えた。

「いらっしゃいませ」
「ど、奴隷下さい!」

 はじめてだからなんて言ったらいいのか分からなくて「野菜下さい」みたいなノリでいってしまった。
 うわー恥ずかしい、自分でもわかるくらい緊張してるよ恥ずかしいな!

「すみませんお客様、当店の奴隷はたった今売り切れたところでして」
「えええええ?」

 その恥ずかしさが一瞬でショッキングな事実に吹き飛ばされた。

「先ほど出て行かれたお客様をご覧になられましたか? あれはココラダ男爵閣下の使いの者でして、当店の奴隷全部と、これから仕入れる分100名を予約していったのです」
「ひゃ、100? じゃあしばらくは……」
「はい、仕入れたとしても、予約数に届くまでココダラ男爵閣下に優先的に納品しなければなりません」

 なんてこった。
 意気込んでやってきたのに、売り切れなんて。
 それも予約まで入れられてしまった後だなんて。
 こんなんじゃいつ自分の奴隷を手に入れられるかわからないぞ……。

「旦那様」
「うむ? どうした」

 店の奥から若い男が出てきて、最初の男に耳打ちした。
 耳打ちしながら、二人はおれをちらっと見た。

 二人がうなずき合って、若い男が店の奥にもどって、最初の男がニコニコしておれに言った。

「お客様、あなたは実に運がいい」
「へ?」
「実はたったいま、一人入荷してきました」
「え? でも予約が――」
「売れた直後に『もう一人だけ納品します』というのは男爵閣下に失礼なので。この子を数日間待たせて一緒に納品するしかありませんが、今なら――今だけ、お客様に特別にお渡し出来ます」
「と、特別に」

 店の奥からさっきの男がまた出てきた。
 台車を押して、寝てるんだか気を失ってるんだかの女の子を運んできた。

 身長は140センチくらい、ちょっと小柄だ。
 この辺には珍しい黒髪のロングヘアー、ちっちゃなお姫様みたいだ。
 台車の上で気を失ったように寝てるけど、寝顔も結構可愛い。

「いかがでしょう、この子で」
「い、いくらですか?」
「いくらお持ちで?」
「えっと、リユ銀貨19枚とイバ銅貨がいっぱい」

 それを聞いた瞬間男は眉をしかめた。
 え? だめなのか?
 やっぱりこの程度の金じゃ奴隷を買うのに足りないのか?
 でもこれが全財産だからなんとかして売ってもらわないと。

「これ――」
「いいでしょう、それでお売りしましょう」

 値切りをしようと思ったけど、先にうってくれるっていわれた。

「本当に!?」
「もちろんですとも」

 男は頷いた。

「へへ、うれない黒髪を押しつけられるんだ、やすいもん――痛っ」

 若い男が何かを言って男に肘鉄を食らわされた。
 何を言ったのか聞こえなかった、奴隷が手に入るかもってなってものすごく興奮してるから。

「では代金をいただきます」
「あっ、どうぞっ」
「はい、確かに。ではこちらが奴隷の指輪です。これをお客様が奴隷の左手の薬指にはめてあげれば契約が完成します。奴隷の指輪はご存じで?」
「ああ」

 マジックアイテムの一つ、ご主人様が奴隷の左手の薬指につけると契約が完了して、その奴隷は絶対服従の魔法がかけられる。
 これがそうか……。

「今やるんですか?」
「今の方がよろしいでしょう。奴隷の指輪をはめた後は絶対服従の力が働きますが、奴隷になりたくなくて指輪そのものを拒む不届き者もいますからな」
「それにさっさとはめないと返品されちまいます――痛っ」

 若い男がまた何故か肘鉄を食らった。
 でもそうだよな、起きてる時に奴隷にするって言ったら抵抗されるかも。
 好き好んで奴隷になりたがる子ってあんまりいないもんな。
 店の人の言うとおり、寝てる時に指輪をはめて絶対服従させてしまった方がいい。

 おれは指輪を受け取って、躊躇なく女の子の左手薬指にはめた。
 指輪が一瞬まばゆく光って、部屋の中に光が充満した 。

 収まった後、店の人がいった。

「これでこの子はお客さんのものです。台車も差し上げますので、どうぞこのままお連れ下さい」
「本当に? ありがとう!」

 いい人だ。っていうかいい店だ。

 おれは店の人のサービスでくれた台車ごと彼女を連れて外に出た。
 まずは落ち着ける場所を探そう。

     ☆

「処分できてよかったですね、ウェッティさん」
「まったくだ。おい、あれをつれて来たヤツは今後一切敷居をまたがせるな。もちろん買い取りも一切無しだ。まったく、よりにもよって『黒髪』を連れてくるなんて」
「あれですか、やっぱり伝説のチキュウ人かもしれないから、ですか」

「伝説のチキュウ人……数百年に一人現われる、神から授かったちーとで世界を席巻する完璧なる人種――あんなのはただの伝説にすぎんよ。そもそも『ちーと』ってなんだ? 言葉の意味すら分からない」

「じゃあ?」
「黒髪は汚く見えるから客受けが悪いのだよ。お前も黒髪をただでやるって言われたらもらうか?」
「勘弁してもらいたいものですね」
「つまりだ、あんなのを取り扱ったらウェッティ商会の格が落ちる」
「本当、処分できてよかったですね」

「ああ、田舎から出てきたばかりの小僧に押しつけられてよかったよ。二束三文だがただ処分しても金がかかるからな」
「ま、田舎のイモガキに黒髪、お似合いってところですね」

     ☆

 買ったばかりの奴隷を台車で運んで、街外れにやってきた。

 街の中心は二階建てとか三階建ての立派な建物が多かったけど、この辺に来ると平屋ばっかりになって、人気もほとんどない。

 奴隷の子を人気のないところに連れ込んでから、台車から降ろしてあげた。

 降ろした時にちょっとぶつけてしまって、その衝撃で彼女は目を覚ました。

「いたた……こ、ここは?」
「ここはプリブの街」
「ぷりぶ……? はっ」
「キミ……じゃなくてお前の名前は?」

 村にいるときのくせがでかかった。
 呼び方を変える、キミじゃご主人様の威厳が出ないからな。

「沙也香……だけど。プリブって、わたし、いつの間に外国に来ちゃったの?」

 女の子はまわりを不安そうに見回す。

 どうやら彼女はサヤカって名前で、違う国から売られてきたみたいだ。
 うん、黒い髪の子なんて、この辺じゃみないからな。
 そりゃ別の国から連れてこられたんだろ。

「まっ、どこの国から来たのかなんてどうでもいいことだよ。キミは……じゃなくて、お前はこれからおれの奴隷として一生過ごすんだから」
「奴隷? それってどういう意味ですか?」

 キョトンと小首を傾げるサヤカ。
 なんだ? 奴隷も分からないのか?

 おれはサヤカの左手をとった。

「この指輪が見えるだろ?」
「指輪……あっ」
「これが奴隷の証だ。キミ――お前はおれの奴隷として生涯仕えるんだ」
「……」
「おいどうした」

 サヤカが指輪をみてぼうっとしてるので、強めに呼びかけた。

「ごめんなさい。これ……あなたがつけてくれたんですか」
「当然だろ、それがご主人様ってものだからな」
「この指に?」
「指輪は左手の薬指、あたりまえだろ?」

 そんな事もわからないのか。

「あなたがつけてくれた……指輪、薬指……ドキドキ……」

 サヤカは指輪を見つめてぶつぶつ言ったかと思えば、いきなり顔を赤らめてしまった。
 なんだ? なんで奴隷の証をみて顔を赤らめるんだ?

 まあいい、それよりもご主人様はまず奴隷が何を出来るのかを把握できなきゃ話にならない。

「サヤカ」
「は、はい!」

 ビクン、って体を強ばらせるサヤカ。
 おれは「ご主人様口調」を強く意識して、普段と違う喋り方で聞いた。

「ずばり聞こう、お前は何ができる」
「えっと……家事とか、一通り。すっごいちっちゃいときにピアノとバイオリンのお稽古をさせてもらってました……」
「ぴあの? ばいおりん? なんだそれは」

 稽古ってことは、なんかのマイナーな武術か?
 って事はこの子、強いのか。

 うん、強いのはいい。
 おれは強くないから、奴隷が強くておれを守れるのなら都合がいい。

「あっ」
「どうした」
「なんか……さっきの夢を想い出しました」
「夢?」
「ちーと? をあげるから頑張って、って言われたような」
「ちーと? なんだそれは」

 サヤカは首をふった。本人もよく分からないらしい。

 まっ、そんな事はどうでもいいか。
 とりあえずおれは奴隷を手に入れた。

 ぴあの? と、ばいおりん? と、ちーと?
 それが出来る黒髪の奴隷を手に入れた。

     ☆

 念願の奴隷を手に入れたおれ。
 これで少しは甲斐性があがったか。

 これなら、今度彼女とあったときに見返す事ができるかな。

「あたしも奴隷にして!」

 ってなるかな。
 ……いや、そんなんじゃだめだ、そんなんじゃ足りない。

「あたしも奴隷にして」の後にこれをやれるくらいになりたい。

「お前なんかじゃおれの奴隷にふさわしくない」

 初めての奴隷を手に入れて、おれは、目的を自覚したのだった。
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■レベル1だけどユニークスキルで最強です

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ブラック企業で過労死した佐藤亮太は異世界に転移して、レベルが1に固定される不遇を背負わされてしまう。
レベルは上がらない一方で、モンスターからその世界に存在しないはずのチートアイテムをドロップするという、彼だけのユニークスキルをもっていた。
それを知った彼は手始めに能力アップアイテムでステータスMAXになって、更に自分にしか使えない武器やアイテムの数々を揃えていった結果、レベル1のまま能力も装備も最強になって、好きに生きられる第二の人生をはじめられることになった。
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