あなたがいなくなっても春は来ます。夏も秋も冬も。
一体いくつの季節が過ぎたでしょう。私の心にはずっとあなたがいます。季節は移り代わろうとも、私の心は変わりません。
コチ…コチ…
静かな室内に時計の秒針の音がやけに大きく響く。暗い室内、サスケはサクラの肩に寄りかかり規則正しい寝息を立てている。サクラは眠い目を擦りながらサスケの寝顔をじっと見つめていた。
「サスケ君…」
呼び掛けても返事はない。サスケの手を取るとそっと握り締める。
「どこにも行かないで…私を一人にしないで…」
「あぁ…ずっと側にいる…」
きつく握り返された手。見ればサスケはいつの間にか起きていて、サクラを見ていた。サクラはその言葉を聞いて安心したように微笑みを浮かべ、目を綴じる。
「約束よ…」
あなたがどこかへ行ってしまいそうで怖い。出来る事ならずっとこのまま起きてあなたを見ていたい。どこへも行けないように。
ふと崩れ落ちた体に目覚めるサクラ。辺りはまだ暗い。
そしているはずのサスケの姿がない事に我が目を疑う。
「サスケ君…!」
裸足のまま外へ飛び出したサクラ。小石等が足の裏に傷を作るが、構わず走り続けた。前方にサスケの姿を見付け、立ち止まる。
「約束…約束したじゃない!」
肩で息をするサクラを振り返るサスケの表情はとても寂しそうで、サクラは胸を締め付けられる。
「私を一人にしないって言ったじゃない…」
近付きサスケの手を取ると握り締める。だが今度は握り返される事なく離されていく。手を伸ばしてみても離れていく。
「ごめんな…」
あなたの最後の笑顔が頭から離れません。どれだけ時が過ぎようと。
私は空に向かって手を伸ばします。いつかあなたがこの手を握り返してくれるように。
また一つ季節が過ぎようとしています。季節と共にこの気持ちも過ぎていってくれたらどんなに楽でしょう。
私はあなたを思い続けます。果たされる事のなかった約束を胸に抱いて。
fin |