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第15話

※一部シモネタ入ります。

『タマ!!!』


後ろめたさを振り払うように私とタマが無言で睨み合う。

私の怒鳴り声にもタマは涼しい顔だ。むしろなんで俺が怒られるんだよみたいな顔をしてる。

駄目だコイツは危険だ。自分が面白ければとことんやるタイプだ。なまじそんな好き勝手が出来ちゃう実力があるから始末に負えない。

かすり傷への報復としては被害がでかすぎるだろう?これで私が骨でも折ったり、深い傷なんて出来たらと思うと・・・ああ髪が抜けそうだ。

この年でハゲになったら神子って労災おりるかなぁ?


間をおいたのが良かったのか落ち着いたらしいフォルクマールが羽をトントン叩く。

私はソーッと彼を地面へ立たせた。


『・・・すまない。助かった』


彼もわかったんだ。タマに歯向かう危険性を。

自分だけに被害が及ぶならフォルクマールは戦うことを選ぶだろうが、タマなら連帯責任で国一つ潰しそうだ。

きっとそれもタマなら可能。


『いや、こっちこそタマが止められなくてごめんなさい』


私はこめかみをそっと押さえた。

コイツはあれだ。神は神でも疫病神。その辺歩いてるだけでも災難を招く。どこの世界に顔出しても嫌われる訳だ。


『茉莉、また不敬なこと考えてるでしょ?』


私だっていい加減このやり取りは飽きたよ。誰のせいだ誰の。

先に気を落ち着かせることに成功したフォルクマールがタマに問う。


『・・・神の、罰については、よくわかりました。神竜がヴェラオに危害を加えてないということも。3つ目の事についてお伺いしたいのですか?』

『なんだっけー?僕忘れちゃったなぁー』


棒読みだ。コイツやっぱりフォルクマールに対して何かあるのか?さっきから露骨に嫌な態度だ。

対するフォルクマールも段々タマを敬う姿勢が薄れてきている。無理もない。

一生に一度会えるかどうかもわからない神に会えたと思ったらこんなので、むしろ人に迷惑しかもたらさないなんて。そんな神をどう敬えというのか。


『名前呼べとか言ってたやつだよ。タマ、ルースって名前だったの?』


それなら先に教えてくれればよかったのに。そしたらタマなんて恥ずかしい名前にならずに済んだのになぁ。

私は口を挟んだ。自分で付けた事はこの際棚に上げておく。タマは『ああ、そうだったそうだった』なんてじいさんみたいな口調で手を叩いている。


『王子さっき僕に箱庭へ入る許可云々言ってたよねぇ?なんで??』

『ですから、民たちの生活が困窮し混乱をきたすと先程・・『だからなんで?』』


うわ、意地悪。タマはフォルクマールの言葉を聞く気がないのか途中で遮る。

『何をおっしゃりたいのですか?』とタマの態度にムッとしたフォルクマールも臨戦態勢だ。


だがタマは。


『だからなんで僕に言うの?ルースに言ってよね?』とサラリとかわしながら、その辺の石を拾ってオリちゃんを埋めた地面の辺りに投げつけている。

そんなに気に入らないんだ、オリちゃん・・・。


じゃなく!!


『貴方様はルース神ではないのですか?!』『他にもここに神様いるの?!』


私達は同時に叫んだ。

ここの世界に他にも神様が住んでいるなら、この疫病神をどうにかしてくれるかもしれない。私を人間に戻して元の世界に返してくれるかもしれないじゃないか!俄然私のテンションは上がる。

フォルクマールは信じられなくて大きな声を出したみたいだけどね?

そういえば至高の神だとか唯一の神だとかさっき言ってなかったっけ?2人も神がいるとは思わなかったのかぁ。納得。

日本なんて八百万の神なんて信仰もあるのに一人ぼっちの神様か。どんな神様だろう。タマには似てないよね?あんなの2人いたら神様の一番偉い人、胃潰瘍で吐血しまくりよ?


『僕はルースだって名乗ったこと一度もないけど~?勝手に勘違いしてたのはそっち。僕は茉莉だけの神だし~』


タマは面倒そうに言うと私に纏わりついてきた。ハッキリ言ってウザイけれど止めた方が後で面倒になるので放っておく。

『フェリルースに他の神がいようとは・・・』

信じられないけれど実際ここに神と神竜が揃っているから信じざるを得ない。

フォルクマールにとっては既成概念の破壊みたいな感じかな?


『タマどこにいるのか知ってるの?そのルースっていう神様』

『・・・なんで聞くの?』

『いや、ここの世界でお世話になってる訳だし、会えるならご挨拶しようかと思って』


嘘だ。開口一番お家に帰してって言うつもりだ。タマに気取られてはいけない。私はニコニコ無邪気な笑みを浮かべた。

だが不審な空気でも察したのかタマはツンと顎を上げると『絶対教えない。茉莉、浮気する気だしー』と人聞き悪いことを言う。


『ちょっと!何馬鹿なこと言ってんの?どっかのバカと同じこと私がする訳ないじゃん!』

『どうだか。あんなに熱く僕と誓ったのに(修行するって)』

『あれは!アンタが勝手にっ!(契約したんでしょ!)』

『僕に縋ってあんなに泣いたのに(もう帰してって)』

『あれはっ!痛かったからっ!!(泣いたのはデコ叩きのせいだ!)』

『また~素直じゃないな。泣いたのヤル前じゃない?その前から大きな声だったよね?お願いお願いってさ?』

『そこまで強請ってない!』


『お二方とも、続きは二人だけの時にお願いできないだろうか?』


気づけば延々と続く言い合いに、フォルクマールがストップをかけた。

だが、彼の表情はなんとも居心地の悪そうな顔だ。色白の耳がわずかに赤く染まっている。

へ?と先程までの会話を思い出し理由に気づく。


『ち、違うから!!誤解っ!!タマと何かあるわけないから!!』


フォルクマール違う!私と奴なんてありえないから!そんな白けた目で私まで見ないでくれぇ!!

背中を向けて震えているタマ。笑うのを堪えているんだろう。この野郎!気づいててやったな?!

私はそれこそ必死で事実無根であることをフォルクマールに話す。彼はまだ疑ってるようにも見える。

そもそも不気味な発光体とドデカイ竜がどうまぐわうというのだ!って、くわあぁぁ!まぐわうとか東スポかよ!オヤジか私は!!畜生、なんで私がこんな目にっ。

半ばパニックになりながら、『やってません』『やりようがありません』終いにはやけくそ気味に『タマとヤルくらいなら自分でしますっ!』とまで叫んでしまってひたすら墓穴を掘りまくる。

私の鬼気迫る様子に『も、もう十分わかった。お前と神は何もないんだよな』とドン引き状態のフォルクマール。オワッタ。

タマはすでに地面に突っ伏し酸欠状態になるほど大笑いしていた。

それでも私で存分に遊んだせいか、タマの機嫌は急に良くなった。納得いかないけど、人生はそんなものだと思う異界の秋。字余り。





さてどこまで話したんだっけ?

そうそうルース神のことでした。


結局タマは何度聞いてもルース神の居場所はスルー。教える気はサラサラないようだ。本当に知ってるかどうかもハッキリしないわけだけど。

フォルクマールは、かなり粘ったけど最後には説得に力尽きた。お疲れさん。

うーん、また違う方法を考えよう。タマさえいなけりゃこっちのもの。ルース神ってのがいるとわかっただけでも希望が持てる。居場所、自力で探してやろうじゃないの。


『とりあえず、フォルクマール達とお互い誤解してたのはわかったんだけど、じゃあ一体誰が人間を襲っているの?』


話は振り出しに戻った。消えたヴェラオ、見せしめになったハンター達。

フォルクマールも表情を引き締める。


『その事なんだが、実は俺たちもここにたどり着く前に襲撃を受けた』

『は?それホント?!』

『ああ、一昨夜ここから2カスタ離れた場所で我々は野営してたんだが、夜半突然姿の見えない敵が襲ってきた。ドラゴンアームズ、ああドラゴン用の武器だが、持ってない者が次々と倒されていき、我々だけがかろうじて残ったんだ。俺の目でも捉えられなかったが何か大きなエネルギーの集合体のように感じた。ああ、勘のいいものが剣を振るったときに剣戟の音もしたか。どんな魔法の加護を使っているのかさっぱりわからない』


何でもないように話してるけど、それってかなり危なかったんじゃ?!見えない敵か、気になるな。

彼は眉間にシワを寄せ悔しそうな渋い顔をする。


『襲撃者は優勢であったにもかかわらず、我らの大部分を掃討すると不意に消えた。ありえないことだ。何らかの意図があったに違いない。我らは死亡者はいないが傷を負った者が多くてな?大部分をまだその野営地に待機させているのだ。姿を隠せる竜など聞いたことがないが、ドラゴンアームズを避けて攻撃してきたのを見ると、何か関係あるのかどうか。俺たちはそれもお前がやったものだと思っていた。すまない。どうも相手は”竜”を意識して強調しようとしてるように思えてならないな』


私達は顔を見合わせて考え込んだ。

私が傍にいる場での襲撃か・・・。私と彼らを戦わせたかったのか?

でも私はウェルカムで討伐隊を待ち構えてたから、別に工作しなくても対峙するのは決まってたようなものだし。むしろ多数のまま私のところに向かわせたほうが良い気もするし。


『タマ、なんか知らないの?』


そういえばあの夜タマがやって来た。なんか見てないかな?

タマは地面に寝転がっていたが、『知ってるよー?僕だもん』なんて欠伸をしながら言う。


・・・またなのか、コノヤロウ・・・


すでに2人は振り回されすぎて声も出ない。

理由はもうなんとなくわかるから聞かない。時間の無駄。

どうせなんで黙ってた!って言っても、聞かなかったから~なんて言うんだ、コイツ。


『ドラゴン武器の人襲わなかったのはなんでよ?』

『君なら大丈夫だから。相手が大勢だとウザイだけだけど、ある程度抵抗手段ないともっとつまらないだろう?』


フォルクマールは地面に両手両膝を付いていた。『神よ・・・』多分ルース神なんだろうな、この場合の神って。

あの時なんでタマが機嫌よく意味不明だったのかわかった。フォルクマール達で憂さ晴らししてたんだ。

なぜだ、なぜ私の攻撃はコイツに効かないんだ。手の平に光の塊を集め始める。効かなくて業腹だが何もしないではいられない。

そんな手の平でタマを叩き潰そうとしたときに、タマは言葉を続けた。



『というのは半分。もう半分は万が一本物の襲撃者が来たときの反撃手段を残すため』



ほえ?私は手の平に光の塊を乗せたままポカーンとしてしまった。

上目遣いで見上げてくるタマ。あ。”俺”モードだ。

タマとの付き合いも長くなってくると、ある程度お互いのことがわかってくる。

私知ってるんだ。タマが”俺”って言う時って素に近いんだよね?いつもは僕とか言って人を小バカに見下ろしてるけど、俺の時のタマは本音の事が多いように思う。もっといろんな顔を隠してるのかもしれないけど、私はこの”俺”モードが苦手だ。


『俺の茉莉を討伐に来たなんぞ腹が立つ。だけど、そんな人間でも死ねばお前は悲しむだろ?俺がお前を本気で悲しませることするわけないだろうが?向こうにも釘は刺してるけど、絶対じゃない。武器を使える者を残したのはその可能性にかけた保険だ』


信用ぐらいしろ、馬鹿者って言うタマ。

そんなのひねくれ過ぎてわからないっちゅーんだよ、馬鹿者。


手の平の塊を消す。

あー、やっぱりまた負けた。もう私なんて負け負け。俺モードのタマにちっとも勝てる気がしない。

タマの掌で私は転がされてる。きっとフォルクマールもラジェスもオリちゃんもそれ以外のみんなも。

私は姿勢を正す。タマの変化に驚いていたフォルクマールも自然と姿勢を正した。


『向こうへの対抗手段の武器なのね?相手は”竜”??』

『さぁな、そんなことは俺は言わない。この世界の者が探すべきことにまで首を突っ込んでいられるか。俺はお前の神であってこの世界の神じゃない』


バッサリと言い切るタマ。


『俺たちはいわばこの世界の居候みたいなもんだ。俺たちを当てにするな。コンラドゥスの王子よ。この世界の人間は赤子ではあるまい?』


挑発するようなタマの態度にフォルクマールはニヤリと笑った。あ。フォルクマールも雰囲気が変わった。


『もちろんだ。異界の神よ。我らに道を示されたことに感謝しよう』


そう言って笑い合う男2人。

・・・男ってわっかんないなぁ。自分や国を攻撃した疫病神タマとなんで笑い合えるんだ??

なんか通じるものでもあったのかしら。やだなぁ、疎外感。



『ああ、言っておくけど僕はここにずっと居るつもりはない。一応言っておくけど僕や茉莉を祀ろうとか面倒なことは考えないでね?』


タマが思いついたように言う。フォルクマールはすぐに大笑いしてまた『勿論』って答えた。

祀られるのは私もイヤダ。万が一タマと並んだ像なんてあってみろ。破壊せずにいられる自信がない。


そう呟いたら2人にまた笑われた。


だからどうしてそんなに息が合っちゃったのよ?!

いつも通りのタマの笑顔と、フォルクマールのどこかスッキリとした笑顔に私は首を捻るばかりであった。

茉莉にはさっぱりわからなかったフォルクマールの心情ですが、色々想像していただけると私も嬉しいです。いつか書けるといいなぁ。

シモネタありきたりですが、やっぱ書きたいんだこういうの!と開き直ってみる。

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