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ほのか 作者:環 円

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18/19

異世界の扉

異世界へ旅立つときに訪れる白の域。そこには世界を見つめ続ける、護り人が居りました。
 世界に触れるのは禁止目録タブーだった。
 役目はただ見守ること、ただそれだけだ。どんな理不尽が世界に起こったとしても、手を出してはいけない。
 出せば世界は、壊れてしまう。
 命が生まれ消えてゆく。消える。消されてゆく。
 小さな光が点り、そしてゆっくりと大きく輝く。光はその固体の命だ。出来るだけ長ければよい、と思う。
 しかし世界の状況によってそれらは変わった。

 その存在は世界が確立されたその時に立会い、見守ってきた。
 比べるべき他の何かは無い。だがしかし、早すぎる。そう思った。
 直感とも言える何か、にその存在はため息をつく。

 「やあ、元気にしているかい?」

 不意に聞こえた声。
 ふと視線を向ければ、見知った存在がそこに立っていた。
 どうやら鍵を閉め忘れていたらしい。

 まあまあだ。
 その存在は答えた。

 「に、してはしかめっ面だけど」

 放っておいて欲しい。
 そう願い言葉にするが、見知った存在はにこやかに笑んだままだ。

 「ふうん、君のところも同じことが起きている様だね」

 勝手に覗き込んでおきながら、何を。
 含みを持たせた言い方に、ため息を返答とする。
 何か良からぬこと、を考えているのだろう。
 あの扉をくくる前はそうだった。なので今もそうなのだろう。

 「文明を持つ、すばらしいことだね。だがしかし、高度な技術を得ると途端に精神がも弱になる」
 一つ目も二つ目も三つ目も。そして今見守っている四つ目も。
 同じ結末を辿ろうとしている。

 「というわけで、お願いがあるんだ」

 「・・・職務に抵触するような事、はしたくないんだがな」

 「大丈夫。理には触れない。約束しよう我が親友よ」

 だれが親友だ。暑苦しい、近寄るな。
 攻防がしばらく続く。が、なぜか気になった。
 自信に満ちた言い様に、話だけは聞こう、そう続きを促す。

 「なに、魂を貸して欲しいんだ」

 「・・・は?」

 意味が分からなかった。

 「簡単な話さ。我が親友が管理している世界の魂をひとつ、僕の世界に貸して欲しい」

 何を馬鹿なことを。
 一笑する。

 「何かが足りないんだ。僕はずっと考えてきた」
 世界がどうして崩れてしまうのか、を。
 手を出さずとも世界は崩れる。ならば一度手を出してみようか。そう考えたのだという。
 己の罷免は覚悟の上だとも語った。

 命は強い。
 だがしかし、いつの間にか輝きを鈍らせ、いつしか灰色の世界が出来上がる。
 その中でも逞しく輝き続ける白もあった。
 しかし多くの灰の中にあり続けると、白も灰へと変わってゆく。

 「我が友の世界はまだ賑やかだ」

 魂をひとつ、貸して欲しい。

 「無理だ。光を取り上げるわけにはいかない。見護りの役目に反する」
 「分かっている。だがともしび終わったものならどうだ?」

 灯終わったもの。
 それは一時的に権限から外れる。
 光り輝くものたちは強靭だ。ちょっとやそっとではその魂は傷つかない。しかし何度も繰り返し生きること、を繰り返せばやはり、淀みがたまる。そういったとき、見護るもの、がそっとその魂を掬い上げ、世界の隣にある穏やかな空間で休ませるのだ。

 「新しい因子は世界を変革させる」
 それは見護りの域を超えてしまうのではないだろうか。
 しかし魂の移動はしてみる価値はある。そう思った。
 見続ける世界は愛おしい。崩れるのが定めだとしても、出来るだけ長く息が続くほうがいい。


 「分かった」
 「我が親友よ! そう言ってくれると思っていたよ!」

 引っ付くな、鬱陶しい。
 「勘違いするな。見護るものとして、では無く魂たちの保護者としてだな・・・」
 「言い訳はいいさ。感謝するよ」

 どことなしか安心したような表情をし、笑みを浮かべる。
 だがしかし。
 「今の生を全うし、修復に値する症状が出た後、の話だ」

 無理矢理休息の地へと移動させるのは職分を逸脱する。
 それに、だ。
 巡りを邪魔したくは無い。

 「それは分かってるよ。時間、なんて僕たちにとっては意味の無いものだしね」


 △▽△▽△▽△▽


 白の空間に私は立っていた。
 思いもよらぬ事故、が起きたのだ。
 彼を残し、彼の家族は静養の地へ自動的に送られた。それほど切迫した状態に陥ったということだ。
 何があったのか、詳しいことは分からない。
 しかし、彼だけがここに取り残される結果となった。

 「・・・ここは」

 瞼を開いた彼、は当然の疑問を口にする。
 彼が存在していた世界では、この空間を天国、極楽浄土、白の地、などと呼ぶのだという。

 「ここは世界の果て、だ」
 「あんたは・・・」

 彼の中にひとつの言葉が浮かび上がる。
 だが私自身はそれではない。ただの見守り役だった。

 「オレ、死んだの?」
 「そうだ」

 私は事実だけを知らせる。
 「そっか。って納得すると思うなよ!」
 「すまない」

 私は彼の勢いに思わず謝罪を口にした。

 「で、カミサマがオレに何の用でしょうかね」

 彼の中では既に私は、それに置き換えられているようだった。
 ここで違うと伝えても意味の無い話ではある。

 「君に願いがあるのだ」
 私は事実だけを述べる。
 世界を渡って欲しいことを。そこで新たな生を得て欲しいと。

 「じゃあオレのお願いも聞いてくれるんだよな、カミサマ」
 「叶えられるものであれば」

 「じゃあ質問、なんでオレなわけ?」
 「君が応えたからだ」
 私の答えが抽象的だったようだ。私は説明の範囲を広げる。

 「君が空を見上げ、ここではないどこかへ旅立ちたいと願ったからだ」

 彼は首を傾げた。
 そして思い当たる節を見つけたのだろう。

 「だ、あれ、まさか」
 そのまさかだ。

 「だって、あれ夢なんじゃ・・・」

 夢などではない。
 現にこうして、選定された魂である彼がここにあるのだから。

 「君の魂が、この世界でもっとも自由だった。理の中にありながら、その範囲を飛び出しても尚、魂の輝きが朽ちなかった」
 「だからってオレの家族まで巻き込むなよ!」
 「・・・申し訳ない」

 出来事に関しては私は触れられない。
 だが私が見守る世界での出来事はすべて、私に責がある。

 「で、オレの行く場所ってどこだよ」

 しばらくの沈黙のあと、彼はそう言葉した。
 自称私の親友曰く、楽しいところ、とのことだ。が、そのままを彼に伝えても分からないだろう。
 「世界はたゆたう水盤だ。君が居た世界とは全く違う場所、と理解してもらいたい」

 彼が望んだことは3つあった。
 記憶を固定すること。必ず家族を幸せにすること。そして最後の願いを言う前に、
 「なあ、魔王とかいるのかな。勇者とかハーレムとか、言葉とかスキルとか・・・」

 よく分からないが、彼の中では重大な問題のようだ。
 「オレさ、約束してたんだ。明後日、彼女の誕生日でさ・・・」

 彼の表情が歪む。
 「大事無い」
 私が世界に接するのを禁じられてはいるが、今回は特別に彼が大切にしていた光たちへ感謝を贈るつもりだった。
 彼をここではない世界へ旅立たせるのだ。魂は寄り添う。すれ違いながら、出会い輝く。そのひとつが欠ければ、大きな変化が起こる可能性もあった。だから彼が戻ってくるまで、彼の魂と触れ合った光へ謝罪を送らねばならない。
 ある意味賭けでもあった。自称親友はそのきっかけを持ってきた。そして私はその賭けに乗ったのだ。
 彼の感情は様々な色を撒き散らしていた。

 「ホント、頼むな」

 己の願いばかりかと思いきや、自分以外の誰かを想う願いばかりに、私は私自身の選択が間違いではなかったと確信を持てた。彼の責は私の責であり、彼の魂が無事戻ってくることが出来るように、祝福を与える。
 特別な力などではない。魂がもともと持つ、強さだ。
 そして彼は三つ目の願いを口にした。

 「君の還りを待っている」

 私は彼を見送る。
 彼の背は薄ぼんやりとした霧に包まれ消えてゆく。
 自称親友よ。彼を頼む。
 出来るならばよからぬ企みに、乗せないでやってくれ。
 私は水盤の上に手をかざす。

 「いとしきモノたちよ。どうかすべての存在に幸あれ」と。
続きませんw
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