現在世界は二つに分かれている。
片方は貴族。
もう片方は農民に。
それはつまり、支配する者と支配される者。
貴族は多くの農民を従え、膨大な富と権力のもと、ひたすら贅沢を尽くしていた。
例外なく全ての貴族が、である。
農民を思いやる気持ちなど微塵もなく、厳しい圧政に重税。
歯向かう者は老若男女問わず処刑にされる。
農民は黙って耐えるしかなかった。
しかし戦争は決して起きない。
貴族が僅かな土地を手に入れるためだけに、金を遣うのを惜しんだためだった。
また、その金を生み出す農民を浪費するのも同じく惜しい。
なので、状況は変わらず農民はいつまでも自分達を支配する貴族に苦しめられ続けた。
けれど、ある時転機が訪れる。
我慢の限界がきた農民が必ず反乱を起こすのである。
貴族はあっと言う間もなく追い詰められ、皆の前で血祭りにあげられた。
貴族は助けてくれと泣いて懇願するが、感情の爆発した農民がそれを聞き入れるわけもない。
貴族は拷問を受け、殺されてしまう。
それは見るのも躊躇われる程の残酷さであった。
全ての貴族が皆この終わり方をする。
農民はと言うと、しばらく誰にも支配されない生活を送るが、再び他からきた貴族が農民を支配し始める。
これが現世の一定の周期で繰り返されるパターンである。
ちなみに私は、そんな世の中をいつも高みから見下ろしている。
私は生まれ変わる魂に最初の選択肢を与える者だ。
その選択肢とは果たして
「貴族に生まれるか、農民に生まれるか」
である。
ちなみに魂はその瞬間までは生きていた頃の事を覚えている。
自分で言うのもなんだか、私はこの選択程無意味な事はない。
何故なら皆選ぶ方が決まっているからだ。
貴族だった者は貴族に生まれる事を。
農民だった者は農民に生まれる事を。
私の知っている限りでは例外はない。
貴族だった者は、生きていた頃味わった快楽が忘れられず、また農民になると他人に支配される屈辱もあるため、終わりはどうあれ再び貴族になる事を望む。
一方農民だった者も、一度はあの苦しい日々に戻るかどうか迷いを見せるが、貴族になってあんな惨めで恐ろしい死に方をするくらいならと、結局農民になる事を望む。
この上なく無意味だ。
だが、だからといってこの選択を無くされてしまうと、私が困る。
私は最初の選択を与える者という仕事があるからこんなに冷静に観察ができるのだ。
仕事が無くなってしまえば私はたちまち下の世界に落とされあの有象無象の一員になってしまうだろう。
しかも選択する事は許されない。
まぁ、もし選択できてもあの二択からはどちらも選ぶ気にはなれないのだが。
つまり私がどれだけ無意味だと感じていようが、私にはその無意味な物が必要なのである。
こうやって考えてみると、案外世の中に無意味な物は少ないのかもしれない。
けれども、無意味な物で成り立っている世界も確かにあるのだ。
今私が存在している世界のように。
無意味な物で成り立っている世界は、最終的にはその世界自体も無意味なのだろう。
私にはそんな世界が私の為に必要なのだから、私が一番無意味な存在なのではないかという疑問は。
近頃私を悩ます原因となっているのは言うまでもない。 |