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掌編小説集8 (351話~400話)

本当の性格

作者: 蹴沢缶九郎

「お前のお母さんって優しいから羨ましいよ」


学校の帰り道、友人にそう言われた。先日、我が家に遊びにやってきた友人は、母の応対にえらく感動したのだそうだ。友人は続ける。


「それに比べ、うちの母ちゃんは勉強しろってうるさいし…。ああ、お前ん家のお母さんと交換してもらいたいよ…」


「…別に変わらないと思うけどね」


僕は適当に返事をしておいた。

それから程なくして友人と別れ、帰宅した僕は自宅のドアを開ける。すると、僕の帰宅を察したのであろう母の怒声が部屋の奥から聞こえた。


「あんた、遅いわよ!! ちゃんと酒は買ってきたんだろうね!?」


「…買ってこないよ。子供の僕が、お酒を買えるわけないだろ」


「何だって!? この役立たずが!!」


罵声と共に、母は手元にあったテレビのリモコンを投げ、そのリモコンは勢いよく僕の額に直撃した。僕は、痛さにうずくまる。

友人の言っていた、「優しい母親像」とはあまりにもかけ離れた母親の姿がそこにはあった。だが、僕は母を恨んだりはしない。

いわゆる、イタコである母は、死者の霊を降霊させる霊媒師を生業としていた。しかし、イタコとしては、まだ未熟だった母は、自身に降霊させた酒乱の霊を身体から追い出せずにいたのだ。

いつか、酒乱の霊を母の身体から除霊し、優しい本当の母が戻ってくるその時まで、実年齢九十八歳の霊である僕は、この少年の身体を借りて、もう少し小学生の生活を楽しもうと思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のオチでうーんと唸りました。これは優しさと切なさの混じるじーんと来る話だったのですね。 [一言] 主人公の実年齢は98歳で、とすると彼の母親はもっと年上だと思い、話中の小学生の少年の母…
[良い点] 「僕」の献身、というより愛情。このように思う子もなかなかいません。 [一言] 蹴沢缶九郎さん、はじめまして。「つぶらやこーら」と申します。今回の作品を拝読しました。 元の少年がやや不憫な気…
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