「ちょっと!それあたしの!」
部屋に入るなり声を上げる私。
「いいじゃない。アンタがつけるよりアタシの方が似合うでしょ。」
そう言って鏡越しに私を見上げるのは原田淳。
れっきとした男だ。
―― いや、のハズだった。
「確かに似合う…ってそういう問題じゃな〜い!」
持って来たカップを机にドンッと置き、
「あのねぇ、これでも年頃の娘の部屋なんだから勝手に物色しないで!」
その手から自分のリップを奪い返す。
「あっ、もう…乱暴なんだから。」
唇を尖らせる姿は悔しいことに女のあたしより可愛い。
―― 出逢いはネットの恋愛相談。
同い年の女性だと思ってたのに、
待ち合わせに現れたのは少し線は細いが、紛れも無い男。
唖然とする私を前に
「あたしがジュン。よろしくね♪」
と、キレイな笑顔とお姉ぇ言葉でのたまった。
一瞬でもカッコイイと思った自分に眩暈がした。
でも、ホントいい奴。気が合うし、今では一番の親友・・・のハズだ。
「どうしたの?」
ボンヤリしていた私を、呆れたように覗き込むジュン。
ドキッ
不意打ちの距離に心臓が跳ねる。
ヤバイヤバイ…。
最近よく惑わされる。
これも暫らくラブと離れた生活してる所為かしら?
「何赤くなってんの?さてはアタシにトキメいたんでしょ。」
ニヤリと笑うジュン。
「な、何いってんだかっ!」
慌ててカップを奪って口をつける。
熱い…。
猫舌にはまだ早過ぎた。
舌がヒリヒリする。
「アハハ、バカねぇ。冗談よ。」
笑いながら優しく頬を摘むジュン。
黙り込む私。
スキカモシレナイ
そう言ったら貴方はどうする?
ジッとジュンの顔を見る。
きっと呆気ないほど簡単にこの関係は終わるだろう。
ジャァ、イッソ終ワラセル?
不意に重なる唇
――気が付いたときには離れていた。
「アンタと居ると、男で居るのも悪くないって思うわ。」
いつものお姉ぇ言葉。
だけど、
パチンッ
その時、
頭の奥で音が響いた。
そして私は、それを聴きながら、
何かが終わってしまったような、
何かが新しく始まるような…
そんな気がした。
相変わらず舌がヒリヒリする。
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