第一章:月明かりの下で
クレイズは皇女に恋をしていた。
夜中の王宮のテラスで、月を眺めていた皇女がクレイズに視線を移す。
「こんな夜更けに貴方を呼び出して、ごめんなさい。睡眠中だったかしら?」
「いいえ、まだ起きておりました。気になさらないで下さい」
「そう、良かった…」
…本当は熟睡していたが、ティアラ様に呼び出されるなら、何時だっていい…
「実は、貴方にお願いがあるの…聞いてくれる?」
「なんなりと…」
クレイズの言葉を聞いて皇女は、月明かりの下で微笑んだ。
クレイズはその微笑に目を奪われていた。
だが、次の瞬間、クレイズは凍りつく。
「…私を、王宮から連れ出してほしいの…」
「!?」
「お願いです。クレイズ…」
「…何故、ですか?よければ理由をお聞かせ下さい…」
「……………………」
皇女の瞳が涙で揺れる。
皇女は何も言わず、ただ、クレイズを見つめていた。
月光の中で流す涙は、キラキラと輝きながら落ちていく。
…とても、綺麗だった…
「……わかりました。ですが少々時間がかかります」
「ありがとう。クレイズ…」
皇女は泣きながら、騎士に微笑んだ。
クロスザイード王国の黒騎士、クレイズ・キルロックは、皇女専属の護衛騎士でもある。
皇女の名は、ティアラ・ファンレイン。
王国にいる、7人の皇女の中の1人だった。
「出来れば、10日後の夜に城を出たいのです」
「10日後に…」
「無理…ですか…?」
皇女は悲しげに問い掛ける。
「…お任せ下さい。では、10日後の夜に…」
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