「うおりゃぁぁぁーーー!」
掛け声と共に気合の入った美羽のドロップキックが優衣に炸裂。優衣はそのまま倒されて美羽は華麗に着地する。
そして美羽はまだ倒れている優衣にの元へより、胸襟をつかんで無理やり立たせる。
「あんた、今何してた?」
凄い剣幕で問いただしてくる美羽を目の前にしたらもう笑うしかないのか、優衣は笑って誤魔化そうとする。
はぁ〜、まったくいつもいつもこいつは。
「優衣、あなた自分の職業を言ってごらん」
「ほえ?」
「ほえ、じゃなくって」
「え〜と、一応、巫女さん」
「一応じゃなくても、あなたは巫女なの」
「あははっ、そうだね」
「っで、今あなたがやるべき仕事は?」
「……境内の掃除」
「そうね。じゃあ、なんで境内で近所の子供たちと野球をやってるのかな? しかも箒をバットにして」
またしても笑って誤魔化そうとする優衣に対して美羽は大きな溜息を付いた。
まあ、美羽の気持ちも分からなくも無い。なにせ優衣は仕事をサボって近所の子供たち野球をやっていたのだから。
こっちは一生懸命に仕事してるのにこいつは!
「じゃ、そんなワケで、このお姉ちゃんには仕事が残ってるから、あなた達は他の場所で遊びなさい」
え〜っ、と不満を垂らす子供達だが、美羽は優衣を前に突き出し「こうなりたい?」と脅迫染みた言葉を口にする。
思わずひるむ子供達。けどそれもしかたない、今の優衣は先程の攻撃で背中に優衣の両足の跡がはっきりと残っており、しかも倒れた時に転がったので全身が汚れている。
「じゃあ、美羽姉ちゃん。またね〜」
「って、ちょっと待って、そんなにあっさりと見捨てないで!」
あっさりと引き下がる子供達にまだ泣きつこうとする優衣を引きずり、美羽は別の場所へと移動する。
「まったく、ちょっとぐらいいいじゃん。あの子達がまた遊ぼうって来たんだから」
優衣は巫女装束に付いた土埃を払いながら、美羽に文句言い出す。
「っで、自分の仕事を放り出して遊んでたわけだ」
「放り出してないよ。ちょっとした休憩だよ」
「あんたの休憩は箒で野球をすることか」
「まあ、気分転換ということで」
「いや、もういいから素直に謝れ」
「すいませんでしたー!」
あっさりと白旗を上げる優衣。そんな優衣を見て美羽は「うんうん」と勝ち誇ったように首を縦に振る。
「はい、素直でよろしい」
「でもさ、純粋な子供達に遊ぼうって見つめられると断れないじゃん」
「その前に己の本分をわきまえろ」
「いや、違うよ、そうじゃないよ。なんて言うか、私は子供達の純粋な目に弱いんだよ。まるでこう、捨てられてる子犬が拾ってくれないかな、拾ってくれないかなって目で訴えているようで」
「あの子供達はそこまでピンチなのか?」
「うっ、いや、あの…」
「なあ、いいかげん、自分の非を認めないか」
「いや〜、分かってるんだけどね。いざ誘われると断れなくて」
「本当に誘惑に弱いな、あんたは」
「あははっ」
やっぱり最後は笑って誤魔化す優衣を美羽は呆れた目線で見ていた。
はぁ、やっぱり最後はこれか、こいつは。
「はいはい、じゃあそろそろ仕事に戻りましょう」
「そうだね。じゃあ、境内の掃除を…」
「ちょっと待て、境内の掃除は私がやる。だからあんたは社務所を手伝え」
「え〜、なんで?」
社務所の仕事がよっぽど不満なのか優衣は不満を漏らす。
そんなに社務所の仕事が嫌なのか、こいつは。
「なんで社務所が嫌なのよ?」
「だって、伝票整理とかの単純作業ってつまんないし、眠くなるじゃん」
「一応言っておくが、あんたはこの岩城神社の巫女として雇われており、神社の仕事をする義務があるんだぞ」
「だから境内の掃除を…」
「あんたはさっき境内の掃除をサボってただろ」
「今度はちゃんとやるよ」
「つい先程までサボってた奴の言葉を信じろと?」
「ぐっ!」
さすがにそれを言われては言い返す言葉が無いのか、優衣は泣きそうな表情を浮かべて美羽に訴える。
「はいはい、じゃあ私は境内の掃除をしとくから、あんたもちゃんと社務所にいきなさいよ」
優衣の訴えを美羽はあっさりとスルー、箒をかっさらいそのまま境内へと向かっていった。
ぐっ、けど自業自得な分だけに何も言えない自分がちょっと悔しい。
結局、優衣はとぼとぼ社務所へと向かった。
それから数時間後、境内の掃除を全て終えた美羽は社務所へと戻った。
「境内の掃除、終わりました」
社務所に入った美羽を岩城神社の神主、大輝が「お疲れ様」と迎え入れる。
「美羽、お帰り〜」
美羽はそのまま優衣のところまで行き、ちゃんと仕事をしているのかを確かめる。
「おっ、今度はちゃんと仕事をしてるみたいね」
「う〜、さっきのはたまたま誘われただけだよ」
文句を言いながらも優衣の手は止まらず、そのまま作業を続けている。
「けどさ、こうやってると思うんだけど」
「何よ?」
「なんでこういう単純作業って眠くなるんだろうね。さっきからもの凄い睡魔が」
「睡魔って、おまっ、ちゃんと仕事してるんだろうな?」
「う〜ん、多分大丈夫」
「多分じゃなくて、ちゃんとやれよ」
「あははっ」
はい、いつもどおり最後は笑って誤魔化しました。
「けど、私なんて単純作業ほど集中できるけどね」
「やっぱり、人によって違うのかな?」
「その前にお前のやる気が問題なんじゃないか」
「ふっふっふっ、美羽さん、そいつはちょっと違いますよ」
「じゃあ、何なのよ?」
「私の場合は集中しすぎて途中で精神力が尽きるんですよ」
「結局ダメじゃない、それ」
「けど、何かやりきったって思わない?」
「思わないわよ!」
「というか二人ともそろそろ仕事に戻ってくれない」
『はい、すいません』
大輝の注意に二人は声をそろえて誤ると、それぞれ自分の仕事へと戻っていった。
結局、こんな感じで岩城神社の毎日は過ぎていくのだった。
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