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自殺はダメヨマン
作:灯宮義流


「自殺はダメヨー!」
 と、高らかに叫びながららベランダの柵に足をかけている私の前に、全身タイツのヘルメット男が現れた。単刀直入に言ってキモい。
 あろうことかこの男のせいで一瞬自殺する気が失せてきた。でも、本当に止めたくはならない。こんな奴のせいで止めることになった日には、日本人の恥だわ。
 私は男を無視して柵を越えた。当然その変態は私に訴えかけてくる。
「自殺は駄目だ、トシ子!」
「違います」
「とみ子!」
「クイズじゃありません。それにさっきから一文字もあってません」
「ジェニファー!」
「あ、わかった! みたいな言い方しないでください。私が欧米人種に見えますか?」
 変態は悩む。
「……トシヨ?」
「あなたの過去に何があったんですか。『と』から離れてください」
「……か弱き少女よ!」
 あ、逃げた。なんだこいつ。
「何故自殺をする?」
「私は中途半端なの、いつもいつでも。だから男はみんな浮気相手のほうが可愛いって言ってそっちに流れてく。こんな私が半端扱いな世界が嫌になったの」
 何故か私はそいつに自分の自殺動機を話していた。 それを聞いた奴は、うんうんと頷いた。
「自殺はな、痛いんだぞ」
「お前さ、何のためにさっきの質問した」
「人の話を聞いてくれ」
「私と無理心中されたいのか、コラ」
「自殺は君が考えている以上に痛いんだぞ。わかってないね?」
「したことないので、そんなことわからない。でもこの高さなら一発で死ねるでしょう?」
「甘いな、こんな高さでは、地面に当たっただけでそう簡単に死ねるものではないんだよ」
 いきなり真面目な話になって、私はゾッとした。 いや、そんな弱気なことで自殺なんて出来ない。出来るわけがない。
「そんなことわかってる。私にはその覚悟がある!」
「わかっていないな。痛みを知っている人間はそんなこと言わないぞ」
 そう言うと、タイツ男は、私を押し退けて柵にあがった。
「よく見ているんだよ、とう!」
「あっ」
 男は、この私を差し置いて飛び降りた。まだ柵を越えようとしただけの私を差し置いて。全くと言って躊躇なく。
 りんごと水風船がいくつか同時に落ちてはじけたような、嫌な音がして、私は目を逸らした。そして、急いで地上まで駆け降りた。
 自分が自殺を考えていたことなんて半分忘れていたらしい。いや、彼を見て怖くなったのかもしれない。
 地上では、紅色に染まったタイツを着た男が倒れていた。何故か誇らしげだ。
 すぐに私は駆け寄った。変態と罵った相手が、今はとても輝いて見えた。「これでわかったろ、自殺はこんなに痛いんだ……」
「喋らないで! ああ、なんでこんなことを!」
「俺は自殺を止める男さ、どんな手を使っても自殺を……」
「だからって、自分が死んだら本末転倒でしょう?!」
 私がそう指摘したら、そいつは苦しそうに呼吸しながらも、腹が立つほど不敵にニヤリと笑った。ヘルメットのおかげで、その嫌らしさはさらに際立つ。
「だから、君が次の“自殺はダメヨマン”だ」
「私は女だからマンは無理じゃない!」
「そうか、言われてみればそうだね。うっかりさっぱりだ」
 冗談めいたつもりだろうか。笑えないうえにつまらない。
「俺の意志を継いでくれれば、名前なんて些細な問題ではない……お願いできるかな?」
「……」
 私は悩んだけれど、答えは決まっていた。決められていた。
「やってあげるよ。変態でも、自殺の痛みを教えてくれた。もう私は自殺しない。自殺を止めるんだ」
「そうか、これで安心だ……がくっ」
「へんたーーーい!」
 私は、彼の第一印象で呼んだ。人が、違う意図で野次馬にやってきた。



  数日後
「俺は死ぬんだ、死なせてくれ! みんなくるなあああ!」
「まてええぇぇぇい!」
 自殺を志す少年の前に、理解しがたいコスチュームを着た女が現れた。
 女は、少年を押し退けるとこう言った。
「あなた、自殺がどれだけ痛いか知らないでしょ?」
「や、やったことないんだから、知るわけないだろ!」
「やっぱりね、なら私がどれだけ痛いか、見せてあげる!」



「最近、我が国で小中学生の自殺がやたら増えましたな」
「少子化もここまできたか、先が思いやられるなあ」
「日本もいよいよ終わりが見えてきたのか……おっと時間だ」
 ピッ。
「お、何か見たい番組でも……あ、これ最近人気の」
「年甲斐もなく、何故かハマってしまったんだよ。“自殺すんなマン”」


初の完全携帯書き。今作者は個人的鍛練のため、パソコンのない環境。すなわち半田舎で合宿してます。とにかくいろいろ本を読んだりしていますが、なんとなく携帯使って書いてみましたが、携帯で書くって効率悪いですね。出来る限り読書に専念したいと思います。













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