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長編ははじめてだったりします。
遅筆わりに早く書けたと思いますが、人よりは遅いのです。
第一幕 異変起 〜Natural phenomenon〜
 
 
 
 
 
 雑木が生い茂る山の上空を人間が空を飛ぶ。
 
 肩から二の腕を露出した特徴的な紅白の巫女装束に身を包み、赤い大きなリボンで黒髪を束ね、颯爽と空を飛ぶのは博麗霊夢である。
 
「やっぱり、天気のいい日は気持ちがいいわ」
 
 春の空気が頬を撫でる、麓までは歩いて行けるのだが、単純に距離があるので、飛んだ方が早い……。
 というのもあるが、途中で妖怪に出会うのは面倒だからと言いのが多分にある。
 
 博麗神社の主な収入は妖怪退治の報酬だったりする。
 だからと言って闇雲に妖怪を退治しても報酬がある訳ではないし、そもそも妖怪退治が好きな訳でもない。 
 あくまで博麗神社の巫女としての仕事であり、けして趣味ではない。

 出来れば遭遇したくないので、普通の人間同様、妖怪との遭遇は極力避ける為に妖怪がよく出没する山道や森の中を最短最速の空路を使うようにしている。
 
 そんな事情はあるにしろ空の散歩が好きというのが多分にある、そんな理由で霊夢は空を飛んで村へ行くのだ。 
 
 
 
「魔理沙と射命丸にはザルがいっぱいになるまでタラの芽を採ってこさせるように言ったし、今日の花見は楽しくなりそうね、ついでは輝夜に竹の子でも貰いにいこうかしら、花見、楽しみだわ~」
  
 季節を感じる為に花を愛でる、季節の移り変わりを縁側でお茶を飲みながら、のんびり眺める、そんな時間が霊夢はとても好きだった。
 勿論、季節を感じるには、旬を食べる事はとても大切である。
 
 そしてお茶の代わりは酒でも良い、それが霊夢の持論である。
 
 
 ゆっくり飛んでも四半時(約30分)もすれば麓の村が見えてくる……。
 
 
 
ハズだった……。
 
 
 
「あ……れ……?」
 
 村があるはずの場所にあったのは春の陽射しを受けキラキラと輝く、青い水面をたたえた大きな湖だった。
 それも巨大なと表現するに値する程大きかった、何せ対岸が見えない。
 
 家の屋根だろうか、水面から小島のようにポツポツと出ている藁葺きや瓦らしきものが見える、何とも奇妙な光景だった。
 
 
 
「異変ね!」
 
 
 
 調べてみよう、先ずそれをしない事には始まらない、そうと決めると行動は早い、霊夢はスピードを上げ、村だった場所へと向かった。
 
 
 
 
―――――――――――――
 
 
 
 
 
「村が完全に沈んでるわね……」
 
 
 日の光を反射させキラキラと光る水面が広がっている、水底には屋根が並んでおり、背の高い木や矢倉だけが水面から頭をだしている、よく見れば『やきとり』と書かれた看板がプカプカ浮いてたりする、塩はどうやら買えそうにない。
 
 つい最近まで人が住んでいた場所が水の底というのは不気味なものだった。
 
「村の人はどうしたのかしら……」
 
 少なくとも人の気配はないし、この場で気配のない人間は土左衛門だろう。
 出来れば第一発見者にはなりたくないので、見つからない方がいいな~などと思う。
 
 
 
「お前は……博麗霊夢か」
 
 
 
 声のする方に振り向くと、裾に穴の開いた変なデザインの青いワンピース、青い宝石のような膝まで届く長髪に弁髪帽のような帽子を被った女が水面に立っていた。
 
「あっ! 慧音じゃない、何やってんのよ! ちゃんと村を守りなさいよ」
 
 
 
「開口一番その言い種か……、相変わらず失礼なヤツだ、まぁ……、村は守れなかったが、村人は無事だ、安全な場所に隠した」
 
 心底呆れたようにため息を吐き、上空の霊夢を睨み付けた
霊夢も負けじと睨み返す、慧音にはまったく睨まれる筋合いはない。
 この女とまともに付き合っても疲れるだけだ、そう思うと慧音は先に口を開く事にした。
 
 
 
「ところで霊夢、何か心当たりはないか?」
 
「犯人は現場に戻ってくるものよ! だから慧音! あんたが犯人よ」
 
 
 この女は、なんでこんなに人の話を聞かないのだろう……、慧音は頭痛を覚え、こめかみを押さえる。
 
 
「異変が起これば、見掛けた妖怪を片っ端から退治するのは止めろ、後、現場はここじゃない、この湖の中心は霧の湖の方だ、それと私は半分妖怪だが人間側の妖怪だ、少しは考えろ」

「え!? 霧の湖まで続いてるの!? じゃあ、またレミリアがやったの?」

「そんな訳あるか……、水を嫌う吸血鬼がわざわざ水を増やすはずないだろ……、今頃、魔法使いに結界を張らせ、館に引き込もってるはずだ」
 
「じゃあ、誰よ!」
 
 何故、怒鳴られないといけないのだろうか、あまりにも理不尽と言えよう。
 慧音は心底理解出来なかったが、ぐっと堪える事にする。
 
 自分は村の人間を守らないといけない、妹紅は水とは相性が悪いし、妹紅は人目にふれさせたくないから、任せきりには出来ないので、自分で異変を解決とはいかない……、ならば、霊夢に任せるのが得策だろう。
 
「生憎、それは私にも分からん、ただ霧の湖が怪しいのは確かだ、この水の出所は霧の湖だ、間違いない」
 
「そうね~……霧の湖ね~……、まぁ、場所が分かれば簡単ね、サクサク異変を解決するわよ、ありがと、行ってくるわ」 
 そう言いと霊夢はさっさと飛び立とうとする。
 
「霊夢」
 
 慧音はそれを引き留めた。
 
「何よ?」
 
 まだ何かあるの? そう言いたげな顔で霊夢は振り返った。
 
「……頼んだぞ」
 
「頼まれるまでもないわ」
 
 そう言いと踵を返し、何の未練もないかのように、霧の湖の方角へ飛び立っていった……。
 
 そんな霊夢の姿を見ていると慧音は不安な気持ちになる。
 
 ただ、それは異変の事ではない。
 霊夢という人間は人間にしては飛び抜けて強い、幻想郷全体から見ても上位の部類に入る。
 
レミリア・スカーレットによる『紅霧異変』
 
西行寺幽々子による『春雪異変』
 
蓬莱山輝夜、八意永琳らによる 『永夜異変』

 
伊吹萃香による『三日置きの百鬼夜行』
 
比那名居 天子による『異常気象』

 小さなものも色々あるが主だったものだけで、これだけの異変を霊夢は解決している。
 
 慧音自身、二度にわたって霊夢と戦い、敗れている、余談だが、大妖怪八雲紫のサポートがあったとはいえ、満月の夜に負けるとは思っていなかった。
 
 そんな慧音だからこそ、霊夢の実力に疑いを持つ要素などないし、慧音が思う不安はそんな事ではない。
 
 
 博麗霊夢は何故あんなに、異変の解決に駆り立てられるのか?
 
 人の行動原理というのは単純だ、人は自分が望む事しかしない。
 
 例え過酷な労働であろうと、人はそれをしようと望まない限り、手足が動く事はない。
 
 そして、その動く為のエネルギーが心だ。
 
親子関係なら愛
復讐なら恨み
 
 そういった心のエネルギーで人は動き出す。
 だが、霊夢からはそのエネルギーが感じられない。
 霊夢に聞けば「私は巫女よ、異変を解決するのは当たり前よ」と答える。
 ただ、そこからはプロ意識や職業意識のような、ある種の義務感は感じられない。
 
 慧音はそれが不気味でならなかった、熱い鉄に触れれば、意識をしなくとも手を引っ込めるように、何かの衝動に突き動かされるように博麗霊夢は異変を解決する。
 そう思えてならなくて、慧音はとても不安だった。
 
 だが、慧音には守るべき村の人、そして誰よりも大切な守るべき友、妹紅がいる。
 特に親しい訳でもない霊夢を優先させる事は出来ない。
 
 霊夢の事は後ろ髪を引かれるところはあったが、慧音には慧音が決めた自分の義務がある。
 
 
 私はこんなところでじっとはしていられない。
 
 妹紅は腕っぷしは強いが心まで強い訳じゃない。
 死なないせいで、人に不気味がられ、疎まれ、弾圧された
それでも妹紅は人を恨めない、人を恋しがる。
 
 どんな強かろうと、どんな身体になろう、彼女は人だ。
 
 人は孤独に耐えられない。
 
 妹紅とはじめて会った満月の夜、雨の竹林の中、隠れるように膝を抱えて縮こまる妹紅の怯えるような、それでも人が恋しくてたまならい、そう訴えかけるような瞳、その瞳は今でも忘れられない。
 この人間を私は守ろう、私は自分にそう誓った。
 
 私は誓いを果たさなければいけない。
 
 米粒のように小さくなった霊夢の後ろ姿を目で追う、そして、決意した様に守るべき者達の元へと飛び立っていった。
 
 
 
 
 
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
そして申し訳ございません。
序幕の後書きで霊夢の術の正体が云々言って結局書いてないです。
話が中途半端になりそうになったので、ずらしちゃいました。

そんな訳で今回は慧音登場です。
慧音さん長々と語ったわりに今後の出番の予定はなかったりします。
実際どうなるかわかりませんが…

ちなみに
次は霧の湖ですが
突然現れた湖沿いに湖に行かせるか
ショートカットして魔法の森の上空を行かせるか迷ってます。
前者ならチルノや美鈴や咲夜が出るかも知れませんし
後者ならアリスや霖之助、魔理沙が出てくるかも知れない

さて…どれにしましょうか…


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