いつもどおりの二次創作、普通の魔法使い霧雨魔理沙と忘れ去られた海神様、竜王の娘、綿津見三幡の対決です。
綿津見三幡良かったら覚えていただければ幸いです。
第十八幕 黒い巨星と青い海 ~Shooting star~
《スペルカードルール》
幻想郷において揉め事や紛争を解決する為の手段の一つであり、命名決闘法とも言われる。
命名しておいた名前の意味を体現した技をいくつか考えておき、それぞれの技名を契約書形式で記した契約書を任意の枚数所持、ただしそれら契約書に形式は無くスペルカードとは言うが必ずしもカードの様式を取る必要は無い。
対決の際には、決闘開始前に決闘内での使用回数を提示し体力が尽きるかすべての技が相手に攻略された場合は負けとなる。
たとえ余力が残っていても提示した全枚数を攻略されたら、負けを認めなくてはならない。
技の美しさにもウェイトがおかれていて、精神的な勝負という面がある。
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竜王の娘、綿津見三幡は霞を纏いユラリと宙に浮き、右手に持つ赤い玉が煌々と光りを放つ。
「そうよのう……五つでどうじゃ? 妾はこの“すぺるかーどるーる”の決闘が楽しみでの、沢山考えたのじゃが余り欲張るのも品があるまい、適当なところじゃろ」
目を細め、口角を上げ笑っているが笑っているようには見えない、どこか作り物じみていて不気味だ、笑顔というものがあんなにも異質なものだったのだろうか?
春雪異変が解決したすぐ後に紫と一戦した時も似たような感じだった事を思い出す。
余りにも対面するには巨大過ぎる敵、スペルカードルールというのはそういった力の差を埋め争いが激化する事を防ぐ為のルールである。
一定以上の力が有れば単純な力の差は大きな差にはならない。
でも、でもだ、そんなモノでは心に空いた不安という穴は埋まらない、朝から黒猫が目の前を通りすぎたような、鼻緒が切れてしまったような、兎に角不吉な予感がする、魔法使いが不吉なんて表現するのはなんだか変な気もするが、私は生憎自分に素直な人間だ。
その気持ちを認めよう、ここまで来るのに余りにもとんとん拍子過ぎて、余りにも都合良く行き過ぎたせいもあるだろう、けど、何もこんな経験は初めてじゃない、今までにもあった、そしてこれからもだ。
私が魔法使いとして生きる為には避けては通れない道、平穏の裏側を歩く者、生の裏側にはいつも死がある事を理解しないといけない、私は魔法使いになると自分で決めたのだ。
だから家を出た、覚悟は出来ている、覚悟なんてもうとっくの昔に出来ている。
だから、迷わない。
不安になんか負けない。
「たった五つでいいのか? 私は足りないくらいだぜ」
私は不敵にそう返す、舌戦も戦いの内。
だが、相手はどこ吹く風と言うように挑発に乗ってくれる様子はない、三幡は斜め上の中空を見詰める。
そして何事もなかったように向き直る。
「増やしても良いのじゃが、もう一人こちらに来ておるようでな、余りお主に掛かりきりと言う訳にもいかんのじゃ」
もう……一人? 霊夢か?
「連れないヤツだぜ」
「フフフ……すまんの、早速と行こうか」
左手で口元を隠し不気味に笑う。
そして右手の玉が光り勝負が始まる事を告げる。
始まったのだ。
玉から光の帯が溢れだし三幡の周りを取り囲むように旋回し、何の合図もなく襲いかかってくる。
速くはない、だが波打つような軌道の弾幕は非常にイヤらしい、丁度メルランの弾幕がこんな感じだった。
こういう弾幕は大きく避けしっかりと視界を確保し余裕を持ってかわす、まだ始まったばかり、この程度で苦戦なんかしない!
弾幕の薄い場所を探し最短コースでかわす、引き付ける必要などない、私の弾幕はパワー、真っ直ぐ、真っ直ぐに、弾幕を見て経験測と反射で回避する。
相手のリズムを読み合わせる事によってその回避は可能になる、幻想郷で生きる為に磨いてきた私の、私だけのスキルだ。
私は波打つ弾幕を危なげ無く回避し、確実に相手との距離を詰める。
「ほぉ……凄いの中々に華麗じゃ、では次と行こう」
『宝珠』 龍の頸の玉
スペルカードの宣言と共に右手の玉が光り出す、同時に黒・青・赤・白・黄、五色の光弾と五色の太い光の帯が発射される。
雨のように降る光の帯が横の動きを阻み、光弾が上下の動きを阻む、光の帯のスピードとワンテンポ遅れた光弾の緩急を付けた波状攻撃、だがよく見れば必ず隙がある、上下左右の道が無いなら前へ出て自分の空間を確保する、ある程度距離を詰めたい私には寧ろこの弾幕はチャンスだ。
波状攻撃、その波と波の間に滑り込む、弾幕が空を切り視界の後方へ消えていく。
距離十分、空間把握、詠唱完了、タイミングも悪くない。
「次は私のターンだぜ!」
『魔符』 ミルキーウェイ
スペルカードを宣言し魔法を完成させる、自分を中心に回転しながら星屑が散っていく、この魔法は空気中の星成分を弾幕に変換、拡散し放つ。
自分を中心に拡散していくので相手との距離が近ければ近い程弾幕の密度は高くなり、それだけ回避は困難になる。
迫り来る星屑の弾幕を三幡は難なく避ける、慌てる事なく最低限の動きで避けている。
でも、これは予想の内、竜は最高クラスの幻想、身体能力が並の妖怪レベルでない事は予想済み、更に追い討ちをかける。
短い詠唱でスペルカードの宣言と共に完成させた魔法を発動させる。
相手の両サイドからまた別の星屑達が現れ挟み撃ちにし、視界全てを星が埋め尽くす、これで天の川を模したスペルカード『魔符』ミルキーウェイの完成だ。
人の手の少ないところの星成分は強い、予想通り中々の密度の弾幕になった。
初手として申し分ない。
三幡は挟み撃ちに対し上手く反応し避けているが如何せん動きが雑だ。
身体能力ではあちらが上だろうが経験値はこちらの方が上、十分に勝機はある。
弾幕に押され、三幡が後退する。
王女様には弾幕ごっこは荷が重いと言う事か、この勝負いけるかもしれない。
次のスペルの詠唱に入る、狙うはマスタースパーク、私が愛用する魔法。
弾幕はパワーと体現する魔法。
私が最も信頼する魔法だ。
ミニ八卦炉を取り出しスペルを詠唱する、八卦炉はそれに応え熱をおび、私の魔力を光と熱に変換し増幅する、呪文さえ完成させれば後はキーとなるスペルカードの宣言をすれば発動出来るようにディレイスペルにする、さっきシレネッタに腕を掴まれ魔法をキャンセルしてしまった経験をいかす、油断はしない。
相手に照準を合わせる、いつでも撃てるように、最後の詰めを誤らないように……。
相手に狙いを定める、その時三幡はどんな弾幕でも必ず出来る弾幕のポケットにいた、どんな弾幕でも必ず薄くなる部分がある。
三幡が左手を後ろに構え半身を捻る、明らかに何かをするつもり、だが何だろうと構わない、反撃の弾幕ごとマスタースパークで吹き飛ばす、カウンターのマスタースパークで詰みだ。
三幡が動いた、捻った上半身をバネに180度の半回転をし左手がまるで何かを引き裂く様に空を切る。
弾幕は……、出ない……?
脳のパルスがそれを伝える刹那、その数瞬、空気を引き裂いたような凄まじい音が鼓膜を直撃、更に数瞬まるでドミノ倒しを見るかのように三幡を中心に星屑の弾幕が吹き飛ばされ欠き消される、その波は弾幕ごと私を飲み込んだ、烈風とも衝撃波ともつかないものに体を打ち付けられ吹き飛ぶ。
視界が一回転、二回転、そこまで数えたところで脳の処理と平行感覚が回転に追い付かず上下を見失う、緊急事態用に体に仕込んでおいた魔法を発動させ、空間に自分の体を縫い付け強制的に停止させる。
直後に襲う内臓が捻れるような感覚、全身への衝撃、脳が悲鳴をあげ、視界が霞み吐き気を催す。
この代償もこのまま壁や床に激突しなかった事を思えば安い代償だ。
気付けば箒に辛うじて片手でぶら下がっている状態、よく見れば壁際まで吹き飛ばされたようで後方数メートルは壁だった。
直ぐに骨等に異常がないか損傷確認をする、重大な異常は見当たらない、不幸中の幸い。
でも、あのままなら死んでいた、間違いなく死んでいた、油断してカウンターする事だけを考え、防護を疎かにした。
障壁を張る暇がなかった訳ではない、完全に油断をしていた、これはそのツケが回ってきたのだ。
自分の失態に奥歯を噛む。
スペルカードルールは揉め事や紛争を可能な限り激化させず平和的に解決する手段、だがその実、平和的と言いながら殺しを禁止していない、あくまで幻想郷の均衡、“幻想郷の”平和を守る為のルール。
そして私は人間で人間は脆く直ぐに死んでしまう事……、私は死を忘れていた、一瞬でも死を忘れたその代償だ。
霊夢やアリス達とやるお遊びの弾幕ごっことは違う、幻想郷を水の底に沈めようとするようなとんでもないヤツとの勝負なんだ。
「やはり、遠距離戦は苦手じゃな、妾はどちらかと言うと接近戦が得意じゃな」
その言葉に思考を中断させる、目の前には既に三幡がいた。
「そうか、気が合うな、私も接近戦は得意だぜ」
三幡はその答えに満足そうに頷く、でも妖怪相手に接近戦と言うのは避けたいと言うのが実際の本音だ。
「妾はまだ一枚しか見せてないのでの、もっと持ちこたえておくれ」
そう言って尖った爪の目立つ左手を振りかぶる、休ませてくれる気は余り無いようだ、箒を力の限り引き寄せ下に向ける、 自由落下+加速の魔法で真っ逆さまに墜ちるかの様に真下に飛ぶ、三幡の爪はさっきまで私がいた空間を横一文字に裂き、その余波は更に後ろの土壁を鎌鼬の様に引き裂き粉砕した。
全速力で降下する私に床が迫る、制動をかけ床に衝突するギリギリまで減速、そこから更に床に擦ろうかというスレスレを真横に飛ぶ、真後ろで床を破砕する音が響く、きっと三幡の追撃だ、さっきの方向転換が無ければ追撃を避けれずに詰んでいた事だろう。
身を翻しそこで初めて着地し相手を確認する、床に出来たクレーターの真ん中に砂埃を舞い上げ三幡が口元を袖で隠し立っていた。
「床を壊すとは随分とはしたない王女様だぜ」
そう歯を見せ笑ってみせる、まだまだ余裕はある、余裕を見せ付けてやるのもいい。
そして、相手にバレないように口を動かさずに次の魔法を詠唱する、相手が接近戦を仕掛ける以上は地上戦の方がいい、少なくとも下方向への警戒をする必要がないからだ。
前後左右上下、自在に避ける純粋な弾幕とは違う、そもそも人間の身体は空中で活動するようには構造的に出来てない。
それらを踏まえても接近戦は分が悪い、どうにかして引き離さないといけない、相手の方が身体能力は上、ならば身体能力の底上げをする、その為の魔法だ。
この魔法も多重詠唱なんて離れ業の出来るパチュリーなら話しながら詠唱なんて事が出来るのだろう……。
三幡が片手を軽く振ると周りに風が起こり、舞い上がる砂埃が消える。
「私に意見出来るものなど、そうそうはおらぬでの、作法が至らぬは、まぁ許せ。
それより今はお主が唱えておる魔法の方が気になるの」
背中を冷たい影が這い上がる、まただ、また彼奴はおよそ知り得ない事を知っていた、詠唱がバレたのか?
魔法使いは解呪を避ける為に詠唱内容を巧みに隠蔽する、例えばパチュリーの独自言語、アリスなら事前に詠唱を済ませ本番では人形操作で済ます。なんて方法をとる。
戦闘中の解呪なんて一生に一度見れれば運がいいレベルの物だが備えは怠らないに限る、 その中でも私は詠唱自体を隠蔽する腹話術紛いの詠唱をした、自慢じゃないが鼻がつくような距離でやっと気付くレベルの隠蔽だ。
いや……そんな事はいい、見たところ彼奴は魔法に詳しいようには見えない。
竜みたいに種族としての性能が飛び抜けた連中は魔法みたいなある意味での小細工はしない、レミリアなんかがそうだ。
だからディスペルの心配はほぼ無いと考えていい、問題は何故バレたのか。
さとりみたいに心を読むのか? だとしたら相当厄介だ。
私とアリスしか知らない事を知ってたなんて事もあるし確率として考えてもいいだろう。
もし心が読めるなら私のマスタースパークで切り返す作戦も読まれている可能性がある、そうなれば私の逆転の策は逆に私の首を締める結果に成りかねない。
カウンターで放ったマスタースパークに逆にカウンターで合わせられたら終わりだ。
だが、もし心が読めるならこれだってバレているという事、どうする、どうすればいい……。
そんな私の悩みに相手は付き合ってくれる様子は無さそうだ。
「どんな魔法を見せてくれるのかの楽しみじゃ」
滑るように移動し距離を詰に来る、しかも速い。
私は呪文の最後の文言を詠唱し身体能力強化の魔法を完成させる、これで何とか相手の動きに合わせられる。
左手を引き絞る様に構える、左の中段だ。
上位種族の慢心だろう、三幡の攻撃はやたらに大振りで隙は大きい、一つ賭けに出よう。
利き足で地面を弾き疾駆し間合いを詰める、魔法のバックアップを受け通常の三倍の速さを得た私の急な突進に反応が一瞬遅れる、チャンス、懐に入り込み間合いを潰す、密着状態から炸裂の魔法を放射、魔力が白光を上げ弾け無防備な腹部に衝撃を叩き込む。
予期せぬスピード、タイミング、油断があったのだろう、三幡はそのまま弾かれるように後方に吹き飛んだ。
いける、この一撃で主導権が交代した。
「弾幕はパワーだぜ!」
『星符』ポラリスユニーク
掌から大きな光弾を放つ、三幡は空中で体勢を立て直し紙一重で光弾を避ける。
かかった!
光弾は避けた瞬間に膨れ上がり破裂、その余波は三幡を更に横に吹き飛す。
主導権は握れた、そして心が読めると言う確率も潰れた、もし心が読めるなら身体能力強化魔法で虚を突かれる事も無いし、ポラリスユニークが炸裂する事も読めたはずだ、行ける!
体勢を立て直そうとする瞬間にマスタースパークでとどめを刺す。
八卦炉に魔力を流し炉に魔力を循環させ込めていた魔力を活性化させる、増幅された魔力が紫電を上げ溢れ出す、準備は上々後は放つだけ。
『恋符』マスタースパーク
循環する魔力の奔流は渦を巻き一点に集中する、魔力は光へと変換され室内を埋め尽くす程のレーザーとなって放たれた。
その時三幡の口角が持ち上がり薄く笑った。
えっ……?
『鏡符』眩む水面の乱反射
三幡の目の前に現れたのは水で出来た鏡だった、マスタースパークの光を受けた鏡は波打つ水面が太陽の光を乱反射させるように光を四方に弾き返し床を破壊し壁を破壊し天井を破壊し、そして私の身体を直撃した。
視界は残像を残す様に欠き消え白い世界が脳を埋め尽くす、そして二三度の衝撃、最早痛みも感じない、背中に感じる冷たい感覚はきっと床だろう、そしてまとまらない思考で自分が仰向けに倒れている事を知った、霞んだ視界はかろうじて目の前に人が立っている事を伝える。
そして私は理解した。
私は負けたのだ。
読んで下さった皆さん有り難うございます。
やたらに魔理沙がストイックに戦ってます。
私の書いてる話の仕様です。
と言った感じなんですが多目に見てもらえれば幸いです。
ちなみに戦闘の前半は普通の東方、後半は黄昏フロンティアのイメージです。
と言う訳で魔理沙にはストーリースペカの『星符』ポラリスユニークを使ってもらいました、緋想天の魔理沙の一番最初のストーリースペカですね。
『宝珠』 龍の頸の玉
元ネタは輝夜の最初のスペカ難題「龍の頸の玉 五色の弾幕」です。
グリモアには輝夜の弾幕は道具による弾幕と言う事らしいです。
龍の頸の玉はそのまんま龍の頸の玉なんですが勿論竜である三幡は当然持ってる訳で一番最初と言う事で使ってもらいました。内容はまったく同じ弾幕です。
ちなみに常に右手に持ってる玉が例の頸の玉です。
『鏡符』眩む水面の乱反射
まったく弾幕ではありません。
真夏の太陽が照り返す波打つ海面は直視出来ない程眩しいです。
そのイメージです。
今回のパロディ
タイトル
黒い巨星と青い海
青い巨星だったらランバ・ラル
三倍速い
赤くもないし、角も無いです。
と言うかパロじゃないですね。
次回は敗れた魔理沙の運命や如何に。
次回投稿は年始になりそうです。
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