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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

紅葉

作者: あると

肌寒い季節になってきた。

夕方になると強い風が頬を打つようになる。

舞い上がった砂埃に、私は思わず目をふさいだ。

瞼を閉じるのが、少し遅かったみたいだ。細かい埃が目の中に入っていた。

よく、鈍くさいと言われる。反射神経も人より鈍いらしい。自分ではよくわからないのだけれど。

ポケットからハンカチを取りだして、目元を拭った。涙と一緒に埃も取れた。

目をしばたたかせ、秋の街路樹を見上げると、ゆらゆらと紅葉した葉っぱが落ちてくるところだった。

何とはなしに目で追った。葉っぱは風に揺れながら、歩道の上に落ちた。

地面は赤色に染まっていた。

色鮮やかな赤。

隙間なく敷き詰められた赤。

たくさんの人が血を流していた。

「生き残りがいるぞ!」

銀色の服を着た人がこっちを見ていた。赤い斑点が服を汚していた。

なんだか怖くて、涙が出た。

ハンカチで目元を拭いた。

ぐしょりと湿っていた。

赤。

目から出ていたのは、血液だった。

ああ、鈍くさい。

鼻や口から血が噴き出した。

みんなと同じように。

「駄目だ。手遅れだ」

「畜生、細菌兵器なんか使いやがって!」

どこもかしこも、秋の空だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 紅葉の紅葉の赤い美しさにかかっていることで、血の描写が和らいだ気がして良かったと思います。個人的に、あまりにも生々しい残酷描写は苦手なもので、この程度だとさらりと読めてよかったと思いました…
[一言] のんびりしたまっ赤に染まった景色の中で、目に入った埃をぬぐう前と後で赤の意味が全然違っている映像を思い浮かべてゾッとしました。 あの「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」かのように、一色に染…
[良い点] 紅葉の色と血の色を掛け合わせて表現していたところ。 [一言]  怖いですねぇ細菌兵器。ってマジでは、言いませんが、秋の紅葉、夕陽の色、そして血の赤。  いろんな赤を掛け合わせて、表現してる…
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