第2章〜いじめの旧校舎〜
私は旧校舎へと向かっていた。
周りには取り巻きの生徒たち。
いつもは軽い足取りも今日はなんだか重たかった。
「聖歌様、お気分がなさらないのですか?」
「大丈夫よ、風香。なんでもないわ。」
風香がそういってくれるが当の私は半分上の空だった。
いつもだったらとっくに出ているはずの不気味な笑い声、
でも今日は、笑う気にもなれなかった。
思い当たるのは一人しかいなかった。
あの遊び道具・・・
・・・女王の私がこんなことになって、
こんな思いをさせたあの遊び道具、
懲らしめないときがすまないわ。
認めたくない真実に私は思っていないことをいう。
相手は何も悪くはない・・・
そんなこと分かっているはずなのに・・・
どうしてだか人を憎んでしまう。
全ては真実を隠すために。
本当は心の中でわたりきっていることなのに・・・
認めたくなくて・・・怖くて・・・
人のせいにしてしまう。
でも、もう引き返せない。
これでいいの。私は女王なのだから。
あの時、大好きな人に裏切られた私は人を信じないように誓った。
もうずいぶんと昔のこと。
もう、忘れ去りたい出来事だった。
でも、あの遊び道具に大好きだったあの人を重ならせてしまう。
どうしてだろう・・・
でも・・・
遊び道具は遊び道具、
いくらあの人と重なって見えても遊び道具なのだから!!
私は自分にそう言い聞かせる。
私は女王、
人を信じない、絶対に・・・・絶対に!
気がついたら私は旧校舎についていた。
扉が開く。私は中に入った。
「・・・皆さん、準備はいいですね?」
「はい!」
「遊び道具がきたら・・・分かっているでしょうね。」
「はい。」
言いながら私は私に言い聞かせた。
言った言葉は生徒たちでなく私を確かめるものだった。
これでいいんだ。と
私はそのまま進み階段の一番上まで上る。
この旧校舎は靴箱のまん前に階段がある。
だから階段の一番上までいくとちょうど遊び道具が見下ろせるのだ。
全ての生徒が決まっていたかのように靴箱から階段まで、道を作るかのように横に並ぶ。
真っ暗な旧校舎。
私は自分でも気がつかないうちに遊び道具が来なければいいと思っていた。
真っ暗な旧校舎に一条の光が走る。
遊び道具が来た証拠。
いつもだったら楽しいのに今日はなんだか浮かなかった。
遊び道具はびっくりとしてあたりを見渡す。
「・・・どうして・・・」
かすれるようなつぶやき声。
きっと、こうなることをまったく予想していなかったんだろう。
私を信じていたのかもしれない・・・
そう思うと胸が痛んだ。
一息の間、私はしっかりと息を吸って大声で言った。
胸が痛んだそのことを悟られないためにも。
自分が思ったこととは違うことを言う。
「びっくりした?
私のことを信じていたの?
信じていてくれたのならありがとう。
礼を言うわ。
でもね、私最初からこうするつもりだったのよ。
傷ついた?
これに懲りたら人を信じないことね!!」
私は叫ぶ!!
この声を合図に横で聞いていた生徒たちがいっせいに襲い掛かった。
これでいいの・・・
これで、私は人を信じないの。
今まで人を信じなかったわ。
そしてこれからも・・・人を信じないの・・・
私はずっと見ていた。
遊び道具を。
遊び道具は悲鳴すら上げない。
「聖歌様、10分が経ちましたよ。」
「おやめなさい!!」
風香の声でそう叫ぶと生徒たちはもとのように並んだ。
「・・・そんなことして・・・楽しいの?」
ふと遊び道具のかすれそうな声がする。
私は、しばらく固まったままだった。
「・・・何かしら?命乞いでもしだしたの?」
またうそをつく・・・
ここでは弱みを握られたら負けだから。
でも、遊び道具は私を真剣な目で見ていった。
「だって、目が楽しそうじゃないもの
目が、笑っていないもの。」
「もういいわ!!」
私は叫ぶ、
言葉が終わらないうちに、
今日初めてあった人にこんなにも心が読まれたのが悔しくて、
もう聞いているのがつらくて。
私は靴箱へと歩いていった。
「聖歌様、どちらへ?」
「帰ります!!」
私は遊び道具の生服をわざとふんでから扉を開けた。
そのまま私は早足で旧校舎をあとにした。
心のもやもやは、晴れなかった・・・
こんな思いは、初めてだった。 |