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あるサスペンスのありきたりな佳境シーンにて

作者:甘栗
ショートショート書くの楽しいせいで長編更新が滞っている()
「そ、それ以上近付いたら撃つぞ!」

プルプル銃の引き金に手をかけながら、銃初心者の犯人が人質を盾に警察と向かいあっている。
警察は厳戒態勢で犯人が立て篭もっている家を囲んでおり、放置しておけば、犯人がお腹を空かせて自首してくれそうな状況だった。

「どうします?丸山さん?」

片手に持ったたい焼きを眺めながら、いかにも脇役らしい紺色スーツの男が主人公らしい灰色スーツの男に尋ねた。

「ふむ…さて、どうしたものか…」

その男は相槌(あいづち)をうちながらも、脇役男のたい焼きを息をするように盗り、一口で完食し、考える像のような"これみよがし"な格好で考え始めた。
脇役男は、あぁ!と声にもならぬ声を出した。

「…ごくん。…そうだ!今現在、犯人は家の奥にいるのなら、家を燃やしてしまえばどうだろうか?」

いや、喘息持ちの女の子が人質なので無理です、と脇役男は面白味に欠けるツッコミをいれた。さすが"脇役"である。典型的な昼ドラの、三文芝居(さんもんしばい)的展開のような、もち草的発言である。

「ならば……男を射殺してしまえばいいじゃないか。
まぁ、射殺よりは足を動かないようにさせるとか…」

主人公男は欠伸(あくび)を我慢しながら、さも面倒くさそうに、そんな適当な推論を言い、どこからか出したアンパンと牛乳を飲み食いし始めた。

「うーん…ドラマじゃあるまいし、そんな上手くいきますかね…」

うむむ…と主人公男はまた悩むフリをしながら、脇役男がポケットに隠し持っていたメロンパンを盗み食べた。
脇役男は怒るやる気も出ず、主人公男の部下として恥ずべき行動に呆れ、軽い軽蔑を覚えた。

そして、主人公男がメロンパンを食べ終わった時、ついに犯人と警察の間で行われていた冷戦の如き凍りついた睨み合いの状況が一変する出来事が起きた。

なんと、犯人が屋外に出てきたのだ。いかにも犯人っぽい顔をした犯人の顔は紅潮しており、いまにも銃を乱射しそうだった。

「丸山さん、いまこそ説得を!」

いかにも脇役らしいセリフを放った脇役に対して主人公男は——無視した。
詳しく言えば、色々なパンを食べ過ぎてお腹いっぱいになってしまい、布団をひいて寝てしまったのだ。

脇役男はアワアワと慌てる。さすがに犯人の目の前でこんな挑発行為は自殺行為にも等しいと感じたからだ。

そしてついに、犯人が声を出した。

「ハァァァァァ!?なんで刑事が交渉もしない、説得しにもこない、自首を勧めてこないと思って出てきたら、この場で一番トップが寝てたのかよ!」

脇役男がいや、正式にはパン食べ過ぎて寝てしまった……などということを言うと、犯人は強い口調で、とりあえずそいつ起こせ!と要求してきた。

「丸山さん、起きてください!」

▶︎脇役男が丸山の身体を一回揺さぶった。

▶︎全く起きないようだ。

「ダメみたいです」

「いやいやいや、もっと頑張れよ!もっと激しく揺らして起こせよ!」

その後、犯人の指示に従い、色んなやり方で主人公男を起こそうとしたが、結局彼は起きなかった。

そしてついに、犯人は痺れを切らしてしまった。

「おい!脇役刑事!その眠り姫系刑事を連れてこい!俺自らの手で起こしてやる!」

絶対起きないだろ……と思いつつも、喘息で咳をする少女が殺されてしまう姿が頭に()ぎり、脇役男は仕方なく従うことにした。

そして、犯人が眠り刑事を受け取った。

……と、その瞬間だった。

見慣れている刑事陣はいつもの光景だな、と思ったが、突然主人公男が目覚め、刹那の内に犯人の鳩尾(みぞおち)にドリルのような一撃を食らわせると、犯人が宙を舞い、少女がいつの間にか救急車の担架の上に乗せられていた。

「ふぅ…こしょばくて死ぬかと思った…」

犯人は肋骨(ろっこつ)にヒビを入れられた痛みで全く動けなかったが、そんな痛みよりもドラマ的な驚きと戸惑いが抑えられなかった。

幾つものパン型の雲が、優雅に空を泳いでいる。
パン食べたい。

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