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ひかりの海
作:四方祐樹






 雪井ゆきい佑夜ゆうや
 それは本名であって、けれど佑夜にとっては本名ではなかった。
 今となっては誰にも言わない、そして誰からも言われることのない消え去った存在。
 柳瀬やなせ佑夜。
 それが佑夜の、実の本名だ。
 というのも佑夜は幼い頃に養子として、この雪井家の一員となった。
 養子になる数日前に、両親は事故に遭って死んだらしい。
 らしいというのは、佑夜自身そのことについての定かな記憶がないからだ。
 ただ後から聞かされた話によれば、記者だった両親は仕事で船に乗って、嵐による高波に飲まれて船もろとも沈没したという。
 太平洋の、ずっとずっと沖のほうだ。
 両親が見つかったのは、ある夏の日。場所はすでに日本の領ではなかった。
 佑夜にしてみればまだ物心がやっとついた頃で、両親との記憶というものは言ってしまえばほとんど残っていない。
 だからその分、両親の死というものを受け入れられていないというのもまた事実。
 だって自分の両親は、この雪井家の二人だと信じて疑わなかったのだから……。
 それでも佑夜は年に一度、没した場所までいくのだ。
 他の遺族たちと、船に乗って。
 記憶なんてほとんどない。解っている。
 けれど実の両親は本当に自分のことを愛してくれていたんだ。
 今の両親が話してくれた時に、一緒に写真も渡してくれた。
 それは普通に比べれば少ない量だったのかもしれない。けどその中には確かに愛されていた記憶が鮮明に写されていて……。
 だから記憶にない両親への、できる限りの孝行をしたかった。
 真の両親にもらった分の愛情を、それ以上の愛情を伝えるために。

 そして今年も、その時期が徐々に近づいてきた。
 夏休みも序盤の、あの時期が。












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