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あなたのためだけに

作者:zecczec
 私は佐渡悠。
 はじめに断っておくが、これはごく平凡な人間が主人公の話だ。

 夏の夜のべたついた空気と汗が体にまとわりつく気持ちの悪い今日みたいな日。
 ノートパソコンを開き、私はいつものようにWEBに接続した。
 暑い部屋に唸り声にも似た扇風機のモーター音とキーボードを叩く音が混ざり合う。
 いつも家に帰ってきてからの恒例行事みたいな作業。
 ひとりで部屋にこもって狭い現実世界から果てのないWEBへと飛び立つのが好きだ。
 ニュースを見てはコメントを残し、掲示板に行っては他愛もない話題で交流する。
 孤独や未体験という単語と無縁のこのWEB世界。
 ローマにだって、パリにだって、ストリートビューで旅することもできる。
 サイト上ではあらゆることが自由で、あらゆる可能性に溢れている。
 レトロウイルスという聞き慣れない単語に出会ったとしても恐れることはない。
 まとめサイトを検索してそこを覗けば、ほんの数秒で無知という語句とは無縁になれる。
 しばしの間、共に現実世界から脱却しよう。
 ただひたすら己が望むがままマウスをクリックしてキーボードを叩こう。
。。。


 この小説は、あなたのためだけに作られたものです。
 ノンフィクション小説を探している時に、その文字が視界の端で存在を主張した。
 花柄ピンクのバナーが、女の描いた小説だなと推測させた。
 詩でもしたため誰かへの想いを吐き出したのかと、せせら笑いがこみ上げる。
 似たり寄ったりの小説だろうが、ちょいと好奇心が沸いたので覗いてみることにした。
 出てきた何の変哲もないページに連なる文章が、これだ。



 テークアウト

 くたびれた顔で歩くあなたがふと顔を上げたときの瞳はとても澄んで綺麗だった。
 ルックスは普通のあなただけど、私を見た眼差しが誰よりも優しくて。
 女の子はね、たったそれだけで運命を感じて恋に落ちるのよ。
。。。
 その日を境に私の生活は一変。
 レモン色の花びらに想いを込めて両思いになるおまじないをしてみたり。
 がんばれば、私の気持ちは必ずあなたに届くからって運命を信じて。
 私はあの交差点であなたと話せる日を待ってたけど。
。。。

 あいたいなって思った時から、ぱったりとあなたの姿を見なくなって。
 名前も知らない、あなた。
 ただ一人、私の心に入り込んできてくれたのに。
 ノイローゼになっちゃいそうだったの。
 このまま会えないまんまなら。
 とうてい両思いになんてなれないもの。

 探偵にでもなりたかった。
 しらみつぶしに探したかった。
 手がかりは、この交差点を通ったってことだけ。 
 いつかまた会いたくて。
 ただあなたに会いたくて。
 ノーゲームになるかと諦めかけたとき、再びあなたを見かけるようになって。
。。。

 一回、勇気を出して声をかけたのに、返事をしてくれなかったよね?
 人がいたから照れていたのか、あなたは手元の携帯しか見ていなかった。
 でもいいの。
 はずかしかったから無視したんだって、信じてるから。
 寂しくなかったかと言えば、ちょっと微妙だったけど。


 シミュレーションしてみたの。
 いったいどうしたら、あなたは私に応えてくれるかなって。
 かなり真剣に考えたわ。
 ラブラブな関係になりたかったんだもん。
 ずうずうしい願いだって分かっていても、心が通じたかった……そうしたら。
 っいに、一つの小さな希望が見つかったのよ。
 とても素敵な案を思いついたのよ。
 一体どんな案か、興味はある?
 暑中見舞葉書を出そうかなと思ったけど住所は分からなかったからNG。

 にぎやかになる、この季節が私はとても大好き。
 いつもは興味の無い人でも、この季節は私達の味方だから。
 さっそく私は、作戦に必要な人を飛び回って探したの。
 セッティングをしてくれる人をどうにか見つけることもできました。

 手をマウスに乗せてパソコンの画面を見つめるあなたが好きです。
 くだらないなんて笑わないでね本気だから。
 だからきっと私の言葉を受け入れてくれると信じてる。
 ささやかな私の願いを叶えて下さい。
 いつかあなたのハートを捕まえたいって、願いを。
。。。


 不思議ですね。
 リクエストとか夢って、叶わないものだと半分は諦めていたから。
 無理だと思っていたのに、あなたはここまで読み進めてくれました。
 かなりこれって、奇跡に近いんじゃないかしら?
 なんといっても、私の言葉を全部呑み込んでくれたのだから。
 イヤイヤながらじゃなくて、自ら招き寄せてくれたのだから。
 でなければ、私はあなたをこうして見つめていられないのだから。
。。。


 今ね、とても嬉しいの。
。。。
 私のこんなお願いを最後まで読んで受け入れてくれるなんて。
 はじめてあなたと出会ってから、今日まで機会を窺った甲斐がありました。
 ありがとう。




 なんというか、よく分からない小説なのに、気になった。
 ただ、読んでいる最中に、いつも通るあの交差点のことを思い出した。
 のしかかる重みを感じたことのある、花束が手向けられていた交差点のことを。
 うわさでは、そこで通り魔に腹を刺されて死んだ女が幽霊になっていると聞いた。
 死んでから彷徨うなんてどんな気持ちだろうかと気にかけた、あの場所。
 ろくでもない奴に人生を奪われた可哀想な女を一瞬哀れみ、羨んだ、あの交差点。

 二度ほど読み直して、気になる理由を探してみた。
 たとえば図々しい云々の後の文章だ。
 っいに、だなんて、どうして小文字にしたんだとポツリと口にしたその瞬間。
 手が、白い手がふわっと背後から伸びて、人差し指で画面の左端をつうっとなぞった。
 いい目の付け所だと感心した次の瞬間、気付いてしまった。

 まさに今、ここに他人はいないはずだが?

 すっと血の気が引いたときには、もう。
 。
↓携帯ユーザー様
たのしめたでしょうか?
てんで話にならない?
二度目は無理?
よくやったってお言葉は…?
無理ですかね(苦笑)


と、言うわけで上部のみが携帯ユーザーに即対応していると思われます。
それでも分からない人は紙と鉛筆用意して文の最初の文字に注意してみて下さい(ネタバレ)

初めまして。zecczecです。
御拝読ありがとうございました。
一度この形式で書きたかったのですが機会が無く。
なので思わず参加してしまいました。
とりあえず長文自己記録更新です。
でも既に誰かがもっと上手に発表してそうで不安です。(ぶつ切りの文がクセになりそう……)

それはそうと、「怖い」という概念がいまいち分からないので怖がってくれた人がいるのか?
まさか本気にした人はいないでしょうが(笑)その人は呪いを解くために名前にも注目。

迫力のあるホラー作品がずらりと並ぶなか、余興として楽しんで頂ければ幸いです。
努力を認めて下さったら、気軽に感想を残して頂けると嬉しいです。
同形式での感想はご勘弁を(滝汗)

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