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首刈ったクロース

作者:駒村ゆう
 首刈ったクロースって知ってる?

 サンタクロースじゃないよ。なまえは似てるけどね、赤の他人。

 いつも黒いスーツを着て、アゴにはヒゲがモジャモジャ生えてる。おじいちゃんと同じくらいの歳の男の人だ。寝ようとしない子どもの家の窓をあげるのが大得意!ほら、すぐ外にもいるかもよ。

 首刈ったクロースは、夜中遅くまで起きている子どものところへやってきて、その首を自慢の鎌で刈りとるのが趣味のおじさんだ。
 とんだ殺人者?違う違う。

 首刈ったクロースに刈られても、子どもは死なない。安心せよ。
 鎌で切った切り口は、頭側も首側もつるりとなめらかに肌がつながって、血なんか一滴も出ない。子どもも死なない。
 つまり、胴体と頭が離れるだけなんだ。喋れるし、手足も動かせる。

 それから首刈ったクロースは、首だけをお家へ持って帰る。体育館より広くて大きい自分のコレクションルームに、首を並べて飾るんだ。キャベツ畑ならぬ、子どもの首畑って感じ。すごい趣味だね。

 子どもたちは、もちろん嫌がる。

 おかあさーん!助けて!
 いやだいやだー!はなせー!

 ってなもんだ。首刈ったクロースは、そんな嫌がる子どもを見て楽しむんだよ。ろくでもない大人だ。

 子どもたちはひとしきり叫んだり泣いたりしたあと、だんだんと疲れてきて最後はグッタリ、首刈ったクロースの部屋で眠ってしまう。
 首だけの子どもが目を閉じて、スースーと寝息をたて始めると、首刈ったクロースは面白くなさそうに「チッ」と舌打ちして、子どもの首をまた元の家の胴体に返しに行く。
 そのままにしておいたら、子どもが死んでしまうからね。

 これが首刈ったクロース。
 怖いでしょ?へー、怖くないの。

 さて。
 あるところに、とても元気な女の子がいた。仮にAちゃんと呼ぼうかな。その子はいま八歳で、寝る前に格闘ごっこや漫画やゲームで遊ぶのが大好きで、明日学校があってもなかなか寝ようとしない、大問題児だった。

 深い深い夜の闇。
 Aちゃんは、こっそり起き出して、机の電気をパチンとつけた。
 引き出しから紙と鉛筆を取り出して、お母さんやお父さんにバレないように、こそこそとお絵かきをはじめた。
 ちなみに明日も学校だ。とんだ悪ガキだね!

 十二時を過ぎたとき(ジャジャーン)…彼がやってきた。

「うわ!誰や!なに!?」
「もーんーどーうー無用!」

ザン!

 女の子の首は刈り取られ、首刈ったクロースの家にお持ち帰りされてしまった。さぁ大変だ。

 運ばれたさき。
 首刈ったクロースの家には、ゴロゴロと百個くらいの子どもの首が並んでいて、そりゃもう大変な騒ぎだった。

「えーんえーん、返してよー!」
「さみしいよぅ…」
「怖いようー!」

 叫んだりシクシク泣いたり、子どもたちは忙しい。
 ところがAちゃん、さすが悪ガキ。
 首だけになっても威勢よく、首刈ったクロースに盾ついてるよ。

「オイ!おっさん!なにしてくれんねん!はよ家にかえせ!」
「…口の悪い女子やなー」
「うっさいわボケェ!犯罪者!」

 首刈ったクロースは焦った。
 このままだとこの子、朝までずっと悪態ついてるかもしれない。そうしたらもう家に帰れなくなっちゃう。彼はべつに子どもを殺したいと思ってるわけじゃないんだ。

「もうお前、いいですわ。寝たら家に連れて帰ったるから、はよ寝ぇや」
「はー?そんなすぐ寝れるか!寝ろって言われたら余計寝れへんねん!それがにんげんや!」
「そうかなぁ」

 そんなやりとりをしているうちに、他の子どもたちは泣き疲れてわめき疲れて、ひとりふたりと目を閉じて、眠りに入っていった。

 残ったのはAちゃんだけ。
 でも目はらんらんと輝いていて、寝る気配はまったくない。

 首刈ったクロースはほとほと困り果てた。こうなっては、Aちゃんが眠るために、自分が頑張るしかない。

「絵本読んだろか?」
「どんな本?」
「ももたろう」
「いらんわ!」
「音楽流そか?」
「けっこうや」
「ほな蜂蜜レモン飲む?甘くてあったまるでー」
「もう歯ァみがいた」

 まるで歯がたたない。
 クッとくちびるを噛みしめて、首刈ったクロースは思った。
 このままじゃダメだ。
 このクソガキ、放っておいたら将来はどえらい不良になる。いまのうちにしっかり説教しておかないと。

「なぁお嬢ちゃん、なんで人間が寝なあかんのか知ってるか?」
「…なんでよ」
「脳と体を休めるためや。一日働き続けてお疲れさんの頭は、もう休みたくてしゃあないねん。眠ってなにも考えへん時間に、頭は疲れをいやすんや。聞いてるか?」
「んー」
「体も同じや。体育やったり鬼ごっこやったりブランコやったり、今日一日でどんだけたくさん走りまわったか考えてみ?足も手ぇもクタクタやねん。だからフワフワの布団の上に投げ出して、眠るねん」

 首刈ったクロースは、話しているうちに、だんだん自分に酔いしれていった。
 なんていいことを言ってるんだろう。女の子も感動しているのか、静かに聞いているようだ。

「(クドクドクドクド)分かったか?」
「……」
「おーい、お嬢ちゃん?」
「……」
「…ね、」

 寝てるんかいー!っと首刈ったクロースは叫んだ。
 Aちゃんはおじさんの説教話があまりに面白くなさすぎて、たいくつで眠っちゃったんだ。

「こういうことやなかったんや」

 首刈ったクロースはしょんぼりしながら、Aちゃんの首を家にかえしてあげましたとさ。





 うざったい首刈ったクロースの説教を聞きたくなかったら、せいぜい早く寝ることやね。






はい、おやすみ。

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