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♯7できました〜。割と直ぐに書き上げたのですが……誤字だらけでしたので修正を繰り返してました(笑)。それでは♯7お楽しみ下さい。
♯7 4月第2週【三年という月日】
入学してから早くも1週間が過ぎた。中学の時は2人(航と川上さん)しか友達と呼べる人物は居なかったが、鳴響に来て更に2人も増えて4人になった(航・恋華・芽衣さん・美咲桜)


なかでも一番印象深いのは、3年振りに美咲桜と再会できたことだ。お互いに連絡を絶っていて、受験先が同じなんて…あの時、美咲桜は『こっちの高校を受ける』としか言って無かったのにな。


それでも約束通り、宮園から藍ヶ丘に帰って来てくれて本当に嬉しかった。外見は綺麗になっていたけど、中身は変わってない様だったので安心した(正義が知らないだけで『姫モード』によって、かなりの数の男子が心に大きな傷を負った)因みに犠牲者の数は30人を超えたとか(恋華調べ)


ではその一部始終をご覧下さい。

―PLAYBACK――――――恋華SIDE―


金曜日の5・6時限目にある選択授業が終わり、アタシは廊下を歩き教室に戻っていた。

【恋華】
「油絵も面白いじゃん…思ったより簡単に描けたしね[桐原さんっ!]………あら?」

階段の下から男子の声が聞こえてきた。よりによって美咲桜に声掛けてるし…CG回収できそうだから、行くしかないっしょ。

階段から下を覗き込むと、中々イケメンの2年生男子が美咲桜と向き合う様に立っていた。

【男子】
「本当にお美しい、僕らは出会うべくして出会った…そう!これは運命!…僕と付き合えば君はもっと輝ける!…さぁこの手を[虫が煩いですねぇ!]………へ?」

あっちゃ〜。また犠牲者が増えた…ご愁傷様。アタシでもアレは止められないしね。それにあの台詞、王子様かっての……マー君なら似合いそうだけどね。

【美咲桜】
「虫が煩いと言ったのですが、聴こえませんでしたか?貴方の事ですよ?その頭の悪そうな顔…鏡で一度、自分自身をご覧になった方がいいと思いますよ?…それに貴方と居ると不愉快ですっ!消えて下さいっ!そうですか、消えないんですか?じゃあ私が消えてあげます!」

凄い勢いで畳み掛けて、美咲桜は去って行った。残された男子は、口から白い煙の様なものが出ていた。

とりあえず男子は無視して美咲桜の後を追った。



【恋華】
「相変わらずモテるねぇ〜…今日は何人目?」

美咲桜は腕を組み、首を傾けてう〜んと唸ってから。

【美咲桜】
「…5人目かなぁ」

【恋華】
「昨日迄に27人だから、32人目かぁ…犠牲者はまだ増えそうだねぇ〜?」

【美咲桜】
「犠牲者って…私は断ってるだけじゃない?」

無自覚で彼処まで毒舌になるとは…本当に恐ろしい。

【美咲桜】
「授業も終わったし、早くカフェテリアに行かない?」

【恋華】
「マー君に逢うため?」

【美咲桜】
「うん。クラスが違うから話し足りないの…昼休み一緒にご飯食べてるけどね」

からかうつもりだったけど、こんな寂しそうな顔されたら何も言えないよ…良し!早くカフェテリアに行きますか!

【恋華】
「マー君は選択サボってるから…もう居ると思うよ!」

アタシはそう言って美咲桜の手を握り、教室に向けて走り出した。


―恋華SIDE―――――――――――END―


あとは美咲桜の家に行って父親の一樹かずきさんと母親の美咲みさきさんに美咲桜とのツーショット写真を撮られたり、買い物に連れ回されたりした。夕飯をご馳走になり、美咲桜が風呂に入ったのを見計らって〈久しぶりに弾いてくれない?〉と美咲さんに頼まれた。ピアノに触ると埃が積もっていたので、ハンカチでサッと拭き取った。最近は弾いてなかったショパンの黒鍵のエチュードを弾いた。
演奏が終わり2人とも喜んでくれたが、俺はピアノに埃が積もっていた事が気になっていた。埃の量から考えても、2年近くは弾いてないのは間違いない。弾いてない事を確信したので2人に理由を聞いたが〈解らない、中学生になって突然弾かなくなってしまった〉の一点張りだった。その日は問題の時期が特定できただけでも収穫だった。


家に帰ってからも美咲桜の事を考えていて、殆ど眠れずに朝起きると9時半だった。急いで準備を済ませリビングに入ると、誰も居なかった。〈母さんのバカー〉と叫びつつ、テーブルに置かれた弁当を鞄に入れて家を出た。車庫に行き自転車に跨がると、学園へと続く傾斜角35度を誇る坂・通称『地獄の壁』に戦いを挑み20分程かけて勝利した。しかし教室で2時限目を受けて、授業が終わると同時に放送で『くぉらぁーー!正義ぃー!オレの部屋(風紀委員教室)まで来いやぁーー!』芽衣さんに呼び出されて昼休みまで正座&芽衣さんの愛(説教)を喰らった。


日曜日に父さんの会社に行った。昼休みに出先から戻って来た父さんを、引き摺って道場に連れて行き組手(制裁)を行なった。―――――――――――今週に続く――――――――――――――




















今週は特に目立った事も無く、今は4月第2週目の金曜日の朝。

―七瀬家‐リビング――


登校の準備を終えてソファーに座り、テレビでニュースを観ながら航が迎えに来るのを待っていた。

ニュースに飽きて視線を移すと、対面のソファーに座っている母さんはパーティー用衣装のカタログを眺めていた。

【英理朱】
「これなんてなかなか…………こっちも棄てがたい……これも良いし」

カタログにペンで印をつけながら唸っていた。着るのは俺なんだし自分で選ぶ…事は目の前の人によって先程阻止された。

これは来週の水曜日に学園で行われる『学園全体社交会』で俺が着る衣装だ。

【正義】
「無理して買わなくても…ポール・スミスのスーツがあるでしょ、コンクール用のが」

【英理朱】
「アレも棄てがたいんだけど…このカタログに、もっと似合いそうなのが沢山あるからねぇ」

【正義】
「わかったよ。母さんに任せる…けどっ!あんまり高いのだったら返品するからね」

あのポール・スミスも20万ちょっとするし…母さんは俺の服や衣装になると見境が無くなるからなぁ。

【英理朱】
「わかってるわ。でもね、アレもそろそろ新調しようと思ってたの…だから丁度良い[ピンポーン]……かなって」

航が来たみたいだな。話も一区切りしたし待たせるのも悪い、行かないとな。

【正義】
「じゃあ衣装は任せるよ…航待たせるのも悪いし、いってきます」

横に置いた鞄を持ち、ソファーから立ち上がってリビングを出た。

靴を履き終え玄関で身だしなみをチェックして家を出た。


【航】
「遅かったねぇ…何かあったの?」

リムジンの窓から顔を出して聞いてきた。目の前まで行ってその顔を車内に押し込み、ドアを開けて隣に座った。

ドアを閉めると同時に学園に向けて、音も発てずに走り出した。

【航】
「なにするのさっ!聞いただけでこの扱いは酷くない?」

【正義】
「細かい事を…男らしく無いんじゃないか?」

【航】
「うっ…そうだよね…男らしく無いよね。うん。もう気にしてないよ?」

本当に扱いやすい奴だ…そろそろ勘弁してやるかな。

【正義】
「来週の学園全体社交会、あれの為に着る衣装を選んでたんだ……母さんが」

【航】
「英理朱さんが?…またいつものパターン?」

そう。俺の服は必ず母さんが選ぶんだ。買いに行く時も必ず後からついてくる……そう…必ず(ストーカー?)捕まらない事を祈るばかりだ。

【正義】
「あぁ…カタログ観てたら取り上げられた」

【航】
「いいんじゃない?…英理朱さんセンス良いし。それに買いに行ったら……ねぇ?」

【正義】
「選択肢は無い…と」

【航】
「いや、多分『母さんに任せる』が3つあるんだよ」

【正義】
「………お前自己紹介でタイピングが特技とか言ってたけど、ギャルゲーとかやってんじゃないの?」

【航】
「やってるよ?…シナリオとか良くできたの多いしね」

コイツ言い切りやがった。すっかり男らしくなりやがって…ヤベ、ちょっと泣きそうだ。

【航】
「マサ君、どうしたのさ?急に黙って」

こんな気遣いまで…コイツも成長してるんだなぁ。…今度からもっといじり倒そう。うん!そうしよう。

【正義】
「すっかり男らしくなって…義兄さんは嬉しいよ」

【航】
「いつ俺の兄になったのっ!それも義兄って…ちょっとリアルなのがなんかイヤだっ!」

【正義】
「そうなんだ…残念だ、君には失望…やっぱいいや」

【航】
「裏設定で実は…とか期待してたでしょ。絶対!」

【正義】
「そんな訳…………チッ……あるわけないだろ?」

【航】
「今、絶対に舌打ちしたよね!…チッ…って鳴ってたよね」

あれだけ音を抑えたのに良く聴こえたな…まぁいいや。ギャルゲーっていう、対恋華用の弱点もGETしたしな。

【正義】
「わかったわかった、俺が悪かったな…調子に乗りすぎた。ゴメンな」

【航】
「わかってくれれば良いよ」

『女王様モードの発動ワード』として『ギャルゲー』を手に入れた。

やっぱり航をいじるのは楽しいなぁ。とか考えているうちに学園についていた。









ガラーン‐ガラーン‐ガラ――――――――――――――――――――


終了を告げる鐘が鳴り、4時限目が終わった。
航が自分の机を反転させて俺の机に繋げてきた。それを合図にしてお互いに弁当をとりだした。それを確認した恋華が航の横から机を繋いだ。少し遅れてD組の美咲桜が教室に入って来て、俺の隣の机に座り横から机を繋げた。(俺の隣の娘は、いつもカフェテリアに持って行って食べる為空いている)これがいつも昼食を摂る時のポジションだ。

【恋華】
「いただきま〜す」

いつもの号令で皆食べ始める。今日は何も無ければ良いなぁ、と思いながら弁当箱を開くと…ご飯の上に海苔で描かれた『まー君LOVE』の文字が凄い存在感を放っていた。

【正義】
「………………ハァ」

【恋華】
「今日はなんて…LOVEかぁ。ファイトだと思ったのになぁ」

【航】
「英理朱さんも頑張るよね。ローマ字やカタカナまで自由自在、見ていて和むというか」

【美咲桜】
「本当に。英理朱さんて若いよねぇ。ただ少し行き過ぎな気もするけど…ヒロ君。元気出してね?」

ありがとなぁ美咲桜、お前だけだフォローしてくれるの…慣れるしかないんだろうなぁ。美味しいから文句なんて言えねぇしな。いつまでも考えてないで食べよう。

【正義】
「ありがとう。美咲桜…わかってくれて嬉しいよ、いただきます」

【美咲桜】
「いえいえ。はいお茶」

わざわざ自分の水筒からお茶まで注いでくれるし。いい嫁さんになるんだろうなぁ。

【正義】
「ありがとう」

お茶を受け取ると恋華がニヤニヤしながら此方を観ていた。

【恋華】
「なんで付き合ってるアタシ達より、カップルっぽく見えるんだろうねぇ〜?」

【航】
「うんうん。長年連れ添った夫婦みたいだよねぇ?」

【美咲桜】
「〜〜〜〜〜〜〜っ」

美咲桜はボンッと音を発てて、耳まで真っ赤になってしまった。

やれやれ…いつものことながら美咲桜は慣れないなぁ。まぁそこが可愛いんだけど…2人共悪乗りしすぎだ。

【正義】
「航君?恋華さん?…あんまり美咲桜を虐めると……2人の恥ずかしい事言っちゃうよ?」

【航】
「恥ずかしい事って、なにさ!?」

えらく強気で来たなぁ…今朝の事もう忘れたのか?幸せな奴だな。そろそろ現実の厳しさを教えてあげよう…コイツの為に。

航を手招きして『発動ワード』を耳元で囁いた。

【航】
「……………ゴメンなさい」

【恋華】
「なっ…アタシの航(犬)が、マー君っ!航(犬)に何を言ったのっ!」

【正義】
「別に何も…それより恋華は美咲桜に謝らないのかなぁ?アレ…言っちゃうよ?」

【恋華】
「あっ…あれってなによ!?」

強情な娘だ…アレは航も知らないはず。恋華も同じ様に手招きして呼び寄せ、耳元で『あの時、公園で泣きじゃくってたよなぁ?』と囁いた。

【恋華】
「……………………ゴメンね。美咲桜」

【航】
「うそっ!…恋華が従った………俺でも無理なのに」

【正義】
「美咲桜にも教えてあげようかなぁ?」

【航・恋華】
「「それだけは勘弁してっ!」」

【美咲桜】
「プッ…2人とも同じ事言ってる…らぶらぶだねぇ〜?」

【航・恋華】
「「〜〜〜〜っ!!」」

おぉ…美咲桜の逆襲だ。良い傾向なのかな?2人共顔真っ赤だし…これで少しは懲りたかな?

【美咲桜】
「2人共顔が赤いよ〜。どうしたのかなぁ〜?」

【正義】
「もう良いだろう?許してやれ…な?」

言いながら美咲桜の頭をポンポンっと撫でてやった。

【美咲桜】
「む〜〜〜〜〜わかった」

【正義】
「いい子だ」

笑顔を向けてやると、頬を赤く染めた。

【正義】
「ほらほら、3人共メシ食わないと選択始まるぞ?」

時計を見ると1時5分つまり後5分になっていたので皆、慌てて残りを腹に納めた。

ガラーン‐ガラーン‐ガラーン――――――――――――――――――

5限目開始の鐘が鳴り、皆自分の選択授業の行われる教室に向かった。

【恋華】
「マー君、今日も寄って帰るんだよね?」

【正義】
「カフェテリアだろ?今から行くつもりだけど?航、悪いけど終わったら鞄頼むな。戻って来るの面倒くさいから」

【航】
「サボるのは良いけど…帰りのHRは出た方が良いと思うよ?…ハァ…終わったら持ってくよ」

2人とも油彩画なので、並んで教室から出ていった。

選択サボれるのは有難いけど…鞄取りに来るの面倒くさいしなぁ。持って行ったら帰ったと思われるし、とりあえず行くとするか。

椅子から立ち上がり、人気の無い廊下を歩いてカフェテリアに向かった。









【ウェイトレス】
「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか?」

【正義】
「はい」

【ウェイトレス】
「では此方へどうぞ」

授業中にも関わらず、カウンター席に案内されると先客が居た。

【正義】
「芽衣さん…どうしたんですか?」

芽衣さんは端の席に座って悲しそうな顔をしていた。

【芽衣】
「…正義じゃねーか!お前、サボりか?」

無理矢理作った笑顔は引きつっていた。何があったかは知らないが…悟られたく無いみたいだな。

【正義】
「えぇ…それはお互い様でしょう?」

【芽衣】
「ハハッ…違いない」

漸く本来の笑顔になったな…話してくれないのかな?俺じゃ力になれないのかな?

【正義】
「芽衣さんって、カフェテリアに余り来ないんですか?」

【芽衣】
「あぁコーヒーは飲むけど、甘いモンは苦手なんだ」

【正義】
「へぇ〜…芽衣さんにも苦手な物があったんですね?」

【芽衣】
「お前…オレを何だと思ってる?…オレだって苦手なモン位あるよ」

【正義】
「冗談ですよ。………すみません、コーヒーとティラミスお願いします」

【ウェイトレス】
「畏まりました」

なにか頼まないと悪いので、とりあえず注文を取った。

【正義】
「芽衣さんも何か飲みませんか。奢りますよ?」

【芽衣】
「ありがと……悪いな…じゃあコーヒー良いか?」

【正義】
「いえ。芽衣さんにはいつもお世話になってますから………すみません、コーヒーもう一つお願いします」

ケーキを持って来たウェイトレスに、ついでにコーヒーを頼んだ。

【芽衣】
「正義はよく来るのか?」

【正義】
「えぇ…毎日来てますよ。連れが3人居ますけど」

【芽衣】
「そっか…オレは来週の事を考えてたんだ」

【正義】
「来週ですか?確か学園全体社交会がありますよね?」

【芽衣】
「あぁ…風紀取締りでウチから5人出さないといけないんだが…オレ含めて4人しか決まってないんだ」

それで悩んでいたのかな?いや、何か違和感があるな…違う気がする。この話が終わればハッキリするか。

【正義】
「社交会に出るから、取締りの人数が集まらないんですか?」

【芽衣】
「そうなんだよ…皆出るって聞かねぇんだ」

そこまで言うと芽衣さんはコーヒーを飲み干し、カップをカウンターに叩きつけた。

【正義】
「その社交界って、出たくなる様なメリットがあるんですか?」

【芽衣】
「彼氏彼女をつくりたい奴と、親に言われて出る奴の2パターンだな」

【正義】
「前者は解りますけど…何で親が出てくるんですか?」

【芽衣】
「正義の家はたしか…親父さんが社長だったよな?」

【正義】
「はい。まだ小さな会社ですが…それが何か?」

【芽衣】
「ウチはかなりの企業だろ?例えば、オレと正義が付き合うとする。オレのオヤジに、正義の親父さんの会社を紹介するとどうなる?…企業提携を結んだとしたら?」

なるほどねぇ…良くできたシステムだな。恐らく学園にも、リベートが入る筈だ。よくこんなもの考えついたものだ。

【正義】
「凄いシステムですね。色んな面でかなりの利益が見込める…でしょ?」

【芽衣】
「あぁ…お前もリベートに気付いたか。だからこの学園は生徒数の割に、設備が充実してるんだよ」

【正義】
「確かに…寄付という形でなら罪になりませんからね」

【芽衣】
「だからこそ、親は必死なんだよ…こればっかりは強制して出ろって言えねぇしな」

確かにな…親子関係に亀裂が入り兼ねない、3人集めるのも大変だったろうな。良しっ!あの時の恩を返そう。

【正義】
「それって風紀委員以外がやったら、マズイですかね?」

【芽衣】
「どうゆう事だ?…オレが許可すれば可能だけど」

【正義】
「じゃあ許可して下さい………俺がやります」

【芽衣】
「…本当か?本当に良いのか?」

【正義】
「はいっ!男に二言は無いです」

【芽衣】
「ありがとう…本当に助かった」

そう言って立ち上がり、深く頭を下げてきた。ケジメ…か、礼には及ばないんだけどな。

【正義】
「芽衣さん、頭を上げてください。いつもお世話になっている…俺からの気持ちです。…少ないですけどね。

【芽衣】
「いや、お釣りが返せなくて悪い位だ…本当にありがとう」

頭を上げてくれたのでホッとした。良かった…少しでも返せて。

【正義】
「それで具体的には、何をすれば良いんですか?」

そこで芽衣さんは椅子に座り直して、コーヒーをもう一杯頼んだ。

【芽衣】
「頭髪や持ち物検査と…警備だな。正義なら強いし問題ないな」

【正義】
「まぁ学園の生徒相手なら、負ける気はしません」

【芽衣】
「ハハッ…頼りにしてるぜ?」

【正義】
「えぇ…やるからには妥協はしませんよ」

内容は解った。しかし、あんな顔をしていた理由は解らずじまい…か。何か裏があるのかな…でも話してくれそうもないしな。もう少しだけ詰めとくか。

【正義】
「時間は何時間なんですか?」

【芽衣】
「あぁ…当日は18時開始で21時半終了だ。校門には警備員が立つ。オレ達の仕事は取締りの後、体育館の内外を巡回する。因みにオレと正義は外回りを考えてる、アイツ等は頼りにならないしな。中の連中は、本人の意思を無視して相手を無理矢理誘う奴を退場させる。……これが主な仕事だ。

主な…ねぇ。外回りに俺と芽衣さん…そこまで警戒する理由でもあるのか?

【正義】
「わかりました。けど、一つだけ質問良いですか?」

【芽衣】
「…………当日に答えるよ。…また連絡する、コーヒーご馳走様」

そう言って椅子から立ち上がり、店から出ていった。

去り際に見た、彼女の真剣な顔が暫く頭から離れなかった。









ガラーン‐ガラーン‐ガラーン‐ガ――――――――――――――――


芽衣さんが去ってから、暫くその場から動けなかった………気が付けば6時限目終了の鐘が鳴っていた。

何故今日話してくれなかったのか…何故話を打ち切ったのか…頭の中で堂々巡りが続いていた。

【美咲桜】
「ヒロ君?…どうしたの?…なにかあったの?」

もうそんな時間か…時計を見ると3時10分になっていた。

美咲桜の顔を見ると、泣きそうな顔をしていた…俺そんなに酷い顔してるのかな?………心配かけない様に笑顔を向けて、口を開いた。

【正義】
「もう終わったんだ?…じゃあ4人掛けの席に移動しようか?」

美咲桜の後ろに居る航と恋華にも聞こえる様に言って、ウェイトレスに席を移る事を告げた。〈どうぞ〉と行って案内するために先を歩いて行った。それから伝票を持って、その場から動かない3人を残してウェイトレスの後を追った。









案内された席で暫く待って入ると、3人が小走りでやって来た。

【美咲桜】
「先に行っちゃうなんて酷いよヒロ君っ!」

美咲桜は両手を腰に当てて、上半身を前に倒し頬を膨らませて怒っていた。…プッ…全然恐くない、寧ろ可愛いし。

【航】
「はい。鞄………松原先生呆れてたよ?」

【恋華】
「うん。…『七瀬はまた居ないのか〜ったくアイツは』って言ってたよ」

【正義】
「とりあえず3人共座れよ。恋華は物真似の才能………皆無だな」

3人とも座ったが、美咲桜はまだ怒ったままだった。

【恋華】
「凄い溜めてから言わないでよ。きっついな〜」

凹んだ恋華を航がフォローするという珍しい光景だった。とりあえず2人は無視して、美咲桜の機嫌をとる事にした。

【正義】
「美咲桜…ゴメンな?心配してくれたんだよな?…ありがとう。嬉しかった」

微笑みかけながら、髪を鋤く様に頭を撫でてやった。暫く続けてやると、目を細めて気持ち良さそうな顔をした。

【航】
「そういえば…マサ君の衣装はどんなのに決まったかなぁ?」

美咲桜の顔を眺めていると航の無情な言葉によって、思い出したくない事を思い出してしまった。

【正義】
「普通なのが良いなぁ〜」

【恋華】
「英理朱さん…白とか好きだから、タキシードとかじゃない?」

【美咲桜】
「ヒロ君にタキシード………………………………………………良いっ!」

【恋華】
「あっちゃ〜美咲桜が自分の世界に……当分戻ってこないな、こりゃ」

【航】
「うん。腕を祈る様に組んでるし、ほぼ真上を向いてるしね。…10分コースじゃない?」

美咲桜が自分の世界に旅立つと、何をしても反応しない。動作によって戻ってくる時間が推測できるのが特徴だ。

『レベル1・腕を祈る様に組む』約5分

『レベル2・更に顔を上に向ける(ほぼ真上)』約10分

『レベル3・更に(うふっ…うふふっ)の様な声を漏らす』約30分(声も続く)


【正義】
「恋華…気を付けてくれ。レベル3になったら………わかるだろ」

【恋華】
「うん。恥ずかしくて…ねぇ。今度から気を付けるよ」

【航】
「俺まだレベル3見たこと無いんだけど…凄いの?」

【恋華】
「とりあえず、人が多い所では勘弁して欲しいなぁ」

【正義】
「あぁ…それは俺も同感」

【航】
「ちょっと〜俺にも教えてよ?」

【恋華】
「いずれわかるって。アタシもドレス選らばないとなぁ〜」

【正義】
「航はもう決めてるのか?」

【航】
「うん。いつも大体4着を着回してるから」


やっぱり住む世界が違うなぁ。パーティーとか結構頻繁に出るっていうし…何か疎外感を感じるなぁ。羨ましい訳じゃないけど…なんだかなぁ。

【恋華】
「…急に黙っちゃってどうしたの、マー君」

【正義】
「いや…2人はパーティーとか慣れてそうだなって」

【航】
「確かに結構出てるけど、あんまり良いモンじゃないよ?…媚を売る人間ばっかで」

【恋華】
「うん。汚い感情っていうか…気分が悪くなる……そんな場所だよ?」

それは想像通りなんだけど…解らないだろうな。

【正義】
「上手く言えないけど…大変だな」

【航】
「もう慣れたよ。それに同年代や年下の子は普通に話すしね」

【恋華】
「たまに、子供を使って近寄って来る親もいるけどね」

さっき芽衣さんと話した内容と同じだな…そんな親ばっかりなのかなぁ。子供を道具みたいに………ムカつくっ!

【恋華】
「マー君?怒ってるの?…恐い顔してるよ?」

【正義】
「……っ…………顔に出てた?」

【恋華】
「うん。……眉間に皺を寄せて、眼が鋭くなってたよ?」

ハァ…余計な心配かけちまったな。今度から顔に出さない様に気をつけよう。

【正義】
「ハハッ…すまない、考え事してて。それより、学園全体社交会って何をするんだ?」

【航】
「ただの立食パーティーだと思えば良いよ…気楽にさ」

【恋華】
「うん。アタシ達はいつも通りに話してれば問題ないよっ!」

あっちゃ〜。風紀取締りの事、言いづらくなっちゃったなぁ。……最初に言わなかった俺が悪いしな。

【正義】
「今更悪いけどさぁ…社交会出られないから…俺」

【航】
「なんでっ!?理由は?」

【正義】
「芽衣さんが、当日の風紀取締りの人員集めてて…集まらないみたいだったから…ゴメン」

【航】
「ハァ〜良いよ…それがマサ君だからね」

【恋華】
「うん。困ってるのが知り合いなら助けないとねっ!」

2人共ありがとな…今度必ず埋め合わせするから。

【美咲桜】
「私は納得してないよっ!」

『社交会に出られない』に反応したのか10分経って戻ってきたのかわからないが、声を震わせて叫ぶ様に言ってきた。…周囲の生徒は皆此方を観ていた。

このままじゃマズイな…仕方ない。財布を航に渡して〈精算頼む、10分経ったら教室に来てくれ〉と言ってから美咲桜の手を掴み、引き摺る様にカフェテリアを出た。










美咲桜を引き摺ったまま教室に入って扉を閉め、窓際の席に座らせた。

横の席に座り、向きを変えて美咲桜と顔を見合わせた。

【美咲桜】
「………………………」

顔を伏せて黙ったまま…このままでは埒があかないので口を開いた。

【正義】
「美咲桜…言いたいことがあるんだろう?…全部聞くから、話してくれ…な?」

優しく諭す様に語りかけた。美咲桜は顔を上げてくれたが、その顔は涙でボロボロだった。

【美咲桜】
「ヒロ君はっ…楽しみっ…じゃ……なかったの?……わた…しっ……3年間…っ……逢えなっ……かった分…まで…一緒にっ……居たいのにぃ!!!」

涙声で途切れ途切れになりながらも、想いをぶつけてきた。『3年間逢えなかった分まで一緒に居たい』俺も同じ気持ちなんだけどな。

【正義】
「俺も同じ気持ちだよ…できるだけ、美咲桜と一緒に居たい。…でも初めて逢った美咲桜が俺に『友達』を与えてくれた様に、俺も困ってる『友達』の為に『何か』をしてやりたいんだ。……全部俺のエゴだけど………ゴメンな?」

俺の想いをぶつけると、美咲桜は凄い勢いで抱き着いてきた。支えきれずに、床に押し倒される形になった。

【美咲桜】
「ゴメンっ…なさいっ…グスッ…でも……っ」

胸に顔を擦り付けて、しゃくりあげながら。

【美咲桜】
「寂しいっ…よ!……昔はっ……っ……私だけ…の……ヒロ君っ…だったのにぃ!」

確かに…航・恋華・芽衣さんが増えた…均等に接しても当時の『四分の一』にしかならない。もっと真剣に向き合わないと…気付いてやれなかったしな。

【正義】
「コレからは、もっと一緒に居るから…もっと話すから…もっと真剣に向き合うから……ゴメンな?」

【美咲桜】
「うあぁあーーっあーーーーわぁーーー」

諭す様に言ってやると、声をあげて泣き出した。心の中で『いつも一緒だから』と繰り返し、背中に腕を廻して優しく抱き締めた。









5分程して美咲桜は泣き止み、俺の上から降りて立ち上がった。

美咲桜に手を借りて立ち上がり、顔が向き合う様に立った。

【正義】
「本当にゴメンな?…勝手に決めて。でも必ず埋め合わせするから…今週……来週の週末、2人で出掛けよう?荷物持ちでも何でも1日付き合うから…な?」

【美咲桜】
「本当に?……絶対…絶対だよっ!?」

凄い勢いで詰め寄って来たのを手で征しつつ、微笑みながら力強く頷いた」

【美咲桜】
「約束…指切り」

【正義】
「あぁ…約束だ」

そう言って差し出してきた左手の小指に小指を絡めて、顔を見合わせ微笑み合った。

壁に掛かった時計を見ると、カフェテリアを出てから20分近く経っていた。

遅いなぁと思いながら教室の扉を開けると、2人が屈んだ体制で扉に貼り付いていた。

【正義】
「…………何してる?」

【航・恋華】
「「………………ゴメンなさい」」

2人共その場で膝をつき土下座して謝ってきた。ちょうどその時、美咲桜が俺の後ろから顔を出し土下座する2人に視線を向けた。

【美咲桜】
「プッ…アハハハハッ」

美咲桜の笑い声が、夕陽が差し込み茜色に染まった廊下に響き渡った。




















あの後校門でいつも通り女子2人と別れ、鳴海家のリムジンで帰宅した。

【英理朱】
「ねぇ、まー君。コレとコレどっちが良い?」

英理朱は手で2着を持ち、タキシードと貴族が着る様な装飾だらけの服を笑顔で此方に向けてきた。

【正義】
「……………………………………………………………………チェンジで」

因みに英理朱の足元には、数十着のスーツが散乱していた。
今回は特に書くことが無い…新キャラをもう少し先で出す予定です。次回は学園全体社交会+α……それでは♯8でお会いしましょう。


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