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作:椎名もと



「動きにくいんだけど。」


 正直に話してしまえば、あの時どの場所に行こうとも全く考えていなかった。てっきり未来へ飛んでってしまうと思っていたので尚更ここに来たのは吃驚だった。
 さて、ミチコ一同は━━無論政長と仲の悪い義就は颯爽と消えていった━━バックにあったでかい城の一番上にいた。
「で、君は適当にそのキーとやらを打ったわけだ。」
ミチコは笑った。
「左様でございます。」
スカートのすそを少しばかり両手で上に上げ、膝を抜きながら軽くクロスさせた。まるで鹿鳴館で踊っている不慣れた猿みたいだなと思った。
「よく分からないな。君の行動は。その格好も分からない。それより聞きたいのは君のその怪しげな服装のことだったりするわけだ。女なら普通はつぼ装束か小袖ではないのか?」
「大名様はお察しが悪いのでございますか?」
ミチコはわざと上目線のぷりっとした声で言ってみた。
「たわけ。殺すぞ。」
全くの無意味である。
「あはあは。冗談ですよー。単刀直入にわたし未来、ちょこぉーっと先の時代から来たんですよー。」
あの声がダメなら、純粋系で。
「気持ちが悪い。」
いったい何の審査をしているのか。
「って未来?」
「遅いよ!声より先にそっちに反応しろよ。たわし。」
たわしではない。たわけである。
「たわし!?私は茶色いシャリシャリした物体ではない!いったい君はいつ頃から着たのか?」
「うひゃひゃ。あだ名にぴったり。大体1000年後ぐらいかなぁ。」
たわしの話は本命ではない。
「何処までもムカつく輩だな!1000年!?大体今が約1450年なんだ。」
盛り上がっていた床が1,4,5,0、という数字で一瞬にして静かになった。
「せ、せん・・、せんよんひゃくごじゅう?」
本来のミチコには変わりなかった。所謂、演技ではないということだ。それなのに、ミチコの声はしわがれてどこか悲しそうに聞こえてしまう。政長は到底困った。
「そんな、な・なか・なかんでもいいだろう。」
たわしならぬかみかみのオンパレードである。
「泣いてるわけじゃあないんだ。少しドライアイの症状が進行していてね。」
ミチコは、あえて口調を変えた。
「ふん。君が泣こうが泣かまいが私には関係ないのだが━━━━」
政長の話をさえぎった。俄然、イライラしてくる。
「いや、彼方には相当の責任がある。なんせ未来からの貴重な迷い子を拾ったんだから。」
とうとう政長はため息をついた。

「じゃぁ、噂の細内のところでも行ってもらうか。」

そしてぼそりといった。
 何かとミチコにはショックな言葉でしかなかった。
 本音を言ってしまえば、ここにおいてもらえる、という確信があったからである。
「細内?」
「ああ、君には説明がまだだったかな?まぁ行けば分かるさ。案内をするよ。」
ミチコは少しうつむいた。
「その前に少し着替えていってくれ。」
「は?」
「隣の部屋に用意してあると言っていたからな。くれぐれもここで着替えるのは謹んでくれ。」
そういって政長は立ち上がり隣の部屋をすーっと開けた。見えたのはつぼ装束が一着、ちょこんと置いてあるだけだった。
 
 「ものすごく動きにくいんだけど。」
すっと政長を睨んだ。
「そうか、とおく遥か彼方の人間には好まれなかったか。」
クックッと政長は笑った。
「うるさいなぁ!」
「それでも結構いいものを着せたつもりなんだけど。なーんてね。」
「え?えぇ?なぁに?の人間でもなんちゃってなんて使うんだ。」
以外と楽しい、とミチコは思った。ここに来て正解だとも思った。もういっそ此処に此の儘居座ってしま━━━━

 どこかからミチコ目掛けて小石が飛んできた。

「いたっ」
ほぼ反射的に地面にしゃがんだ。
「どうした?」
政長も反射的に聞いた。
「どうした、じゃないさ。石が飛んできた。痛いな、もう。」
「……すまない。」
「は?」
ミチコは到底驚いた。
「何謝ってんの?」
同時に政長が頭を振る。
「いろいろと理由がある、本当にすまない。細山の家の行きながら話そうか。」

 どの時代にもいろいろあんだなー。
 そう呑気に思い、ミチコは立ち上がり歩き始めた。

















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