いつもと違う朝。
現在の時刻は六時四十分。太陽がゆっくりと顔を出し始めた頃、俺は先輩の家の前にいた。
「ふぁ……。」
はっきり言って、眠い。欠伸は三分に一度の高い割合だ。
俺は代わり映えのないカーテンのしまった二階の窓を見上げた。
先輩に避けられる恐れは大きい。昨晩そう考えた俺は出来る限り早起きをして待ち伏せを試みることにした。半ストーカーのこの状態は、精神的に辛いものがある。
「はぁ……。」
ため息の数も欠伸と同レベルで多かった。
ガチャッ……
「あ、おはようございます。」
「……おはよ。」
それから三十分後、中野先輩は家から出てきた。
軽く微笑みを見せる先輩に俺の眠気と低かったテンションは消え去った。
「山崎君。」
「は、はい。」
不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。声も上手く出せなかった。
そんな俺の様子に先輩は笑顔を浮かべた。その瞬間、先輩の顔が近付いてくる。
「目の下、クマ出来てるよ?」
「え。」
クス、と先輩は笑った。
「あたしが家出るの八時だから、明日からもう少し遅くおいで?」
「そ、それって……俺がいても良いってことですよね?」
「当たり前でしょー。あたしの彼氏なんだから。」
昨日とはえらい違いだ。意外すぎて俺は戸惑ってしまった。
「ほら、学校行こ?」
「は、はい。」
学校の始まる時間は八時五十分。先輩の家から学校までは三十分ほどで、今から行くと早すぎるくらいだ。
「窓の外見たらびっくりしちゃった。山崎君何時から来てたの?」
「六時半くらいから……」
「早すぎだよー。あたしが避けて早めに行くとか思ったの?」
図星だ。俺は黙って頷く。
「……一瞬、それも考えたんだよ。」
うつむいて先輩は呟いた。歩くたびにお互いの髪がふわりと宙を舞う。
「昨日一晩ずっと悩んだ。豪の顔と山崎君の顔が頭の中から離れなかった。」
やはり困らせてしまった。何も言えず黙ってただ歩いた。
「山崎君のこと嫌いなんかじゃないから、頼ってみようと思った。」
「……俺、頑張りますから。」
「うん。ありがとう。」
そう答えて綺麗な笑顔を見せてくれた。
「それにしても……山崎君昨日と態度違いすぎじゃない?」
「……そうですか?」
おそらく気持ちの浮き沈みが原因だろう。
「うん、二重人格みたーい。」
「え、違いますよ!!」
「大丈夫。ちゃんとわかってるって。」
俺と先輩は笑いながら学校に行った。
|