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俺が魔法少女になったら  作者: 楠木あいら
魔法少女の日常
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決め台詞を考えよう


 柴沼健斗(しばぬまけんと)の朝は早い。

 部活はやっていないが、家を早く出る理由はただ1つ。


「おはよう、タロちゃん」


 ご近所にいる犬に挨拶するためである。

 挨拶といっても犬語なんてわからない。それどころか話しかけていたら飼い主に変な目で見られてしまうから家の前を通り過ぎて、ちらりと見る犬を見て楽しむため。


『おはよう、ミラン。今日もかわいいね』


 通り過ぎながら心の中で挨拶する。もちろん近所に住む犬の名前はすべて調査済みだ。

 中でも花川さん家のロンは格別。人懐っこいロンちゃんは塀にある僅かな隙間から顔を出してくれるという。癒し犬なのだ。


「おはよう、ロンちゃん」


 なでなでもできる。ロンちゃんのおかげで俺は今まで遅刻したことがないほど、朝、携帯の目覚ましがなるよりも早く起きられるのだ。


「高校生のピュアって変態と紙一重なのね」


 スマホの着信を受け取って、魔法少女の相棒ことメニの第一声はそれだった。


「な、なんでスマホが俺の日常、心の声を聞き取れるんだよ。第一、それは高校生に対する侮辱だぞ」

「ごめんごめん。健斗のピュア心が、だね」


 このスマホ、魔法少女のパートナーのくせして性格がよろしくない。


「で、何だ? 俺の楽しい登校を邪魔するからには立派な用があるんだろうな……」


 言いながら、俺は重要な事に気づいた。


「って、俺、何で魔法少女なんてやっているんだ」


 そうだよ、前回はいきなり変身した上でのドタバタ展開になったから仕方なかったけれども。もともと、魔法少女する必要ないじゃないか。


「先に言っておくけど、スマホ返却しても無駄よ。少なくてもスマホ使い放題の半年は魔法少女になってもらうから」

「お、何だ、典型的な強制的に魔法少女してもらいます的な脅しか」

「その逆ね。犬好きな健斗には良い事よ。かわいい女の子の姿ならば簡単に犬と接することができるのよ」

「はぁっ」


 メニの言うとおりかもしれない。

 高2男が散歩中の犬に駆け寄って『かわいい』なんて犬っ子をなでなでしてみろ。飼い主さんから『何だこいつ』な目で見られてしまう。

 だから散歩中の犬っ子をみても、何気なくのチラ見で視線を逸らさなければならないのだ。それが悲しい男の(さが)


「そうでしょう。かわいい魔法少女ならば、笑顔で駆け寄ってなでなでしても飼い主さんは『おや、君も犬が好きかい?』で温かい目で見てくれるのよ」

「うおおお、何て素晴らしいんだ! メニ、俺、魔法少女やる。やらしてもらいます!」


 通学路に誰もいなかったから良かったものの、今の発言はかなり変態的な発言だった。




「商談成立したところで健斗(けんと)。魔法少女デビューするための決め台詞とか考えてね」

「デビューって、昨日のは?」

「あれはチュートリアルよ」

「ゲームみたいだな」

「そう考えた方がいいかも、じゃあ、そこの公園までによろしく」

「え……そこの公園って、またタロちゃんが脱走してコボルトに捕まったか」

「同じ公園、同じコボルトだけれども今度は男子高校生。名前を覚えてもらう絶好のチャンスよ」

「えー」

「正義に差別はないのよ。取り囲まれているから急いでね」

「……わかったよ」


 スマホの通話を着ると画面に『PUSH 変身』と出ていたので、周囲を見て誰もいない事を確認してから軽く触れた。


 スマホから光が生まれ、俺を包み込む。

 公園の入り口に着いた俺は魔法少女パワーを使い高くジャンプした。

 到着するのはもちろん、コボルトのど真ん中。


「お待ちなさい。邪悪な心に染まってしまったコボルト達」


 難なく着地。我ながら格好良い。


「柴犬を愛する気持ちは誰にも負けられない。柴犬ラブピュアファイター ココがお相手よ」

「ぷっ」


 後ろの野郎、笑いやがった。

 え、ちょっと待て。じゃあ『わんわんラブファイター』の方が良かった? いや『らぶりぃワンファイター』かな『ピュアな柴犬大好き乙女、シバファイター』も捨てがたかったが。


「と、とにかく、暗黒の地にお帰りなさい。浄化の輪」


 目を閉じると、光が俺の中で生まれ輪になっていく。

 被害者には無害な光の輪が広がってゆき、コボルト達をあっという間に消滅させていった。


「コボルトは去ったわ。もう安心よ」


 心の広い俺はさっきの笑いをなかったことにして、野郎に笑顔を向けた。


「あ、ありがとう」


 うむ、野郎だけれども『ありがとう』って言ってくれるのは悪くない。


「それはそうと、君は……」

「魔法少女ココだよ。」


 純粋無垢な笑顔、宣伝。魔法少女デビューとして良いんじゃないのか。


「その耳は?」

「耳?」


 男子高校生の指が頭上を指したので手をやってみると……左右に何かある。

 運良く、水溜りがあったので視線を移動してみると。


「柴犬の耳が生えてる。わっ尻尾まで」


 耳と尻尾のついた魔法少女になっていた。




 え……じゃあ。散歩する犬っ子に容易に近づけなるんじゃないのか。

 俺に衝撃が走り、走り去る男子高校生を見る余裕なんてなかった。 





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