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一休み、一休み
慌てない、慌てない
o メイドさんとご主人様
ど-67. まどろみ


「ん、ぅ?」


「おはよう、よく眠れたか」


「旦那、様…?」


「ああ」


「わたし、は…確か」


「ん、いや、日向が気持よかったのかな、お前にしては珍しく転寝してたところを俺が発見した」


「……そういえば、そのような記憶がございます。そうですか、眠ってしまったのですか」


「ああ、そうだぞ。もしかして疲れてたりするのか?」


「いえ、疲れてなどはおりません。心地よい日差しでしたのでつい…。それにしても旦那様?」


「なんだ?」


「私が眠っている間、私に何かいたしませんでした?旦那様の事ですので、やれいい機会だとばかりに私に悪戯を施し…」


「ないない」


「それほどまでに私には魅力がございませんか?」


「ない」


「…即答、ですか」


「大体な、あんな気持ちよさそうに寝てるやつに対して何かしようって気なんて微塵も起きないって。見てるだけで十分だったよ」


「――そう、ですか」


「ああ。しかも『旦那様……ダメ、です』なんて寝言を聞いた日には殊更、な」


「…そう言えばまどろむ夢の中に旦那様のお姿があったような気がします」


「どんな夢だったのか覚えてるか?」


「いえ、そうですね……確か旦那様が“特攻服”というものをお着になられて、木刀片手に数億の軍隊に向かっていかれた……気がします」


「…それはいったいどんな夢だよ」


「あぁ、あの旦那様の潔さに比べてこちらの旦那様の何とみすぼ…こほん、取り立てて申し上げる事もない、平々凡々それ未満むしろ謝ってくださいと申し上げたくなる、素敵な旦那様でございますね?」


「いやいやいや、それ全く言い繕えてないから。むしろ言い直すことで酷くなっているのは何故ですかー!?」


「事実ですので」


「大体さ、謝るって誰に対してだよ」


「生きとし生けるものすべて?むしろご自分に?」


「俺ってどこまで順序が低いんですかそれー!!」


「旦那様はご自分に順位があると本気で思っていらっしゃるのですか?」


「ないのっ!?俺って生き物としての順位すら用意されてないの!?」


「旦那様は旦那様でございます。そしてそれ以上でもそれ以下でも、旦那様以外の何物でもございません。それ以上にいったい何をお望みでしょうか?」


「人としての尊厳を。切実に」


「お悔やみ申し上げます」


「何それ!それって遠まわしな否定ですか?俺にはやっぱりそんなものすらないんですか!?…いや待て、俺。考えろ、考えるんだ。否、権利がないなら勝ち取るまでだろ?そうだ、そうだよ。人としての権利をおれは勝ち取ってやるんだー!!!」


「…お労しや、旦那様」


「ふっ、昔の血が騒ぐぜ。俺は今から――修羅になる!!」


「つまり人をお捨てになると。本末転倒でございますね」


「……ゃ、今のやっぱりなし」


「承りました、旦那様。ええ、旦那様がご自分のお考えをすぐに変えてしまわれるようなヘタレ王だとしても、それが周知の事実であるにも関わらず未だに旦那さまお一人がお認めになられていないとしましても、旦那様のお考えには全て賛同いたしましょう」


「俺にどうしろと?」


「私に旦那様をどうしようなどと、考える事があろうはずもございません。旦那様は旦那様の思うように、成されるようにされるのが一番よろしいかと存じ上げますれば」


「ああ、そうだよな。お前ってそういう奴だよな。…昔の俺に似たっていえばそれまでだけどな」


「はい。しかし、唯一つ申し上げさせていただくとすれば、そうですね……おそ、いえ、やはり何でもございません。申し訳ありません、仕事が残っておりますので私はこれで失礼させていただきます」


「あ、おい、ちょ……、行きやがった。ちっ、全く。そんな事、今更だろ?嫌なら一緒に……態々そんな奴の寝顔を眺めてたりなんかしねぇよ」







「………お傍にずっとおいていただければ、などと。もう、ゃ…………です」



本日の一口メモ〜

メイドさんと旦那様、二人の考える事は一緒ですね?
そしてメイドさん、珍しく隙を見せております。


旦那様の今日の格言
「寝顔ってのは誰だって安らかなものだよな」

メイドさんの今日の戯言
「目が覚めても、旦那様がいらっしゃいました」


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