harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜(67/133)縦書き表示RDF



エレムさん、エレムさんエレムさん…エレムさん、
……エルフさん、あれ?


harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜
作:nyao



ACT X. エレム-1


「ははははははじめまして姫様本日はおひがらもよろしく――」


「エレム様、少々落ち着いてはいかがでしょうか?」


「ででででですが!!」


「…それで、クェトメル様でしょうか、私の事を貴女にお教えになったのは?」


「そ、そうですっ!!」


「困りました。これでは会話になりません。エレム様、どうかご緊張をお解きくださいますよう。クェトメル様にいかように吹き込まれたのかは、おおよそ見当が付きますが、私はただの旦那様の伴でございます。それほどに恐縮なされる必要はどこにございません」


「で、ですがっ」


「解り易く言いましょうか。彼の言葉は虚言に過ぎません。彼は少々悪質な勘違いをなさっておられるのです。それに何より貴女は旦那様がお連れになられたお客人でござます。堂々としておられればよろしいのです――次期族長候補のエレム・ファン様」


「っ…な、なんでその事を――ま、まさか」


「クェトメル様から聞き及んでおりますので。それと旦那様には申し上げておりませんのでご安心くださいますよう」


「そ、そか。よか――じゃなくてっ!!」


「他にまだ何か不都合が?」


「い、いえっ。不都合だなんてそんな…」


そもそもこのようなやんごとなきお方と直接お話しできるだけでも幸多い事なのに、不満だなんてある筈がない。


「それとエレム様、失礼とは存じ上げますが、再度申し上げさせていただきます。もう少々肩のお力を抜かれてはいかがですか?」


「で、でも…」


「…はぁ、仕方ありません。では――」






「っ!!」


空気が、変わった。


その時、その瞬間、その一瞬だけは間違いなく目の前の彼女に完全に魅入られて、気圧されていた。


「――エレム・ファン、気を楽にしなさい。許します」


「は、はぃ…」


「聞こえませんでしたか?再度申し上げますよ、私は気を楽にせよ、と言ったのです」


「――はっ、………分かり、ました」


「宜しい。それでいいのです」


どぅ、と冷や汗が流れ出る。まさか肩の力を強制的に『抜かされる』なんて思ってもみなかった。


これが、絶対的上位者の――あのりゅ…


「では改めましてエレム様」


「ひゃい!?」


「エレム様?」


「い、いえ。なんでもないです。なんでも」


な、なんでこうもタイミングよく話しかけてくるのか。

時折、心の中を読まれているような心境に陥るのだけど…まさか、ね。


「それでは改めましてエレム様。ようこそいらっしゃいました。代表者として私一名のみで挨拶させていただきますが、この館の総員一同、皆エレム様のご来訪を心より歓迎いたします」


「あ、ありがとう…ございます」


「それで、先も他の者が申し上げたとは思いますが、こちらのお部屋がこの館に滞在中、エレム様が使用していただく事になる一室となっております。何か不都合、または不明な点がございましたらすぐさまご相談してくださいます様。可能な限りお応えいたしましょう」


「いや、大丈夫…」


と言うよりも、むしろ豪華すぎて何か落ち着かなくはあるんだけど。


「そうでしょうか?私見で御座いますがエレム様は少々このお部屋に物怖じしておられると感じているのですが。間違っているのなら申し訳ございませんが、確かにエルフの方々にとってこの部屋の作りは少々感性の方向性が異なっているはずですし、恥じ入る事は御座いませんよ?」


「そ、それは――」


「いえ、しかし出過ぎた事でございました。ですが一つだけご助言申し上げておきますに、『外』に興味を抱いておられるのならばこの程度の事は慣れてしまわれた方がよろしいですよ?」


「あ、はい」


「それが正しくご理解していただいているのでしたら、宜しいかと。後は……そうですね、今まで体験されてこなかった事など、どうぞ、『外』の世界をお楽しみいただくよう」


「あ、ありがとうございます」


「いえ、旦那様の客人として御来訪なされたエレム様を歓迎しますのは私としてもいささかではありませんので、どうかお気になされぬよう」


「え、あ。…そう言えば、ひとつ聞いてもいいですか?」


「はい、私に分かる事でしたら何なりとお答えいたしましょう」


「その、あの人……レムくんって、どんな人なのかな、って」


「失礼かとは思いますが、エレム様は旦那様の人となりを見ずについてこられたので?」


「いえ、そう言う事じゃなくって。その、レムくんが悪い人じゃないのは分かるんだけど、その、どんな人なのかな、って」


「分かりました。試すような事をお訊ねして申し訳ございませんでした、エレム様」


「いや、そんな事はっ!!」


「ではお応えいたしましょう。旦那様は…そうですね、旦那様ご本人にはあくまで内緒にして頂きたいのですが、」


「はい、それは勿論っ」


「…では。旦那様は大変ご立派なお方で御座います。薬学、医学の分野には大変精通しておりまして――いえ、申し訳ございません。エレム様がお聞きしたいのはこのような事柄ではございませんでしたね」


「あ、そんな事は…」


「お気づかいなされぬよう。では改めまして、旦那様はそうですね――優しいお方、ですよ?」


「優しい、ですか」


「はい。少々博愛過ぎる気もいたしますが、エレム様の目に狂いはないかと」


「そそそそんな意味じゃなくってですね!」


「そんな意味?それはどのような意味の事で?」


「……いえ、何でもないです」


「そうですか。ならば、私から申し上げる事が出来る事を最後に一つだけ、申し上げておくこととしましょう」


「はい?」


「旦那様を御信じ下さい。それだけで、怖いものなど何一つとしてないのですよ?」




「――」




それが、あの人の本当の微笑み。


たった一度だけみる事が出来た、きっとレムくんの前ではよく浮かべているだろう表情。


この時、確かに私は嫉妬していたと思う。



銀髪の、奇麗なヒト――それとも。


優しい、初めて『外』で私に笑いかけてくれたヒト。





――どっちに?




ヤツは勘違いをしている!!
メイドさんはあくまでもメイドさんですから。











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