0, 全てのはじまり
「はぁはぁはぁ…」
分からない。
「どっちだっ!?」
「こっちにいたぞ、逃がすな!!」
「はっ、はっ、はっ……」
分からない。
父様や母様、それにお城の皆が血を流していた。
昨日まで笑っていた人たち皆が血を流しながら私に逃げろって叫んでくる。
どうして?
分からない。
分からないまま、言われたまま逃げる。後ろから追ってくる知らない人たちがとても怖い。
怖い。
よく分からない。でも怖い。とても怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い。
「は、は、は、は………っ!?」
「あ〜…」
人、追いつかれ…待伏せ!?
私と同じくらいの男の子。でも…この人たちが皆を…
「なぁ?」
「っ」
「イモ、喰いてぇ」
「???」
「な、あんた、知らない?」
っ、後ろからいっぱいの足音…追いつかれた……
「姫、その命貰い受ける…!!」
「…ゃ」
掴まれた腕。
振り下ろされている凶器。
「お覚悟っ」
逃げられ、死…
「焚き火があるって、そう聞いた」
目の前の男の子が問うた言葉、それが私の聴いた最後の言葉――
「邪魔、するなよ。今は俺がこいつと話してるんだ」
「ぇ?」
……じゃ、なかった。
「で、だ。盛大な焚き火があるって聞いたから俺、此処に来たんだぜ。なぁ、一体いつあの城は燃えてくれるんだ?」
酷い言葉。
普段の私なら叫んで、きつく彼をしかっていたかもしれない。でも、今は違った。だって、
「な、知ってるか?」
その子は私に問うと何処からともなく芋を取り出して見せた。
――私に振り下ろされた剣をそのもう片手で鷲掴みにしながら。
「……またですか、旦那様」
「んあ?いいだろ、何度も言うようだけど俺の夢は――」
「ハーレム」
「…台詞取るなよ」
「軽い嫉妬です。お気になさらず」
「そうかぁ、嫉妬かぁ……ははっ」
「………容易い」
「ん、何か言ったか?」
「はい、馬鹿は扱い安いといいました」
「………」
「………」
「少しくらいは言い訳してもいいんじゃないのか?」
「では訂正します。嫉妬です」
「そうかぁ、嫉妬かぁ……ははっ」
「………っ、危ないですね。また同じ発言をしそうになりました」
「じゃ、いつもの通りだから帰ったらこいつ等の風呂と服を用意してくれ」
「…失礼ですが旦那様は?ご一緒にお帰りになるのではないのですか?」
「ん〜、いや。久しぶりに面白そうな奴が一人いてな、今回はそいつとのんびり帰る事にするわ。お前も見たら驚くぞ。それに、面白い拾い物も出来るかもしれないしな」
「私が驚くのは想像できませんが…面白いものとは、またいつもの勘ですか?」
「んあ〜、そんな感じ」
「…畏まりました」
「………」
「………」
「なあ」
「なんでしょうか、旦那様?」
「どうしてさっきから俺を睨んでくるんだ?言いたい事があったら言ったら如何だ?」
「……では、失礼を承知でお伺いをさせていただきます」
「応」
「その面白いという連れのお方は……女性でしょうか?」
「ああ」
「……では旦那様、先に帰り到着を心待ちにしております」
「って、おい、今の質問の意味はなんだよっ!?」
「失礼ですが旦那様の仰る処の意味が私には理解できません。どうか私にも理解可能なお言葉で語っていただくよう、誠心誠意お願いいたします」
「……俺が悪かった」
「はて、何の事でしょうか?いえ、旦那様が御謝りになると言うのでしたら私は素直に受け取っておきましょう。………最初からそう言えばいいのです、旦那様のおばか」
「……あ〜、もういいや。色々といいたい事はあるがまあそれはまた今度、夜の」
「ベッドの中でですか?」
「……だから台詞取るなよ」
「旦那様、一つだけ申し上げておきます」
「何だ?」
「ありもしない虚言を吐くのは止めて置いた方がよろしいかと存じ上げます。旦那様の誰にも敬われるはずもない人格が一層疑われます」
「いや、そもそも俺の台詞を取って口に出したのは――いや、もういい。遊ぶのもそろそろにしておけ、時間もあるしな。じゃ、いくぞ」
「………はい、残念です」
周りが輝く。
草が、木が、空が、世界が、全てが輝いてく。
光が消えたとき、残っていたのはただ一人。
「さて、無口な姫様を迎えにいくか」
――それとはまた別の場所。
「………いらっしゃいませ、皆様方。此処は旦那様のお屋敷…聖域にございます。今はご不在の旦那様のご寵愛に代わり私がお迎えいたしましょう。どうぞお寛ぎを。本日から此処が貴女方の住む家となります」
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