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一休み、一休み
慌てよう、慌てよう
o メイドさんとご主人様
 ど-XX. ある日

「ええ、決めました。今決めました。決めましたとも決めたんだからっ!!」


「繰り返さなくても分かったから。で、一体何を決めたんだ?」


「何ですか、分かっていると言ったのに分かっていないではないですかっ!?」


「…生憎と、俺はまだ聞いてない事を知っているほど凄い奴じゃないんで、口に出してくれないと分からないんだよ」


「……、ああ、それもそうですね。済みません、私とした事が気が高ぶっていたようで少々早とちりをしてしまったようです」


「珍しいな。ま、気にしちゃいないが…で、一体何を決めたんだ?……俺が聞いてもいい事だよな?」


「あぁ、ええ。それは勿論。貴方に関わる事ですから、もとより私も貴方に話す気でいたわけですしね」


「そっか、んじゃ遠慮なく。何を決めたって?」


「はい、それは…」


「ん?」


「はい。………こほん、我らが誇りたる皇族の御名、ホロン・アーク・プリムが誓う。私は生涯をかけて貴方の身を護る盾となり、貴方の道を切り開く矛となりましょう、永久にして刹那より唯一の我が――主」


「は?主?」


「……茶化さないで下さい。私、結構真剣にやってるんですけど?」


「や、だって、なぁ?」


「なあと私に言われても…困ります。それに何が、なぁ、なのですか?」


「お前にそんな改まった態度を取られるとどうにも背中がむず痒いって言うか、違和感ありまくりなんだよなぁ」


「これはっ、私たち皇族に伝わる由緒正しき儀式ですよっ。それを言うに事欠いて違和感ありまくりって、こんな真面目な雰囲気には私は似合わないってなんですかっ」


「そこまでは言ってないが……それだよな、やっぱりいつもみたいに俺を叱ってるお前じゃないとお前らしくないって」


「いつも叱ってるって…そりゃ、私も自分がしおらしいのは変だと思いますけれど…」


「それに俺はお前にそんな盾だの矛だの期待しちゃいないよ。前から言ってるだろ、あの時お前を助けたのは――」


「結果としての偶然だった、でしょう。何度も聞いていますから分かっています。それでも、いえ、それとは関係なくあれから過ごしてきた年月を考えて、私は真剣に言ってるんですっ」


「んー、じゃ、俺もはっきり言うわ。そんなものいらね」


「…あ、貴方がそう言う事は承知の上です。それでも私は貴方の力になりたいと、そう言っているんです。以前護られた私が言うのもおこがましい事ですが…」


「別に良いって。お前がお前である事以外俺はお前に望んじゃいないよ」


「……はぁ、余りこういった言い方は好みませんが、この私たちの眷属…それも皇族直系たる私の加護を受けられる“人間”なんておいそれとはいませんよ?私たちの加護があれば人間の言う富や権力だって思いの――」


「言いたくなければ言わなきゃいい。それに俺が望むのはんな安いものじゃない。その点だけは安心して良いよ」


「豪遊して一生を暮らせる富や権力を安いもの、と。それは初めて聞きますね。どういう事ですか?」


「あれ、話したことなかったか?」


「ええ、初耳ですね」


「そうか。別に初めてじゃないんだが……伝わってないだけだな、きっと」


「言っている意味がよく分かりませんが…それで、それなら貴方が欲しているものは一体何なのですか?」


「簡単な事だよ。お前に俺が望むものがあるとして、そりゃお前自身だ。俺はお前が欲しい」


「お前って…私?」


「そ、お前自身。んな加護だの保護だの糞食らえだ。別に護って欲しいわけでも何かして欲しいわけでもない。処世術は籠の中の姫君だったお前よりか俺の方が高いしな。だから俺はお前が欲しい。それ以外はお前に望まない。…尤も、俺の為であれ誰の為であれお前が何かをしたいってんなら俺が止める道理も無いけどな」


「………」


「ん、どうした?顔、真赤だぞ?」


「そ、そ、それは婚礼の申し込みと受け取ってもいいのですか?」


「……ああ、なるほど。確かにそうとも取れるな。ま、それでも俺はいいぜ?」


「婚礼…婚儀…結婚……夫婦………めおと…あなた……う、わぁ」


「ま、別に返事は今すぐじゃなくても良いぞ。それにただでさえお前達の一族ってのは位が高いんだろ?それを“人間さま”に嫁ぐなんて、ちゃんと考えろよー?」


「そ、それはどういう意味ですかっ、私じゃ不満があるって、そう言う事ですかっ!?」


「不満?ああ、なるほど。確かに不満なら結構あるな」


「…、え゛?」


「何だ、お前は自分の事を人に好かれる所しかない万能だとでも思っていたのか?」


「いえ、そう言うわけではないですけど……そんなにはっきりと不満があるって言わなくても良いじゃないですか」


「不満がない方が可笑しいんだって。それじゃあ違う生き物である意味がない」


「…私は“人間”たちの言う哲学とやらには疎いですが、それはつまり安心しても良いという事ですか?」


「そうだな、取り敢えず言えるのは別に不満があるからお前の事が嫌いって訳じゃないし、むしろ好きな部類に入るかなって事だな」


「…そ、そうですか」


「安心したか?」


「はい、それは……いいえ、別にっ」


「嫌いな奴相手なら数年も一緒にいやしないって。まあ、それは今はいいとして、だ。今俺がお前に出来る返事って言ったらこれくらいしかないかな」


「はい?」


「頑張れよ」


「………」


「お前はお前で在れ。何も俺に気遣う必要はない。だから、やりたい事ならそれを頑張れ」


「…うん、ありがとう」


「礼を言われる事じゃないしな。むしろこれからの事を考えると礼を言うべきは俺の方か?うむむ、その働きに期待する」


「ん、そう…ですね。私、やっぱり決めたから」


「何を、だ?」


「一度誓った皇族の誓いは破らない。矛盾(ホコとタテ)として私は貴方の傍にいる、それが私の願いで気持ちだから。だからこれからも、これからずっとよろしくね、――」


「ああ、そりゃ、勿論」


「うん」
本日の一口メモ〜

本編(?)よりも昔のお話。
…敢えて誰と誰の対話かはいいますまい(笑)


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